花村大悟
今回、脳ミソだけの怪異人である花村大悟の誕生の秘密が明かされる!?
「脳ミソだけって……そんなのあり得るのか!?」
「だが、現にこうして会話をしているんだ。信じる他無いだろう」
「驚きました……」
呆気に取られる一同。それもその筈、今の今までずっとメイド服を着た女性の方が新メンバーだと思っていたのだから。まさか抱えている瓶に入った脳ミソが本体など、誰が予想出来ただろう。
「……いや、いや!! やっぱりまだ信じられねぇ!! 第一、脳ミソだけなのに何で会話が出来るんだよ!?」
「た、確かにそうですね……腹話術にしても、声帯が無いのでは喋る事は出来ない筈……」
「その辺もちゃんと説明して貰おうか?」
そう言うと影野はソファに腰を下ろし、花村と名乗る脳ミソだけの男の話を聞く事にした。すると花村はメイド型のロボットを動かし、本体である脳ミソが入った瓶を机の上に置かせた。そしてその側でメイド型のロボットの口がカタカタと動き出し、事のあらましを喋り始めた。
「そもそも一年前まで、僕は何処にでもいる普通の“小学生”でした」
「ちょっと待て!! お前、小学生だったのか!!?」
「はい、小学五年生です。あっ、でもあれから一年経っているから今は六年生です!!」
いきなり耳を疑う単語が飛び出した。花村大悟は何と最年少……小学生だった。元気よく答える花村に対して、この事実に三人は思わず互いの顔を見合わせてしまう程、驚きを隠せなかった。そんな三人などお構い無しに話が続く。
「僕は夏休みの宿題に出された自由研究の為に山を登っていました。カブトムシを捕まえようと思ったんです。けど、山には入れませんでした。大人達がテープを張って道を塞いでいたんです」
「何故?」
「その大人達が言うには、“不発弾”の処理をしているから……との事でした」
「「「!!!」」」
「でも、当時の僕は不発弾の意味が理解出来ず、カブトムシを捕まえたい一心で大人達に見つからない様、回り道をして中へと入り込みました」
「へぇ、中々ヤンチャしていたんだな、お前」
「いや、僕はそんな……」
「近藤、余計な口を挟むな」
「へいへい」
話が脱線しそうになり、影野は近藤にいちいち首を突っ込むなと、釘を刺しておく。近藤は分かりやすく右手で口をチャックする仕草を見せる。
「それで? 大人の目を掻い潜って中へ入った後、何があったんだ?」
「えっと、それからしばらくは虫とりに没頭して、辺りが夕日に包まれ始めた頃、そろそろお家に帰ろうと思った矢先、足を滑らせて崖から落ちてしまい、そのまま気を失ってしまいました……気が付くとすっかり日は沈んでいました」
「それは随分と不運な目に遭ったな」
「幸いにも懐中電灯を持って来ていたので、夜道を照らしながら山を降りようとしたんですが、帰り道が分からなくなってしまって、そうしたら強い光が見えたんです」
「光? 山の中で?」
「はい、その光の下に行くとそこには巨大なクレーターがありました。光はそれを照らす照明でした」
「まさかそれって大人達が言っていた……」
「恐らく不発弾の場所だと思います。ですが、不思議な事に大人達は近くにいませんでした」
「いなかった?」
「偶々、出払った時だったのかは分かりませんが、今の内に横切ってしまおうとクレーターの窪みに降りました。その途中、奇妙な物が埋まっている事に気が付きました」
「不発弾か?」
「いえ、黒い只の石ころでした。でも妙に惹き付けられて、自由研究用に持ち帰りました」
「不発弾が近くにあるかもしれないのに、そんな物を持ち帰るとは度胸があるな」
「えへへ、とにかくその日は何とか無事に山を降りる事が出来て、お家にも帰る事が出来ました。母には滅茶苦茶怒られましたが……」
「……それが今の状況と、どう関係して来るんだ?」
中々、本題に入らない花村に苛立ちを覚える影野。それを察してか、花村は咳払いをする。
「……それから何です、僕の身に奇妙な事が起こり始めたのは……」
「奇妙な事?」
「何気無い朝でした。いつもの様に目を覚ました僕ですが、違和感を覚えました。身長が縮んでいたんです」
「縮んだ……どの位だ」
「10cmです」
「10cmだと!?」
「異常ですよね。僕も突然の事で動揺が隠せなかったんですけど、それよりも驚くべき事が起こったんです」
「身長が縮むより驚く事……?」
「賢くなっていたんです」
「どれ位……?」
「ニュースで流れていた偏差値70の大学で出された試験問題を、一瞬で解けてしまう位です」
「「「!!!」」」
急激な身長ダウンに、異常なまでの知能指数アップ。人知を越えたこれらの現象は間違い無く怪異人化による影響だった。
「両親に相談しようとも思ったんですが、そんな事をしたら立ち入り禁止の山に勝手に入った事がバレてしまう。怒られたく無かった僕は黙っておく事にしました。それから日を重ねる毎に僕の身長は、どんどん小さくなって行きました。同時に頭はどんどん賢くなっていき、一週間後にもなると身長は80cm以下、頭は数学上の未解決問題を一分で全て解けてしまう程までになっていました」
「「「…………」」」
スケールが壮大過ぎて、理解が追い付かない三人。最初の虫とりが懐かしく思えて来た。
「そんな身長になれば、さすがの両親も異常だと思い、病院に連れて行かれました。しかし、どの病院でも原因は不明と診断され、精神的に追い詰められた両親はノイローゼに、最終的には自殺しました」
「何だって!?」
「その頃には僕の身長は50cm、頭はありとあらゆる不可思議現象を科学的に解決出来るまでになっていました。それなのに、両親が自殺する可能性すら思い浮かばなかった。笑っちゃいますよね……」
「花村……」
「涙は出ませんでした。賢くなり過ぎた僕の頭は、涙という非合理的な物質は不要と判断したんでしょう。それから僕はこの縮み行く体の事を考え、万が一歩けなくなった時用にサポートロボット“アシス”を開発しました」
「成る程、それがこのロボットという訳か……」
「でもさ、何でメイド服なんだよ?」
「それは僕の好きなアニメに登場して来る子が、メイドキャラだったからです」
「……あっ、そう……」
そこは子供らしいのね、と言いたげな表情を浮かべる近藤。そして影野と姫宮も同じ事を思っていた。
「そして小さくなっていく身長を見て、賢くなった頭脳からある仮説を導き出しました」
「ある仮説?」
「それが脳ミソだけになってしまうという末路です」
「そんなまさか!?」
「でも、実際こうして僕は脳ミソだけになっている。つまり、あの時の仮説は正しかったという訳です」
「…………」
「仮説を導き出した僕は、脳ミソだけになっても生きられる様に、特殊な液体を開発し、同じく開発した核兵器でも壊れない頑丈な瓶にその身と一緒に詰め込みました。そうして生まれたのが、この姿という訳です」
「成る程、お前が怪異人になった経緯はよく分かった」
「ちょっと待てよ。結局、どうやって会話しているのか、話してねぇじゃんかよ!!」
「あぁ、それはこれのお陰です」
そう言うとサポートロボットであるアシスが首の蓋を開け、中から小さなチップを取り出した。
「これは“念喋機”と言います。これに考えている事や、思っている事を送ると、声にして発してくれるんです。脳ミソだけになると仮説を立てた時に作って起きました」
「凄いな、完全に未来の技術だな」
「あの有名な狸型ロボットを思い出しました」
「色々と話してくれてありがとう。そこでもう一つだけ質問しても良いか?」
「はい、何でも仰って下さい。この頭脳ならほぼ全ての質問に答えられると思います」
「何故、俺達の組織に入りたい?」
「…………」
正直、勢いに流されて採用してしまったが、改めて話を聞いた時、疑問が浮かんだ。花村は何故、組織に入りたいのか。聞いた限りでは人間に恨みがある訳でも無い。何か大きな野望を抱いている訳でも無い。それなのに何故、自分達の組織に加入しようとしているのか、それが分からなかった。
「(相手は超頭脳型怪異人……下手をすれば俺の秘密がバレて、組織自体を乗っ取られてしまうかもしれない。そうなる前にこの若い芽を摘んでしまうべきか?)」
必要以上に力が入る。黙り込んでしまった花村。脳ミソだけな為、表情を読み取る事が出来ない。いったい何を考えているのか、得たいの知れない恐怖が襲い掛かる。そして数分掛かって、漸く花村が声を発する。
「何て言えば良いんでしょうか。常人よりも遥かに賢くなってしまったからこそ、いつも感じてしまうんです。この世界に飽きたと……」
「飽きた……?」
「はい、知識は探求心をくすぶります。しかし、その知識が限界まで到達してしまうと、途端に探求心も失われてしまい、何をするにも退屈に感じてしまうんです。だってもう答えを知っているから。そんな時、あのメッセージを見ました」
「俺のメッセージか」
「初めてでした。僕の頭脳を持ってしても、あなたの考えや行動を読み解く事が出来なかった。この道の果てに何が待っているのか、全く予想が付かない。だからこそ僕は知りたい、あなたが何を為すのかを!! 僕は芽生えたこの探求心に従ってここまで来たんです!!」
声だけで熱く語る花村。表情が読み取れない為、信用するかどうかはこの言葉だけになる。
「(ハッキリ言って、こんな奴を組織に置いておくのは危険だ。しかし、メンバーが少ない現状、このまま見過ごす訳にはいかない。それに超頭脳型の怪異人なんて、最高の優良物件じゃないか……よし)」
「どうかしましたか?」
「改めて君の入団を認める。これから組織の為に頑張ってくれ」
「えっ、あっ、本当ですか!!? ありがとうございます!! 僕、一生懸命頑張ります!!」
アシスを使って、何度も頭を下げる花村。そんな花村を祝福するかの様に、近藤と姫宮の二人が拍手を送る。
「歓迎するぜ」
「仲良くして下さいね」
「ありがとうございます!!」
「さて、花村が入った事でメンバーが四人となった訳だが、まだまだ足りないな……」
「それなんですけど、実は僕なりに新メンバーになってくれそうな人物の情報を仕入れて来ました」
「おぉ、早速大活躍だな。これは近藤や姫宮も、ウカウカしてられないんじゃないか?」
「へっ、まだまだこれからだよ」
「負けてられませんね」
するとアシスが腹の蓋を開け、中から書類の束を取り出し、影野に手渡した。そこには両目に傷が入った強面の男の写真が張られていた。
「怪真会と呼ばれる極道組織です」
「「「…………」」」
影野達の次のターゲットが決まった。
次回、影野達が怪真会に殴り込む!?
次回もお楽しみに!!
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