怪真会
前回、脳ミソだけの怪異人“花村大悟”がメンバーに加わった。
今回、怪真会について詳細が明らかとなる!!
怪真会。組員数500人。昭和初期に設立し、年代を重ねる毎にその勢力を拡大し続ける古参の極道組織。
主な仕事内容は違法賭博経営や風俗店の経営、金貸し、借金の取り立て、地上げ、用心棒の依頼など、手広く活動している。その血も涙も無いやり方から、度々ニュースや新聞に取り上げられ、間接的に一般市民を恐怖に陥れている。
警察組織も何とかして尻尾を掴もうと躍起になるが、捕まえる事が出来るのは末端連中ばかりで、中枢を担う幹部達は一人も捕まえられていなかった。
一方で義理や人情にはとても厚く、ある日組員の一人が道端で熱中症で倒れ、それを一人の男性が助けた際は、その男性が経営している孤児院に多額の寄付をしたり、貧困で物乞いをする家族を見掛ければ、溢れんばかりの食料を恵んでやるなど、普段の活動からは信じられない優しさを見せる。その為、地元の人々からは愛されている。
組員数500人。他の組織から比べれば、多くもなければ少なくもない。だが、その実力は折り紙付きであり、過去に倍近い敵対組織と正面衝突した際は、一人の犠牲者も出さずに鎮圧して見せた。その中でも特に若頭“谷原義昭”は過去にカチコミに来た敵対組織の組員100人をたった一人で返り討ちにした“伝説の男”として、これからの極道組織を支えて行く一柱になるだろうと、裏社会の間で一目置かれている。
そんな裏社会の顔役として周囲から恐れられる怪真会だったが、ある日を境にパッと姿を消してしまい、今では殆どの者達から存在を忘れ去られ、噂にすらされていない。
「……とまぁ、ここまでが世間一般に知られている情報だね」
ここまでの話は、世間一般に知られている情報。新聞やネットなどで調べればすぐに分かる。そう、大事なのはここからなのだ。
現在、影野と花村の二人は森林を歩いている。近藤と姫宮の姿は無い。盛り上がった土や石で足場が不安定な道を真っ直ぐ進んでいる。歩いて約一時間、怪異人となった事である程度の体力は付いた影野だが、それでも徐々に息が上がって来た。
花村を抱えるアシス。万が一転んで落としてしまわない様、下半身をキャタピラーに変形させ、更に背中から複数本のアームを展開し、道行く先の石や木の枝を取り除いて行く。その様子を横目で見ながら、影野は羨ましいと思いながら、男のロボット心を擽られていた。
続けて辺りを見回す。視界に映るのは木、木、木、木、木ばかり。これだけ歩き続けても尚、代わり映えしない光景に飽き飽きしてしまい、花村に問い掛けた。
「なぁ、本当にこんな所に怪真会の本部があるのか?」
「過去にこの森林に入って行った組員を見掛けたっていう情報が幾つかあったから、まず間違いないと思うよ」
「そうは言ってもな……」
仮にも裏社会の顔役とも言われていた組織の本部がこんな人気も無い、道も舗装されていない、歩いて一時間以上かかる場所にあるとは到底思えない。
こいつの情報収集能力は認めているが、こうも信じがたい道を通っていると、段々と不安になって来てしまう。
「それで?」
「えっ、何が?」
「何がじゃなくて、続きがあるんだろう。さっきここまでが世間一般に知られている情報だって言ってたじゃないか。世間一般って事は、何かあったんだろう?」
「……怪異人化だよ」
「何だと!?」
花村から出た意外な言葉に思わず足を止めた。それに合わせて、アシスの動きも止まる。脳だけになっている為、表情は読み取れないが、その時だけは何となく暗い表情を浮かべている様に感じられた。
「500人の組員が一同に会する日の事。その異変は一人の組員から始まった。突如、顔が粘土の様に歪み始めたんだ」
「顔が!?」
「続けて近くにいた組員の体が膨張し始め、更に幹部の一人も全身が青色に変色し始めた。そして最悪な事に会長までもが全身から茸が生え始めた」
「それはつまり組のトップが怪異人になってしまったって事か?」
影野の言葉に応えるかの様に、花村の言葉を喋るアシスの首が縦に動いた。
「その日、組員500人の内約350人が怪異人になってしまった」
「一体何が起こったんだ?」
「当初は敵対組織によるテロだと考えられていたけど、全員にアリバイがあって結局の所は原因は不明と判断された」
「…………」
「組員の半数以上が怪異人になってしまって、怪真会のシノギは激変してしまった」
「まぁ、当然だろうな。それで怪異人になった組員は全員破門されたのか?」
「ううん、どうやらそのまま大切に匿ったみたいだよ」
「義理や人情を重んじるというのは、どうやら本当みたいだな「けど……」ん?」
「それから数日後、本部に非労運達が攻め込んで来たんだ」
「何故バレたんだ? こんな人里離れた場所の情報が漏れる訳が……密告者か」
「僕もそう思うけど、詳しい事は分からない。とにかく非労運達は怪異人と化した組員達を片っ端から殺して回った。仲間を守ろうと人間の組員が何人か楯突いたけど、結果は火を見るより明らかだった」
「だろうな、非労運に何の策無しに真正面からぶつかればそうなる」
俺自身が身を持って体験しているからな。怪異人になって数日しか経っていないのなら尚更だ。組織全体が混乱して纏められなかっただろうな。
「この戦いで組長含めて怪異人化した組員は全員死亡。残ったのは若頭の谷原と数百人の部下だけ……」
「成る程、そいつらがこの先でひっそりと暮らしているんだな?」
「いや、話はまだこれで終わりじゃないよ」
「何?」
「頭を失った怪真会だけど、その影響力が衰える事は無かった。それは伝説の男という異名を持った谷原義昭の存在があったからに他ならない。だけど、その異名が仇となった」
「どう言う意味だ?」
「疲弊しきった怪真会の噂を聞き付け、敵対組織同士が同盟を結んで完全に潰しに掛かって来たんだ」
「まるで弱った動物を襲うハイエナの様だな。だが、数百人を一人で相手していた谷原なら問題無いんじゃないか?」
「その反省を活かして今度は三倍、約300人の組員を募っていた」
「たった一人にそこまでやるとはな」
「更にそいつらは怪真会の人情を狙って、仲間の一人を人質にした」
「姑息だが、相手によっては理に叶った戦法とも言えるな」
「その結果、数少ない数百人の内、八十人近くが殺され、谷原も片腕を失くした」
「惨いな」
「そうして怪真会は怪異人化から数日、あっという間に歴史の闇に葬られてしまったんです」
「つまりその僅かな生き残りが、この先の本部にいるって事だな」
「はい、そういう事です。歩いてから一時間経過しましたから、もうすぐだと思いますよ。急ぎましょう」
「…………」
そう言うと花村は話を切り上げ、先へと進んでいく。影野は何かを考え込みながら、その後を追い掛けるのであった。
怪真会の悲劇……。
果たして影野達は、怪真会の組員達を味方に付けられるのだろうか!?
次回、怪真会の若頭であり、伝説の男と呼ばれた谷原義昭が登場!!
次回もお楽しみに!!
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