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あの日彼女は、自らが信頼するものへ娘を預けた。彼女の望みはたった1つ。
どうか、娘がその生まれによって迫害されることがありませんように。
娘の人生が、長く幸せなものでありますように。
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シャルロットのことについて教えてくれ、と詰め寄るアルバートと、側近の一人で騎士団長であるディラックに対して、シスターたちは「あらあら」と笑うだけで、一向に答えてはくれなかった。
もとより素直に教えてくれるとは思っていない。サマセット公爵家のものが信頼してシャルロットを預けた先であるのだから。
アルバートとディラックは、皇帝からの文を読み上げた。
「政局は、また移り変わろうとしており、ともすれば10年前と同じことが起きるかもしれぬ」
そのためにも、何より、シャルロットの為にも、力を貸してくれまいか。
シスターは、やっと中へ二人を通し、座るよう勧めた。
しかし、シスターは話そうとしない。
何故なのか、と二人が詰め寄ると。
「今度の政変は、妃の座を巡って起こるものだと思っております。その中で、シャルが、公爵令嬢である事を知られる方が危険だと思いませんか?」
「そして、私たちはあなた方のやり方、ひいては陛下のやり方に納得しておりませぬ。」
急に連れ去って、バイト代だと8,000ベルを孤児院に置いていって。
シャルは物ではない。
家族であるシャルと急に引き離された私たちの気持ちも考えたのでしょうか。
これでシャルは、二度も家族と引き離されたことになるのですよ。
静かにそう語るシスターに、アルバートらは何も言うことはできなかった。
シャルロットはお金に困っている孤児院に8,000ベルを届けた、と聞いて、家族のために引き受けたのだろうか。
そうじゃない、と言い切ることは、どうしてもできなかった。
というより、シャルロットの孤児院がお金に困っていることを踏まえて、こちらも依頼したからだ。断ることは出来ないだろうと。断られることのないように、上から命令したのはこちら側だ。
しかし、このまま皇帝がシャルロットを妃に望んだ場合、シャルロットに拒否することはできない。否、出来るかもしれないが、まだこの国では身分が上のものに下のものが、況してや平民が逆らうなんてことは考えられなかった。
そうなれば、輿入れの際、「公爵令嬢」そして「先代の皇帝の姪」という身分は、確実にシャルロットの盾になろう。そして、ディラックら騎士団も、大手を振って護衛ができる。
なにより。
貴族の家に生まれたものは、その義務を手放してはならない。平民の上に立つ者として、相応の覚悟をもって両親は子を産み落とし、それに応えるのが貴族の家に生まれたものの義務であり、宿命である。
たとえ、記憶が失われようとも。
そしてそのことは、シャルロットだけではなく、もしシャルロットの家族が生きていれば、その家族にも言えることだ。
アルバートはそうシスターに話し、また来ます、と席を立つと。
「あの子が望むなら」
「あの子が知ることを望むなら、私はあの子に話しましょう」
シスターはそう言った。




