雨も滴る良いジョルジョ!
四色クローバーを納品してから三日。私はもう一つ四色クローバーを見つけた。だけど、虹色のクローバーを見つける事が出来なかった。
「あと、三日。あと三日だ、出来る、出来るぞ、諦めるなのでっす」
ジョルジョさんからも、「見つかったか?(脳内訳:シャルル、今日も可愛いな)」「無理すんなよ(脳内訳:シャルル、一緒にいたいけどな)」「ちゃんと飯は食えよ(脳内訳:俺はどんなシャルルも好きだ)」と聞かれている。もう、賭けの期限まであと少し。ギルドの中でも、頑張れ!と応援されている。ここは私の踏ん張りどころだ。
「むう。…四色クローバーを見つけた時は門の閉まる少し前だったのでっす…」
もしかしたら、と思う事はある。
私は朝早く出掛け、夕方には帰る。そう、夜は魔物が活性化するし、門も閉まる。弱い私は夜は採取しないのだ。
しかし、夜しか採取出来ない物もある。
「やるか。やるしかないのでっす……」
私は魔物避け、ランタン、携帯食料に水筒。ありとあらゆる準備をすると、南の森へと泊まりで出かける事にした。
勿論、ジョルジョさんに、お弁当もお願いする事にした。
「おはようございます、ジョルジョさん!今日も素敵でっす!ビスケット四つとサンドイッチ!それと、固焼きパンを二つ、干し果物とジョルジョスマイルをお願いしまっす!」
「今日は沢山だな?」
「はい!」
「まあ、よく食うのは良い事だ。あと三日。無理すんなよ!」
「はい!」
「ほら、気を付けてな」
「はい!今日も、明日もジョルジョさん大好きでっす!」
「ああ、分かったよ、シャルル。ん?明日も?」
「ではいってきまーっす!!」
「ああ」
私は皆が軽装で出かける場所でも、念には念を入れて色々と持って行く。少しの傷で足を落とす事になった人を知っているし、安全と思われた場所で急に魔物が出た事も知っているからだ。
「絶対なんてないのですよ。だけど、私もD級冒険者。夜の採取もそろそろ頑張らなくては」
野営する場所をしっかりと明るい内に決め、知り合いの冒険者にはハンドサインで挨拶を欠かさない。
『もう夕方だぞ?』
『今日は野営します』
『シャルルが?』
『はい。ギルドにも届けをだしています』
『まあ、南の森だしな。奥ではなく、この辺りで?気を付けて』
『ありがとう、あなたも』
何人かの冒険者達とそんなサインで会話しながら、私は目を付けていた場所に虹色クローバーがないか、確認していった。
「ふう。準備は出来た。夜見つける事が出来るなら今日か明日。満月だ。チャンスはまだあるのでっす。でも、満月はちょっと危険なのですよ…魔物も元気いっぱいになるから…。とにかく、安全に。そして、素早く行動。全身に魔物避けも塗って…」
ランタンの火は朝しか使わない方がいい。夜は盗賊や魔物が火に寄ってくることもある。だから、アイリーンさんに貰った光ゴケ。これは確かに弱いけれどその灯りで行動した方が安全である。
「良い物を頂いたのでっす。よし、仮眠をとりながら、がんばろう」
私は木の上に自分の身体を縛り付けて仮眠をとると、光ゴケの光を頼りに虹色クローバーを探してはまた、安全な場所にさっと隠れるという行動を続けた。
が。虹色クローバーを見つける事は出来ずに朝日が昇った。
「朝日が目に染みるのでっす…。食料も水もあるし、新しく採取出来た物もある。よし、がんばるぞ、おー」
私は朝から採取を続け、虹色クローバーを探し、そしてあっという間に夜になり、また同じ行動をする事になった。
空を見上げれば、満月が浮かんでいる。月の光が優しく森を照らし、小さな魔物の音も良く聞こえた。
気を付けながら虹色クローバーを探していると、急に風が吹き出し、月を雲が隠した。
「雨の匂いがする、急げ、急げ」
木の上のなるべく葉が生い茂る場所に避難すると、私は防水布を被った。こういう匂いの時は一気に雨が来る。
そう思ったらピカッと辺りが照らされて、ドーンっと音がすると同時に雨が凄い勢いで降り出した。
「ひゃああ」
目の前が見えなくなるほどの雨が一気に降り出し、雷の音と雨の音で、私は布にくるまってじっとしていた。
これは、虹色クローバーどころではないかもしれない。三日月の短剣の材料をジョルジョさんに献上する事になるなあ。まあ、それはそれで「愛するジョルジョさんへ、愛を込めて、シャルルより」と短剣に彫って貰おう。
もう日付が変わり、王都の門が開いたら、すぐにギルドに行かなくては、なんて考えていたら、雨の音に混じって、幻聴が聞こえてきた。
「!!!ルル!!……!!!シャ……」
ん?愛しい人の声に似ている。声が聴きたい、姿が見たいと思っていたからついに私は特殊能力を身に着けてしまったのか。
なんと便利な能力だ。
「シャルル!!!どこだ!!!」
「あれ?本当に聞こえてる?」
雨が少し弱くなり、雷が遠ざかったようで、防水布から顔を出して下を覗くと、愛しいジョルジョさんが防水フードを被っていた。
「ジョルジョさーーーーん!!!」
思わず叫んで、急いで安全紐をほどいてジョルジョさんに飛び降りようとしたが、ジョルジョさんが泣きそうな顔をしていて、固まってしまった。
「シャルル!!!」
「はい!!!」
「お前!何で!!!」
「はい!!!」
「何してんだ!!!」
「木の上で雨宿りしていまっす!!!」
私が大声で答えると、もう、何もかも吐き出したような深い「はあーーーーーーーー」っという溜息がジョルジョさんから聞こえた。
「降りてこい!!!」
「はい!ただいま!少々お待ちください!」
よいしょ、よいしょと私は安全紐を全てとりおえ、ずるずると濡れて滑りやすい木から気を付けて降りようとすると、ジョルジョさんにひょいっと抱えられた。
「馬鹿やろう…」
「え?いきなり悪口?」
「お前、なんで帰って来ないんだよ…」
「ギルドには報告していまっす」
「だけど、雨降りだしただろう?お前、今までは絶対、帰って来てたじゃないか」
「はい。だからちゃんと届をだして、そして準備万端にしてきました。虹色クローバーはですね、夜に見つかると思いましたのでっす」
ひょいっと抱かれたまま私は答えていたが、凄く大事な事に気付いた。
ジョルジョさんに抱っこされている!!!!
「ほおおおおおお!!ジョルジョさん!!抱っこ!抱っこ!抱っこしていまっす!」
「うるせえええええ!!!」
「はい!!すみません!」
私の顔を掴むと、ほっぺを思い切りひっぱられ、「帰るぞ!!!」と言われた。
「じょぶじょしゃん、みょんまだあひてましぇん」
「もうすぐ、開く。今から森を抜ければ丁度だ」
「しょーでしゅか」
ジョルジョさんは、パンっと私の頬をまた最後に引っ張ると、「行くぞ」と言って私に怪我がないか確認したので。「ほっぺがジンジンして、痛いのでっす」と言ったが無視された。




