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気がつけばベッドの中

 勝負後、気を失ったわたしが目を覚ますと、前に一度お邪魔したマリーちゃんの部屋にいた。

 外から差し込む強い光と鳥のさえずりが、今は早朝だと伝えてくる。

 何があったのかと思い出せないわたしが頭を抱えていると、今自分が寝ているベッドの主が顔を出した。


「よく眠れましたか?」


 そう声をかけてきたマリーちゃんは少し寝不足のようだ。


「お陰様で。でもどうしてわたしがマリーちゃんのベッドで寝ているのかな?」

「呆れた。身に覚えがないなんて」


 ポカンという顔をしてしまうが、後から考えれば言われても仕方がない。

 寝不足なのもベッドをわたしに貸したことで、仕方なくソファーで寝たからのようだし。


「昨日の料理勝負のあと急に倒れて大変だったんですよ」


 言われて思い返すとたしかにそうか。

 元より寝不足だったのと、辛勝したことで緊張の途切れたわたしはふっと眠ってしまったんだ。


「ご、ごめん」

「謝るのならヨハネさんにしてください。急に倒れて心配していましたので」

「そうか……そうだね」


 マリーちゃんの言うことはもっともだ。

 言われてわたしも周囲を見回すのだが、そういえばヨハネの姿がない。

 彼はどこに行ったのだろう。


「ところで……ヨハネは何処にいったの?」

「ちょっと用事があると出かけたまま、昨夜から帰ってきていません」


 少し怒り気味なマリーちゃんの回答に、わたしは深く切り込めなかった。

 ちなみに用事とは、マリーちゃんに夜這いを仕掛けるのではと警戒したフランツの差金。

 まさかマリーちゃんも、隠れ付き人のフランツとヨハネが百年来の知人だとは思いもしないので、ヨハネとのお泊りチャンスを潰されたという事実だけで彼に対してむくっとしていたようだ。


「なので私にアマネさんの面倒を見てほしいと言っていました」

「ゴメンね。今日は月曜だから学校もあったでしょうに」

「それは心配いりませんよ。もう夏休みですので」


 言われて暦を確認すると今は七月。

 まだ日本の関東地方の夏ほど暑くないので失念していたが、気候が似ているらしいのでそろそろ猛暑がやってくる季節か。

 高校を卒業してからは夏休みなどお盆だけの出来事だったのでなんだか懐かしい。


「でもせっかくの夏休みならお出かけとかの予定もあったんじゃ?」

「たしかに再来週には先祖供養で実家に帰る予定ですけれど、それまでは予定なんてなにもないので構いませんよ。

 ネイは学校が休みだからと実家の手伝いで営業周りだと言っていましたし、ラチャンはどうせハメを外してハメハメ三昧なので遊んでくれないので、私も少し暇を持て余していましたし」


 だからこの機会にヨハネに密着したかったのにという心の内がマリーちゃんの秘めたつもりの恋心。

 そんな彼女を抑えようとしてヨハネを連れ出したフランツの判断は、彼の正体を知った上で考えればわたしとしてもグッジョブだった。


「じゃあさ……ヨハネが戻ってくるまでわたしと遊びましょう。遊ぶと言っても家の中でできることだけれど」

「いいですよ」

「ありがとう」


 わたしはベッドから降りるとマリーちゃんの手を握る。

 不意に動いたからか寝汗の匂いがふわっと鼻を襲ってきて、刺激臭に恥ずかしくなったわたしは無言の赤面。

 その匂いはマリーちゃんにも通じたのだろう。少し鼻を曲げたように顔が歪んだ。


「でもその前にシャワーを浴びてきてください。着替えは私のを貸しますので」


 わたしは言われるがままバスルームに向かい、シャワーで汗を洗い流した。

 もう季節は夏になる。

 思っていたよりも夜は暑かったようで、わたしの仕事着は寝汗で濡れていて、下着も当然ぐっしょりになっていた。

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