第152話 仮想世界とVRMMO?
夏奈は意味がわからないでいた。
消灯時間になり、スマホを回収されてからベッドで寝ていたはずなのに。
夢を介してなのかわからない、『仮想世界』のようなところでいつの間にか座り込んでいたのだ。
それと同時に、『あり得ない』と思っていた美晴との再会。向こうもだが、夏奈も『私服』で待ち合わせしていたかのような雰囲気と場所にいたので……お互いに『どうした』としかいいようがない。
「……美晴?」
「……夏奈、やんな? なんで?」
「こっちが言いたい。ここどこ?」
「……奈月なりの気遣い?」
「は? 奈月さんの気遣い??」
「さっき、『起きた』かもしれんねん。こっちも向こうも」
「……奈月さんのパートナーが見つかったの??」
「おん」
とりあえず、座ろうかと地面に寝転がっていた美晴を起こし。
ベンチに座り直したら、結構背が高いことに今更気づいたが……顔が相変わらず良過ぎると再認識してしまう。事実上の彼氏ではあるが、直接会っていないので実感が湧かない。これはデートなのかと聞かれてもよくわからないとしか答えられないだろう。
何せ、『夢』の場を借りての会合なのだから。
「……この場所、何?」
「VRはわかるか?」
「仮想空間、だっけ?」
「それの、構築した疑似世界やろうな?」
「というと?」
「異世界転生とか転移ちゃう。俺らの『意識体』だけがゲームの世界に飛び込んだ……って認識でええわ」
「……ゲームと漫画の読み過ぎ、じゃないよね?」
「リアルや。夏奈も色々協力してくれたことに変わりないし……俺らへのご褒美ってことやろ」
と言って、すぐに肩へと腕を回して引き寄せる。体温とか感じないはずなのに、なにか『熱』に似たものを感じたし、匂いも鼻に届く。爽やかでいい匂い。体臭か香水にしてもセンス良過ぎとかなどと、関心しそうになるくらいに。
「……ご褒美。病院の外には出れないから、奈月さんなりにこんなセッティングしてくれたってこと??」
「せやな? あっちも藍葉とかも同じやし」
「藍葉ちゃん……彼氏さんと、本気で会えないの?」
「身体は俺と同じ施設に匿われとる。けんど、開発途中のVRMMOの整備以外にも適性者として、仕事が終わらん。それなんとかせんと、外の救援活動もなんともならんのや」
「……あれって。自然に起きたものなの?」
「それを、奈月は予知しとった。ただ、いつどんなタイミングで起きるかまでは『誰も知らせ』ないようにされてたらしい。それは俺も同じや。別次元の『俺』にもそう言われてたんよ」
「……そっか」
夏奈が入院するくらいに、元居た部屋で『何か』をしたことの記憶がおぼろげなのも。
それまでに、ゲームなどのモニターをしていたことの記憶も少しあやふやではあったが。
『生きて』いることには変わりない。恋人通り越して、いきなりの婚約者が出来たことには相当驚いたし、まだ現実味は全然ないが。
仮想世界とか、別次元とか色々言われてもなんだそれ、と普通なら思うのに。この空間にいることが『夢とは違う』くらいにはだんだんと認識できるようになってきた。
パートナーシップとやらで引き合わせてくれた、『加東奈月』への信用のようなものもまだあやふやではあるが。美晴との再会が思ったよりも早かったので、リアルでなくても嬉しいことに変わりなかった。
「……俺も、身体は『寝て』るからな? しばらく、ここでのんびりしたいわ」
「仕事、いいの?」
「こっちに意識体流されているってことは、だいたいが完了しとんのやろ? 夏奈といっしょに居たいんや」
「……あたしも」
「お?」
まだたった二回しか出会えていないが、こんなにも真摯に相手を考えてくれる人は早々いない。肩の力を抜くのが簡単にできるほどの、安心したい相手だと思えている。だから、今は寄りかかって一緒に過ごす時間だけでいいのだ。
自分たち以外にも似たようなカップルは多いが、視界はぼやけて判別しにくい。自分たちは自分たちのことでいいのだと、落ち着いて過ごす時間が今はもらえたということ。『加東奈月』も同じようになれたからこその、ご褒美なのだとしたら……最上級ではないかと思うしかない。
しばらく、寄り添っていたが。VRMMOでもいいような仮想世界の廻り方を教わるのに、美晴からデートの誘いを申し込まれた。
もちろん、夏奈は承諾してから美晴の腕に自分のを絡めた。まともな恋愛をしてきたかなど、夏奈のこれまでの環境を思うとなかったと言いたいが。甘くて蕩けるような恋を始めてもいいのだと、美晴の腕の安心さに委ねたくなったのだった。
まずは無難に、外デートとやらでぐるっと遊歩道を歩くところからの始まり……もいいものだ。
次回はまた明日〜




