第1幕 記憶
ほんのり甘く、懐かしい香りとともに"私"は目を覚ました。私の居場所はここだった。まるで永遠とも思えるように広がる石畳の道。振り返ると鳥居があり、その先には少し苔の生えた古い神社があった。私は神社の方へ向かおうと鳥居をくぐった。
そのとき、見覚えのある面をつけた少女が目の前に現れた。
「おかえりなさい。」
少女はどこか安心したような声でそう言った。彼女は私のことをずいぶん気に入っているらしいが私はそうでなかった。それもそのはずだ。私は数年前、まだ僕だった頃、人間界で青春を謳歌していた。だというのに彼女は私を勝手にこの世界につれてきた。八百万の神、そう言われるように実際に神は無数に存在する。ここは神の世界、中でも四季を操る神の世界だった。私がこいつのことを憎んでいるのは単に青春がしたかったからというわけではない。僕の両親はこいつに殺されたのだ。4月だというのに雪が降っていたあの日、こいつはいきなり僕の家に来て僕をよこせと言った。両親がそれを聞き入れるわけもなく断った。するとこいつは僕の両親を殺したのだ。私はこいつを殺さなければならない、この世界に来て最初に思ったことはそれだった。あれ、さっき世界に戻ってくる前僕は両親と暮らしてたような、、、
考えれば考えるほど情報が入り乱れ吐き気までしてきた。
「いいねっいいねっ。私ね、君がそうやって苦しんでる姿大好きなんだよね〜」
つくづく性根が腐っている。私はここに来てから彼女に遊ばれ続けている。そんな生活が嫌になって私は彼女を尾行し人間界に逃げ出した。そこから、いや本当にそこからなのだろうか。私の記憶があやふやになっているのは。あぁ気持ち悪い。私はこいつにされる嫌がらせの中でも記憶をいじられるのが最も嫌いだった。なにか大事なものが私、、、いや僕?の中から失くなっている気がする。でも1つだけ、人間界に行った時には忘れかけていたけど、私の中には忘れられない記憶がある。そうだ、"俺"の居場所はここなんだ。少なくともあいつを殺すまでは。
そもそもとして本当にあいつを殺せるのかはわからない。なんたって相手は神だ。
一応この世界にいる間も僕は人間である以上勝てない可能性のほうが高いだろう。
でも、何もせずにこの世界に居続けるなんてのは無理だ。だからたとえどんなに時間がかかろうともこいつを殺す方法を探るのをやめない、やめれない。無意識のうちに目の前にいる少女を睨んでしまう。それでも少女は微笑んだままだった。
「またね。」
彼女がそう言うとともに咲いていた桜は散り、冷気とともにあたりは暗くなった
空を見上げる。空気が澄んでいて美しい星空だった。
ピカッ。
突然空が明るく光った。空の中心から4つの星がばらばらの方向に流れた。
1つはスピカ、1つはアルタイル、1つはベテルギウスに向かって。
もう1つは、、、そんなことを考えていると私の意識は再び闇へと吸い込まれのだった。




