人気D級冒険者、指名依頼なのでっす!
「こっちの薬草は乾かして、傷薬の材料は、ああ、ないでっす。次は靴下の穴の修理を……」
私はDランク昇格して暫くは装備の点検をしたり、薬草を乾かしたりと、作業を中心に行動をしていた。こういう、地味な作業が凄く大切なのだ。
王都内の細々とした雑用を受けると、王都内の事だけではなく、色んな噂話も耳に入る。そう言う噂話が仕事に役に立つこともあるのだ。
例えば。
「南の方に雨が多いらしい。荷馬車が遅れてたよ」
「お貴族の姫さん達の中で、黄色が流行ってるんだってさ。舞台俳優の黄色髪の男前が原因らしい」
「北の方の魔物湧き、解決してよかったなあ。ほっと一安心だ」
ネコを探して欲しいというお願いを聞くと、こんな噂話を聞いた。
これで大事なのは「王都の護衛専門の冒険者が南に行って、戻ってくるのが遅くなる」というのが分かる。しかも「防水布や、雨靴が高くなる」可能性があるのだ。
「黄色が流行っている」という事は「黄色に染める、メチョの花の採取依頼」が多くなる可能性がある。今から採取して乾かして置いても、採取以来は達成できる。
「そして北からの冒険者が王都に増える可能性も多くなった」というのが分かるのだ。
「ふむ。では、高くなる前に防水布はボロになってたから、今日にも買っておくのでっす」
私は小遣い程度のクエストを受けたりしながらも、荷物の点検や、防具の購入に時間を使った。
そしてしっかり準備が整うと、何日かぶりに王都の外のクエストに向かう依頼を受けに来た。
ギルドの依頼ボードを見て、出来そうな依頼書を確認して、ボードからはがしていると、受付の方から名前を呼ばれた。
「クリスティさん!ああ、よかった。指名依頼が入ってまして。宜しければそちらから受けてくれまえせんか?」
「こんにちは!指名依頼?どれどれ?なんでしょうか!」
「クリスティさんに受けて頂くと、助かります。評判が大変いいので。依頼内容はですね、上級薬草、三十本。殻ごとのピピンの種、十個。それに、パルポの実、最低二個の上限無しの依頼ですね。どうでしょうか、是非、お願いしたいのですが」
「三件か…。まあ、準備は出来てますし。うん。南の森と大草原で出来るし、よしいいですよ、受けまっす。パルポはアイリーンさんですか?」
クエスト受注の受付で、ギルド店員さんからお願いされたクエスト依頼を見ながら私は答えた。
「ええ、冒険者のアイリーンさんです。助かります、では受付ますね」
「はい。では、パルポからしていきまっす。順番としては次がピピン、そして上級薬草と納品となるとおもいまっす」
「期日は二週間です」
「分かりました。このトゲトゲ草のクエストも受けていいですか?」
「はい、ではそちらも宜しくお願いします」
クエストを無事に受けると、私はジョルジョさんの食堂に寄った。最近は王都の外のクエストを受けていなかったので、お弁当を買うお金はないが、レモン水は安くて水筒に入れて貰える。
「おはようございまっす!今日も素敵なジョルジョさん!レモン水お願いしまっす!!それとスマイルを!ジョルジョスマイルを渡しに特別にお願いしまっす!ウインクでも可!」
水筒を差し出しながら挨拶と注文をすると、ジョルジョさんは「おはよう」と低い声で言いながら、受け取ってくれたが「そんな事、するか」と言われてしまった。
「ジョルジョさん、夜もまた納品に来まっす!!こっちにも顔だします!ちょっと今、金欠で、パンだけ買う事になるかもですけど、でも、その時はジョルジョスマイルで迎えて下さい!」
「ああ。気を付けてな」
「ふぇ!素敵なジョルジョさん!貴女のシャルルは気を付けまっす!」
「飯はできるだけ抜くなよ。……シャルル」
「はぅ!はい!しっかり食べまっす!シャルルは頑張りまっす!絶対に気を付けまっす!!ジョルジョさんも気を付けて!」
「俺はここで料理作っているだけだからな。大丈夫だよ」
私は水筒を受け取り、お金を払った。
「火傷とか、指切っちゃうとか何処に危険があるか分からないのでっす!だからジョルジョさんも気を付けて下さいね!」
「ああ。そうか。まあ、そうだな。じゃあ、また夜にな」
「はい!絶対夜に!ジョルジョさん、今日も大好きでっす!」
私はそう言うと、手を振る私に面倒そうに振りかえしてくれるジョルジョさんを目に焼き付けて、ギルドを出た。
朝からジョルジョ栄養を貰って幸せだ。さて、頑張るか。ジョルジョさんからも気を付けてな(愛してるぜ:脳内訳)と言われた事を思い出し、今日のクエストに頭を切り替えた。
王都の門を出てすぐの大草原へと向かった時には、魔物避けのお香を焚いて腰に着けた。大草原は比較的安全な場所ではある。旅人が進む道には脇に魔物避けの薬草がずっと植えられているし、所々、休憩場所もある。
だから、魔物避けのお香をここで使う人は少ない。が、私は自分が弱い事を知っているので、安全にとにかく安全を期して出来る防御はなんでもしておくのだ。
「愛するジョルジョさんの賭けの為にもしっかりとクエストもクリアしないと。虹色クローバーも見つけられるはず」
大草原を進みながらも、めぼしい素材を見つけては採取していく。
「ここに生えているモノは全て私のモノにも出来る…ふっふっふ。買えば高いけど、採ればタダ、へへへ、タダ……」
プチプチと薬草を綺麗に採って腰にぶら下げる。乾燥させた薬草とニガニガの種をすりつぶして混ぜて固めたら、魔物避けのお香にもなる。Dランクになればギルドで売ることも出来る。注意深く辺りを見回しながら、私は南に進路をとった。
「こんなものかな。よし、次だ。さ。パルポの木の方に行こう」
南の森に入ると小型だが魔物が出だしてちょっと危険になる。チラホラと新人冒険者がパーティを組んで狩猟クエストを受けてるのだろう。
邪魔にならないように迂回することにした。
この南の森のクエストはEランク冒険者がよく受けるのだ。知り合いの冒険者にお互い手で合図を送った。
『西周りに行く』
『ありがとう。南の方でモンスター探す』
『健闘を祈る』
『あなたも』
ジョルジョさんと新しい賭けをして、もう一週間。まだ虹色のクローバーを見つけていない。あと三週間で見つけないと。
「アイリーンさんのパルポの実。昨日ちょうどいくつか見つけたからそれを収穫しておこう。そして虹色探しながら、トゲトゲ草も近くにあったはずだから採取しておこう」
ぶつぶつ言いながら確認していく。パルポの実は外側は紫の色で皮をむくと甘酸っぱい果肉がでてくる。暑い季節になる実で、美味しいし、見つけるのも難しくはないが、採取の手順が面倒だと言う人はいる。
まず、実の周りの古い葉を枝をなるべく傷つけないように落としておく。そしてパルポの実を取る時は歌いながら取らないといけない。
なんでかは分からないけど、パルポの木は綺麗好きらしい。だから実を採るにはお礼の為に葉を落としたり、歌をプレゼントしないと実を落としてくれないのだ。で、無理やり取った実は苦くなる。
木が納得してくれたなら、ポトンと優しく実を落としてくれて、しかも美味しい実になっている。私は西周りで少し遠回りになったが、目を付けていたパルポの木の側に行くと、丁寧に礼をした。
「パルポさん、D級冒険者のシャルル・クリスティでっす。古い葉を落としておきまっす!あとは、困っている事はないですかー?出来れば実を頂きたいのですが!何かあればどうぞ!」
パルポの木に着くと話し掛けながら、木の様子を見た。古い葉っぱや巻き付いたツタを切っていいか?と聞きながら落としていくと、パルポの木の枝は震えて喜んでいるのを現してくれた。
「え、こっちのツタもですか?あ、こっちの枝を見て欲しい?何か絡まってまっす。あ!コレ、レア素材の銀蜘蛛の糸でっす。貰っていいですか?綺麗に採るので!いやあ、いい枝ぶりでっす。素敵な葉っぱですねー」
枝が揺れて、「へ、照れるぜ、まあ、少し分けてやるよ」、と言っているように聞こえた。
こうして話をしながら私は採取する事が多い。私が言っている事を木も草も理解していると思うのだ。私もなんとなく、伝えたい事が分かるきもするし。
「うん、元気そう。綺麗になりましたね!では、シャルル・クリスティ、パルポの木さんに向けて一曲歌わせて貰いまっす!【今日も素敵よ☆ジョルジョさん、パルポの木バージョン】歌いまっす!」
自分で作詞作曲したジョルジョさんへの愛の歌を歌いながら、パルポの木を撫でた。
「パルポーさん素敵ー♪綺麗な葉ー、まるでー愛しいあの人のように綺麗ー。おいしいごはんもー♪やさしい声もー。最高ー、ああ、幸せってー♪こんなかたちなのよー♪素敵な葉っぱー、揺れる枝ー、私の心も優しい気持ちにー♪」
私の歌に合わせて葉が揺れた。パルポの木は喜んでくれているようだった。
一曲歌い終わり「ども、ども。ありがとうございました」と、礼をすると、私の手元にパルポの実が落ちてきた。
「有難う!三つも?パルポさん、他にも歌を聴きたかったりする方をご存じないですか?良ければ紹介して頂きたいのでっす!」
私が聞くと、枝がちょいちょいと南の方を指して「あっちの奴が聞きたそうだぜ」と教えてくれた。
「有難う!トゲトゲ草もちょっとこの辺の貰いますね。あ、こっちの岩の後ろに黒イチゴが!少し貰おう!おやつだ!やったー!」
トゲトゲ草を少し貰うと、私はパルポの木にお礼を言って南の方へ進んだ。




