第六十七話〜制圧〜
投下です!
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「では行きます。アキトさんは陽動もお願いします」
バッと駆け出すシーニャさん、やっぱり恐ろしいスピードだ。
そうやったらメイドさんの靴であそこまで速度を出せるのだろうか。
と今はそうじゃない。
よし陽動か、とりあえず目立って攻撃すれば良いのかな?
「おい!」
そう叫ぶとユウゴ達はこちらを振り向く。
辺りはもう夕焼けの光で真っ赤だ。
一直線に走るがやはりシーニャさんには敵わない。
「お前、復讐に来たのか!」
「違うに決まってるだろクソ野郎!」
銃を構え威嚇してくるが、そんなものは気にしない。
「止まれ、止まらないと撃つぞ!」
「そんな事言われて止まる奴なんてそうそう居ないんだよ馬鹿野郎!」
そのまま距離を詰める、案の定撃ち込んでくる。
だが━━━━━━━━━
「なにっ⁉︎」
たかが銃弾ごときが俺の鎧を貫ける訳がない。
あっさり六発撃ち切ったようだ、これでリロード時間が稼げるはず━━━━━━━━━
「『リロード』」
そう言うと引き金を引き、
「うおっ⁉︎」
なんでや! ノータイムリロードとか反則やろ!
そんな事を考えていると、
「どうも、ではお縄についていただきましょう」
シーニャさんが大鎌を振りかぶり、ユウゴの後ろに立っていた。
「おおおお!」
ユウゴは後ろに振り向きざまに銃についた刃を振り抜くが、そこにシーニャさんは居ない。
それを見たユウゴはバックステップで距離を取る。
よし、青髪と無口の注意が逸れた。
無言で近づくが、もちろん俺に気付いて氷の槍を矢継ぎ早に撃ち込む青髪、だがその程度のチンケな魔法は効かない。
そのまま距離を詰めると、魔法に紛れて無口が飛びかかって来る。
その拳を払い、掴み取る。
なんだ、あの食堂の兵士達の方がよっぽど強いじゃないか。
無口の襟元を掴み、足を無口の足と足の間に入れ込んで転がす。
「あっ……」
そう言う声出すのやめて下さい、なんか可哀想になるじゃないですか。
これでもちゃんと手加減してるんですよ?
「ユナを離せ!」
青髪の子が怒って魔法を撃ち込んでくる、おいおい危ないじゃないか。
大事なお仲間さんに当たっちゃうじゃないか。
無口の子、もといユナを背中側に引っ張り、青髪の子に詰め寄る。
青髪の子はさっきから魔法を撃ち続けたせいか疲弊しきっているようだ。
だがその目には激しい敵意が……敵意が……
「そんな目で見るのやめてくれないか? まるで俺が悪者みたいじゃないか」
「なによ、アンタが悪者じゃ無いって言うわけ⁉︎ 大体、元はと言えばアンタがあの子からお金を取ろうとしていたんじゃ無いの!」
「いや嬢ちゃん、実はそれは誤解で━━━━━━」
「ルナさん頑張って! そんな奴に負けな」
「黙ってろクソガキ」
手に持ったメイスをスリ犯のクソガキの横に投げつける。
足元にメイスが突き立ったのを見たクソガキは股を濡らしてへたりこんでやがる。
良く見たら気絶までしてる、ざまあみやがれ。
「待ってルナ、多分その人、悪い人じゃない」
「なんでっ……!」
「ルナの魔法が私に当たりそうになった時、守ってくれた」
ユナがそういうとルナはハッとしたような顔をした。
ていうか青髪がルナ、無口がユナ、似たような名前で言いにくいな。
口ぶりからするに姉妹っぽいし仕方ないか。
いや、そんな事を言ったらシーニャさんとシージアも似てるわけで……
「でもそいつはこの子からお金を……」
「それに手加減してくれた、私はどこも怪我をしていない」
「……わかった。とりあえず話を聞きたいけど、ユウゴは、そうだ! ユウゴはどうしてるの⁉︎」
「あっちで戦ってるぞ」
シーニャさんと激戦を繰り広げている。
表情からしてユウゴはかなり追い詰められているようだ。
ユウゴが光の槍を撃ち出すがシーニャさんは鎌で切り払い、転がり、木を盾にしてその全てをあっさり捌き切る。
距離を取りつつユウゴがシーニャさんの足元から石の槍を突き出す、するとシーニャさんはそれに飛び乗り逆に距離を詰める。
シーニャさんは空中で身動きが取れず、隙が出来たかに見えた。
ユウゴはすかさず銃撃、だがシーニャさんは鎌を空中で引き寄せ体の位置をずらす。
鎌の重さをフルに使っている。
そしてそのままユウゴの横に着地、鎌を喉元に突きつける。
「チェックメイトです」
そしてユウゴを押さえつけ、どこからか取り出した縄で縛る。
いっつも思うんだがどこから出してるんだ? さっきのメイスや鎌といい体積やサイズ的におかしいだろ……
だがそれは今じゃない。
「こっちも大丈夫ですよー」
シーニャさんを呼ぶと縄で後ろ手に縛られたユウゴを引っ張ってきた。
項垂れていてなんだかちょっとスカッとした気分だ。
「では詳しくお話を聞かせて頂きましょうか」
***
場所は変わって街道沿いの道、王城の側の詰所を目指して歩いているところだ。
一応ユウゴとスリの少女にはまだ縛っている。スリは当たり前だが、ユウゴはもし暴れられると危険だと判断したためだ。
そうそう、そういえばどうやらスリの少年は少年ではなく少女だったようだ。全然わからなかった。
「まどろっこしいのは無しです、本題に入らせて頂きます。ユウゴさん、貴方はなぜあの時路地裏でアキトさんがあの少女に詰め寄っていたかご存知ですか?」
まあ知らないとは思いますが、とシーニャさんが冷たい視線を向けながら言う。
あんな目で見られたら俺だったら土下座しちゃうね。
「それはこいつがエメリーから金を取ろうとしたからじゃないんすか」
不貞腐れているのか偉くぶっきらぼうな口調だな。
まあいい、そんなことはどうでも良い。
「そいつはは違うなユウゴくん、そのエメリーとやらはスリだ」
「な、何を言って……」
そう言うと狼狽えたような表情をするユウゴ、そりゃそうだよな。
誰だって自分が間違ってたらそんな顔するよな、それが重大な間違いとなると尚更な。
「じゃあ逆に俺がカツアゲしようとした証拠なんてあるのか?」
「そ、それはエメリーがそう言ってたし……」
「それは一方的なモンだよなぁ?俺の意見はどこに行ったんだ? なあ、教えてくれよ」
「しかもそのエメリーとやらが腰につけてるナイフ、そいつも俺のだ」
捕まえてから気が付いたのだが、俺が気絶した時にナイフも持っていったようだ。
どうせ捕まる良いとでも思ったのだろうか。
「そ、そんな……」
「良いこと教えてやるよ、俺が取られた金額だ、六万二千だ。ナイフも合わせたら十万、アンタからしたら端金かもしれないがな、ここの住民が一生懸命一ヶ月働いて手に入る給料の半分だ」
ユウゴの顔はもう真っ青だ、冷や汗がダラダラ流れている。
まだ俺の事を信じ切った訳じゃないだろうがな、じゃあ最後の詰めだ。
「俺は財布の中には六万二千入ってるって言ったよな。じゃあ確認しようじゃないか」
そう言い、エミリーの懐を探ると案の定財布が出てきた。
今朝俺がマーサさんに貰ったものだ。
ついでにペーパーナイフも取り返しておく、これで俺の財産は全部返ってきた訳だ。
シュンヤの前で財布の中身を一枚ずつ取り出す。
「先ずは金貨だ、一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚。キチンとあるなぁ?」
もし六枚なかったりしたらどうしようと思ったのは秘密だ。
「じゃあ銀貨は、一枚、二枚、ほら、ちゃんとあるな?」
そう言うとユウゴは青かった顔を蝋人形のようにさらに色を失う。
顔は冷や汗がダラダラ流れている。
そしてユウゴは━━━━━━━
「本当にすいませんでした! 俺が悪かったです、罰も全部俺が受けます。なのでどうかあの二人には何も……!」
ふーん、そう言うところは案外男気があるんだな。
好感度が少し上がったぞ、元が低すぎるからあんまり変わらないけどな。
「いいよ」
「お願いします、どうか……え? 良いんですか?」
「ああ、ちゃんと過ちを認めてくれたしな。それに案外男気があるじゃないか。た だ し、俺が受けた身体、精神的な損害分はきっちり払って貰うからな」
一応詰所に連れて行くと伝えたらあっさり納得してくれた。
やはり日本人、罪の意識が強うのだろう。
とりあえずはこれにて一件落着ということか。
「アキトさん、あれでよかったのですか?」
「はい」
「そうですか」
あれとはユウゴ達の処遇についてだろう。
俺はあれで良いと思う、多少甘いかもしれないが若気の至りということだ。
多分同じくらいの年齢だけど。
「あ、そうだシーニャさん」
「はい、なんでしょう」
「本当にありがとうございます」
シーニャさんに向けて深く頭を下げる。
解決したのもシーニャさんのおかげだ。
「いえいえ、友人のためですから」
そう言ってシーニャさんは少し、ほんの少しだけ微笑んだのだった。
いかがだったでしょう?
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次回投稿は二月十二日、明日の予定です!
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