11
シャルロットがどうやらサマセット公爵家について、調べているらしい、ということはレイスも報告を受けていた。
「陛下、放置していて良いのですか?」
「構わぬ。シャルロットは仮初めの妃なのだから。」
アルバートの質問に、レイスは手を振って答えた。
駄目になれば、次の妃を雇うまで。確かに都合が良く、居心地も悪くはなかったが。そして、仕事が出来る。
手放すには惜しいが、自ら火に飛び入る者を止める趣味もレイスには無い。シャルロット公爵令嬢は、「死んだ」ことになっているのだから。
そして、駄目にならなければ、一生後宮で匿えばよい。その時は、シャルロットに公爵令嬢の身分を復活させれば良いだけなのだから。
アルバートは頷き、ディラックに目配せをした。
***
近々「その日」が来ることは、シスターアンはアイリーンに告げられていた。
この修道院に所属するうちの三人のシスター、アン、ドロシー、トロイスは、アイリーン伯爵令嬢の「影」であった。
皆孤児の頃にアイリーンに拾われ、伯爵家で育てられ、そして伯爵領地のこの修道院にやって来た。
全ては、アイリーンの為になる情報を得るために。それは、アイリーンがジョゼフ公爵に嫁いでからも変わることはなかった。
修道院の教会には、多くの人が「懺悔」をしに来る。そして、その懺悔は神の元に届き、彼らは赦される。
その懺悔は誰にも伝えてはならないが。
「その懺悔の裏にある事情、事実」について独自に調べ、アイリーンに報告することを三人はしていた。
ある日、「万引きをした」という少年が来た。
そこから見えるものは、「万引きをしたことを悔いるほどの育ちをした少年が、万引きをしてしまうほど財政が悪化している」という事である。
買い出しのついでに街を視察し、財政状況についてアイリーンに報告するつもりで、路地裏の会話に耳を澄ませていれば、面白い会話が耳へ飛び込んできた。
***
シャルロットは、シスターの話を聞きながら考える。
自国の方が安全な理由は、他国に有力者、しかもこの国とつながりの深い者がいるからだ。国境に位置する公爵領ではなく、山の麓に位置する伯爵領に預けられたことも諸々納得が行く。
ならば、その「有力者」とは誰なのか。




