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四季檻々  作者: 古月そら
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第5幕 秋

落ち葉が降り積もる芝生の上で目を覚ました。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋、そう言われるのは秋の気候が涼しく過ごしやすく、何事にも集中しやすい季節だからだ。だというのにこの世界には過ごしやすいと感じることが少ない。紅葉、イチョウなども美しく、景観だけは秋だった。でも気温はというと残暑を感じたり、初冬の寒さを感じたりと不安定で過ごしにくい世界だった。過ごしにくい世界とはいってもここから出ていくことなど考えてもいなかった。やりたいこともないし行きたい場所もない。だから結局どこにいても変わらないのだ。生まれてこの方何かをやってみたいと感じたことはない。むしろ考えるのはめんどくさい、いっそのこと死んでしまおうかと思ったこともあった。死んでしまおうとしたときに妙な狐の面の少女が現れて無理やりこの世界に連れてこられたのだ。死のうとしても、この世界では死ぬことはできなかった。何度試しても、どんな方法を試しても死ぬことはなかった。まるで何者かに死ねないようにされているようだった。その日以降も死ぬ方法はないかと模索し続けた。考えては実行、これをただひたすらに繰り返す。死ねないならと興味本位で死なない程度の傷はつけられるのかも試してみたことがあるが無理だった。今思えばこれが初めて自身の意思でなにかをしたときだったのかもしれない。そしてある日、めんどくさくなって死ぬ方法を模索するのをやめた。その日のことだった。足音と共に狐の面の少女が現れた。膝ほどの高さまで積もった落ち葉を気にすることもなくこちらに近づいてきて

「やっと、死ぬの諦めてくれたんだ。大変だったんだよ、君が死ねないようにするの。」

「あんたのせいかよ。生きるのすらめんどくさいからそろそろ殺してほしいんだけど。」

「そんなことしたら私の努力全部台無しじゃないの。てか君の方こそそろそろ生きる気になってくれないとだよ。これでも私、結構頑張ってるんだからね。」

少女は生きることを促してくるがその言葉が届くことはない。この世界。いや、どの世界に対しても一切興味を持てないというのに生きろと言われる方が無茶な話だ。

生まれてくるか否かを自分の意志で選択できる人間なんてのはいない。だというのに、生きるか死ぬかも自分の意志で選択させてくれない。

「死にたい。」

そう言ったところで本気にされることはない。何ふざけたこと言ってるの?と返されて終わるのは相場だろうか。死という選択を自ら選ぶ人間がいると思っている人は殆どいないと言っても過言ではないだろう。ましてや心の底から死にたいと思っている人が身近にいるなんて。だからいっそのこと死んでみることにした。あの日、部屋で1人で死ぬはず、、、だった。だったのに。

この狐の面の少女に邪魔された。そして本来生きているはずがなかった今を生きている。生きたくもないというのに。早く死ねたらどんなに幸せだろうか。楽しみのない生活で見える景色はすべてがモノトーンのようだった。あいつさえ殺してしまえば、死ねないこの呪いのようなものはなくなるのだろうか。でも、闘うの、めんどくさいなぁ。無気力に空を見上げた。中秋の名月。そう呼ばれるように秋の月は美しいことで有名だ。しかし今日は。いや、この世界に来てからはずっと新月で、月が見えることはなかった。そして明るい星もない。ただただ闇に覆われた、そんな空を見ながら重力に身を任せて寝ることにした。

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