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四季檻々  作者: 古月そら
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第4幕 春

暖かく、優しい空気が僕を包む。蝶が花にとまり、密を吸う。平和な世界を僕は生きていた。今日もそんな世界で私は目を覚ました。いつからこの世界にいるのか、この世界に来る前の世界はどんなものだったかなんて覚えていない。でも、思い出したらいけない気がしたし、思い出したくもなかった。死ぬまでこの世界がいい。僕はそう思っていた。足音が聞こえる。またこの子かぁ。僕はこの世界が好きだ。でも、この得体の知れない女の子は嫌いだった。なんで嫌いなのかは覚えていない。でも、どうしてもこの子だけは好きになれなかった。それでもこの子はそんなこと関係ないとでも言いたげに僕に話しかけてくる。

「調子はどうだい?」

「お陰様で元気ですね。」

「そっかそっか。まぁ元気ならそれでいいんだよ。それじゃあね。」

何回繰り返したのかもわからないこのやりとりを今日もまた僕たちはしていた。

このやりとりをしたあと女の子はこの世界から消える。でも、女の子はこの世界から消える前に必ず花を咲かせてくれる。最初の頃はスノードロップやポピーの花が多かったが最近だと白いアネモアやスイセンを咲かせてくれることが多かった。毎日1輪咲かせてくれる。それが今では大きな花畑になっていた。僕は花の匂いに包まれて横になる。

「そろそろかな。」

小さな声でそうつぶやいた女の子の声が僕の耳に微かに届いた後、その姿は失くなった。僕はその言葉の意味を気に留めず眠りについた。


「めんどくさいなぁ。」

僕は学校に行くために通学路を歩いていた。公園の横を通りかかる。

「綺麗だな。」

今日も花壇で花が美しく咲いていた。花を見ているときだけは嫌なことを忘れられる。だから僕は花が好きだった。ずっと花を眺めているわけにもいかないので僕は学校へ向かった。

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴る。今日もいつも通り、学校が終わった。いつもと変わったことなんてなにもない。ただ過ぎるだけの時間を僕は過ごしていた。そして家へと帰路を辿る。

「ただいま。」

「、、、。」

あれ、返事がない。いつもならおかえりと笑顔で出迎えてくれる。今日は予定ないから家にいるって言ってた気が、、、そう思いながらリビングのドアを開ける。

「えっ。」

僕は言葉を失った。お母さんが倒れていた。その腹部には刃物が深々と突き刺さっていた。

「お母さん、お母さん。」

僕は叫びながら乱暴に身体を揺すった。お母さんが反応を示すことはなかった。お母さんの身体はほんのり温かかった。殺されて間もないのだろう。

ゴトッ

2階から物音が聞こえた。誰かいるんだろうか。僕は急いで2階へ向かった。僕の部屋のドアが開いていた。怖い。怖いけどそこにお母さんを殺したやつがいるなら、、、

僕は部屋に向かう。部屋に入ると犯人らしき人は窓から逃げようとしていた。そいつが窓から飛び降りる直前、そいつが僕の方を見た。狐の面を被った中学生くらいの女の子に見えた。


「ッ。」

僕は目を覚ました。逃げ続けていた、思い出したくなかった記憶が蘇ってしまった。

頭に血が上るのを感じる。そうだ。いつも会いに来るあの少女は僕のお母さんを殺した犯人だ。今すぐにでも復讐したい。でも僕にそんな事ができるのだろうか。逃げ続けることしかできない僕に。そのとき、花畑の花がうっすら何かに照らされた。照らしているのは何なのだろうか。僕は空を見つめる。照らしているのはスピカだろうか。一等星というにはまだ物足りない輝きだった。


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