第101話 VRMMO『スカベンジャー・ハント』へ
クロードに手順を教わりながら、ノートパソコンのキーボードを叩く藍葉だったが。ただでさえ、エアコン全開にしても寒さにかじかんでうまくキーを叩くことが出来ない。パソコン教室で早さだけはマシにしたはずなのに、いざと言う時に役に立たないのが悔しい。
それでも、成樹たちを『起こす』ためにも起きている藍葉たちがなんとかしなくてはいけなかった。
『次は―で、その次は』
「うん。わかった」
クロードの方も寒さが増したのか、テレビ通話だというのに寝袋を着たまま指示を出していた。それくらいに、向こうも空調設備を無視すくらいの寒さなのは簡単に予想できた。とはいえ、まだそのわずかな室温維持のおかげで、互いにキーボードをたたくくらいの動作は出来るのだ。命をかけているのは同じ状況なので少しは我慢しなくては。
『パスコードは―—で』
「……入力して」
端末のひとつにしてはチープな藍葉のノートパソコンのディスプレイに、3D加工したような模型が展開された。建物や地面に赤い点のようなものが動いているのが、ユーザーやNPCと呼ばれるものだろうか。クロードに聞けばそうだ、と答えてくれる。
『赤の周りにリングみたいな光があるやろ? それがNPCや。熊谷たちが担当しているんはそいつらのどこかや』
「担当はわからない?」
『正直言って、わからん。最近は別業務担当していたからそっちまで連携しとらんかってん』
「……この中に、シゲくんとお兄ちゃんが」
『俺も潜ったら『寝そう』やからせんけど。……こっちはこっちでちゃんと稼働しとんな。奈月が潜ったかもしれん』
「……その、奈月さんって。どのNPCを担当するかはわからないの?」
『『イバラキ』や』
「……主役のNPC? なんかおかしくない?」
『あいつのマブダチが、『遊べる』ように組み立てたのがきっかけでな? 俺らあと組はあくまで補佐やねん』
「遊ぶ?」
『命削ってまで、最後に自分らの『意識』が残せるように……簡単に言や、墓場や』
「……そんなこと、させたくないよ」
『せやけど。藍葉とかが起きててくれたから……そうはならんようにせなな』
「クーちゃんもね?」
『おん』
このゲームはVRMMOももちろんだが、PCやスマホとも連携して遊べるようにした『ソーシャルゲーム』の一部にしようとしていたらしい。微々たる課金額をちりつも方式で搔き集め、『加東奈月』の生命維持だけでなく、地球全体の生命活動をゆるやかに『眠らせる』ためのシェルターだともクロードが教えてくれた。
そこで、藍葉が思い出したのは『夢』だと思っていた疑似世界などでの活動だ。『ナツ神』との出会い、それまでのファームを運営する上での活動内容も含め……自分があと組だとしても、結構重要な位置にいたのではないか、と。
「クーちゃん。ポイ活ファームを依頼したのが、さっきのハル神だけど。あたしの方にも別の依頼者が来たの」
『……さっきなんかそんなこと言ってたな?』
「こっちじゃ、うちのお兄ちゃんの相手と同一らしいけど……ナツ神っていうの』
『奈月は男やし、あいつは相手いるしな? ……どこにおんねん、そいつ』
「わかないけど。多分、『寝て』いるとは思う。あたしが、精神疾患で寝かされていたように」
『は? そないに君重症なん?』
「ちょっとだけだよ。けど、このモニターの数……その人たちを入れてあげているのかな?」
『適当にNPC選んで動かしてみ? 多分、今の藍葉ならわかるわ』
「うん」
キャラクター名が色々並んだり、スライドしたりして動いたりしていたが。藍葉は奈月と接触できる可能性を見て、まず『ドクター』にカーソルを当ててみた。
瞬間、ふわっと、頭の中に『会話』のようなものが入り込んできた。
次回はまた明日〜




