第102話 望むなら、まず
また幾日か経ち、商品への『加工』をいくつか手掛けたあと。
少しばかり、クルスたちが炊き出しをせずともいいことになったので……基本的な管理以外は『休み』にすることにした。考えれば、宝物の種を植えてから今日まで、リーナも含めてまともに休みを取っていなかったのだ。
だから、ではないのだが。
サナは自宅に戻ると帰っていき、リーナはクルスと居たい理由でベッドに寝転がっていた。
「落ち着く~……」
「……おいおい。そこで寝られると俺が入るとこないやん」
「いっしょに、だよ?」
「は?」
「ん? お昼寝しよーよ」
「……おん」
昼間っから、という無粋な言葉を打ち砕くようなそれに……クルスは少しばかり、『誘い』を断られたかのようなショックを感じた。
感じたものの、多少は触れてもいいのかと判断したので。リーナが少し起き上がった隙間に体を潜り込ませた。大人サイズくらいの大きさのベッドでしかないが、寝心地と布団の触り心地は抜群。
そこに、愛しく想っている少女が来たとなれば……手を伸ばして抱きしめればふわふわと綿とは違う感触に酔いしれそうになる。
(あ~……半分生殺しやんけ)
サナがいないにしても、『なんとなく』が抜けない。昼間から事に及ぶのも、娼館を利用していたクルスですら気恥しく感じるのだ。それを生娘なのを露わにしているリーナに無理強いさせたくなかった。
とはいえ、ここ最近仕事続きで疲れていたのもあってか。触り心地のよいものに囲まれたせいで、クルスの意識はとっぷりと眠りに落ちていく。
落ちて落ちて、底に底にゆらりゆらりと。
寝たはずなのに、意識がはっきりしていく感覚があった。リーナが寄ってきたかと思ったら、側に彼女がいないどころか不可思議な場所に立っているというおかしなことに。
暗い場所に、木の根を広げるかのような光の伸び方。その中央にはくぼんだ場所があって、中には『誰か』がうずくまりながら入っていたのだ。
『……来たのね? クルス』
耳ではなく頭に語り掛けるような女性の声。何かに似ている気がしたが、そんなことはないと首を左右に振る。リーナに少し似ているにしても、夢の中で話しかけられるのはおかしいことでしかない。
しかし、何度くぼみを見てもその女性はリーナによく似ていた。抱きしめたせいで変な夢見でもしているのかと勘違いしそうになったが。次の言葉で、それは否定された。
『あなたたちが埋めた、種の内側。それが私なの。ナツ神とでも呼んで? あなたの管理者よ』
「……あんさんが?」
魔法か何か。スキルも使っていたとしても、ここまではっきりと意識を保てているのなら……あの指示しか出さない『連絡版』のカラクリがこの女性だというのか。説明を求めようとしたが、向こうの動作ひとつだけでクルスの意識を蕩けさせようとしていた。つまり、必要以上の質問はするなと言うことか。
『あなたたちの役割。……その大半が、私側の都合で解決しようとしている。あなたやリーナは、そのための物差しだったのに……』
「……利用されたんは、わかっとる」
『ふふ。言い得て妙というものかしら? だけど、そろそろ『普通』に生活してもいいのよ。最近の指示はそれくらいだったでしょう?』
「……俺と、リーナが? え、いや、夫婦に??」
『そのつもりよ。望むなら、望んでいいの。あなたになら、あの子を預けられる……起きても、驚かないように』
そこで、完全に意識が夢からの覚醒に似たそれと感じ……体を起こす感じなのはわかったが。腕に居たはずのリーナから、柔らかい以上の感触と素晴らしいくらいに甘い香りがした。はっ、と我に返って横を見ると……部屋の中で服が散らばっていたうえに、互いは素っ裸という『やらかし』をしてしまっていた。
「り、リーナ!? ちょぉ、起きて!!?」
「……にゃむぅ。もう、クーちゃん。入らない~」
「これなんなん? 俺寝ぼけてまさか!!?」
確認したいが、ぐっすり寝ていたリーナを起こすのはそこからなかなか大変だった。結果的に、お互い寝ぼけていたので致したかどうかがさっぱり覚えていないという。
仕方ないので、一旦服を着て外の風呂場に行くことにして仔細を確認したが……まさしく、その通りだったので、クルスは『申し訳ございません』と謝罪とともに婚姻の申し込みをした。
罪悪感はあれど、リーナ以外に考えられないのは本当だったから。リーナは、最初ぽかんとしていたが裸のままクルスに抱き着いて頷いてくれた。そこから意識有りの二回戦にはならなかったが、風呂でのんびりゆったり過ごすことに。
次回はまた明日〜




