第108話 同じだが、同じでない
小鳥遊美晴との会合も、おそらくハル神が意図的に仕組んだのだろうが。
せっかくの機会だからと、険しい顔をしたままこちらに意識を寄越してきた『旦那候補』に目を向けてみた。
神と同じ顔なのだから、そこはまあまあ整っている。眉などのパーツもそこそこに。目を開ければ、ナツ神をどう捉えてくれるのだろうか。地球側では出会ってもいない『嫁候補』の話は聞いているにしても、彼女と同じ『顔』と『声』をしている……同一のようで他人のナツ神を見て惚れてしまいそうになるのは危ない。
あくまで、ナツ神は外部者。神であると同時に、美晴にとっての嫁ではないからダメなのだ。
「……けどまあ。この顔か」
ハル神のような快活さは『サナ』越しに見てはいるものの、通常モードで眺めるのは初めて。ハル神と同一なのはわかっていたが、うっかりしていたら惚れそうな顔立ちに悶えないはずがない。
しかし、悶えている場合でないのはあちら側で起きているのだろう。仕方ないので、それらしい態度を維持しつつ、『起こす』ことにした。単純に風圧みたいなので衝撃を与えた乱暴な起こし方だ。
『うっわ!? な、なんなん??』
地球側ではなにかしていたとの情報も届いていたが、この様子だと自分らに起きた事情とかは把握してないようだ。あちこちを見て慌てながらも、ナツ神の姿を見ればほけっとした表情になるので笑いを堪えるのが大変だったが。
「……はじめまして、小鳥遊美晴。私のことはナツ神と呼んで?」
『……ハル神の??』
「そう。それが私。この顔、出来るだけ覚えておいて? 向こうでも目印になるから」
『え、え、えぇ~~?? こないに別嬪さんが向こうにも?? どこやそいつ~~!?』
「さあね?」
それはこっちも知りたいし、コンタクトを取りたいのだが『一瞬』しか共有時間が取れなかったので……『異世界ファーム』の管理者権限を少し渡したかったのに出来ないでいる。おそらくだが、藍葉同様にモニターくらいには登録されていると予測はつく。しかし、コンタクトを引き離されていると、接点がないと繋がりが作れないナツ神では難しいのだ。
今回は、やっとその方法がわかったのに繋がったのはハル神が用意した目の前の彼だが。
『……あの~、ナツ神さん』
「なに?」
状況を把握したのか、妹の藍葉よりはのほほんとした態度で質問してきた。兄妹と言えど、結局は他人なのでそこは別に仕方がない。
『俺って、生きてんの死んでんの?』
「生きているけど。身体は眠っている状態ね? 例のゲームを通じて、あなたたちの役割を『加東奈月』が配置しているところよ」
『ああ、なっちがか……せやったら、表はもう預言どおりにめちゃくちゃかいな?』
「その向こうでは……藍葉とか数名は『起きている』。あなたたちを起こすために、動いているそうよ」
『は? マジで?? ハル神は?』
「そのハルが、『クロニクル=バースト』を蔑ろにさせないために……ね? 冬眠用のコールドスリープに全員は投入できないから」
『……シゲになんて言えば』
「仕方ないわ。異世界ファームの管理者権限は実質私が受け持っているけど……藍葉自身もやろうと思えば、意識回路を『こちら』に寄越すことは出来た。でも、本人が拒否したの。本能でね?」
でなければ、コールドスリープ無しでも冬眠モードになって寝ている彼らの両親同様に『眠って』いたはずだ。
それが無理だったということは、『役割』を持つ存在として救済措置を取るのに専念したいのだろう。そのことを美晴に伝えてやれば、『俺の妹やな……』と泣きそうな声で笑っていた。
次回はまた明日〜




