素材集め
「うん、決めたよ――嬢ちゃん!」
「うわ! なんですか……いきなり!」
俺が落として壊した配信機材を前に、泣きそうになりながら残骸を集めていた凛ちゃんに、俺はビシッと指を突きつけて宣言した。
「落としたくらいで壊れるような軟弱な機械じゃダメだ。ここは奈落の深層だぞ。なら巨大な魔物や罠に掛かっても壊れないように超強化すればいい!」
「――――! ハァ、バカですか? いえ、バカですね。そんなのどうやって作れるというんですか? 予備のパーツだってないんですよ!?」
「嬢ちゃん、あまりバカバカ言わないでくれ! 自覚はしてるが反省する気も直す気もねーな!」
「威張って言うことじゃないでしょーっ!?」
頭を抱える凛ちゃんを余所に、俺は不敵に口角を上げる。
「パーツがないなら『錬る』で錬成すればいい。さっきお前さんが剥ぎ取ってくれたこの魔物の硬い甲殻と、道すがら拾った変な魔石……それに、お前さんの『最高のテーブル』があればできるんじゃねーの」
「え……? ほんとに作れちゃうの……?」
「おうよ! まぁ、失敗しても……ここでなら誰にも怒られないしな……ガハハハ。嬢ちゃん、その残骸と素材を『テーブル』に乗せてくれ!」
「は、はいっ! 『テーブル』……!」
凛ちゃんの『テーブル』の上にある、砕けた機材と魔物素材と鉱石を俺の魔力が包み込む。
俺は両手にスキルを練り上げ、力任せにそれらを【錬成】した!
――ドカァンッ!!
「うわ! いた〜い。またお尻打った」
「ガハハハ、良くコケる嬢ちゃんだな。それだけ尻を打ってればデッケー尻になりそうだな……」
「もう! ゲンさんは、なんで女性にそういう事を平然と言うのかな――エッチ!」
「それよりも見てみろよ! この素材を……機材の外装にするにはいいんじゃないか?」
「うわ! 本当だ。あの硬い魔物の甲殻をベースにしてるんだね。確かに魔物の攻撃でも大丈夫そうだけど……前のヤツと形が違うよ」
以前の配信機材は肩に乗せて、ほぼ凛ちゃんの横顔と凛ちゃんの見ている風景を映すようなタイプだったからね。だからこれを機にドローンタイプへ変えようかな〜とね。
「ああ、今回からはドローンタイプにしようと思ってな……」
「――ドローンタイプ?」
「そう、ドローン型だ。それなら嬢ちゃんの両手もフリーになるし、全方位から臨場感たっぷりに撮れるだろう?」
「ええっ!? ドローン型なんて、最先端の魔導技術が詰まった超高価な機材だよ!? そんなの落ちてたゴミと魔物の甲殻で作れちゃうの……?」
「ああ、多分だけどな。それに『錬成』を舐めるなよ。ただ、材料が足らん! だからこれからは少し出口を含めて探索だぞ!」
「うん、分かった。私はゲンさんから離れないようにするよ……」
「ああ、そうしてくれ! さらに嬢ちゃんのケツを大きくするワケにはいかんからな! ガハハハ」
「もう――バカ!」
◆◆◆◆
――――コツコツコツ……
奈落の深層を2人で歩く靴音が響く。その音が反響してヤケにうるさく感じていたが、不意にジジー、ジジーと異音が混じる。
おお、いたいた。
「嬢ちゃん、いたぞ。離れるなよ……」
「うん、ゲンさん。アレは? ハチの魔物?」
「オウよ! 数が多くてな。しかもヤツらの羽根ってドローンに使えそうだろ? それとヤツらの巣と、中にはハチミツも……」
「――ハチミツ! 是非頑張ってゲンさん。ハチミツが取れたらさっきのセクハラは許してあげる。フフン……」
「ハチミツか……まあ、甘いものは疲労回復にも効くからな。よし、任せとけ!」
俺は不敵に笑うと、腰に下げたバッグに手をかけた。
前方でブーンと不気味な羽音を立てているのは、体長1メートルはあろうかという巨大な蜂の魔物【キラー・ビー】の群れ。普通ならBランク冒険者のパーティでも苦戦する群れだが――
「嬢ちゃん、『テーブル』を出して盾にしろ! 俺の背中に隠れてな!」
「うんっ! 『テーブル』発動!」
凛ちゃんが展開した『テーブル』が、ガチッと頑丈な障壁となって蜂の針を弾き返す。
「よし、良い使い方だ! 喰らいな、ホイ!」
『錬る』とは前に説明した通り錬金術師みたいだ。なら、たくさんいるキラー・ビーに武器を振り回すなんてマネをするわけがない。ここは不思議空間のダンジョンだぞ。なぜか洞窟内に植物が生えてたりする場所だ。その中には菊……除虫菊に似た種類があり――錬金術でチョチョイとな。
「――なっ、ななな……なんですか〜! 煙が出たと思ったらキラー・ビーが勝手に落ちましたよ……しかも死んでるし」
「ああ、落ちたな。じゃあ、回収しようか……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。なんで煙でキラー・ビーが?」
「ん? 知らんのか? 殺虫剤と一緒だぞ!」
「殺虫剤って――ゲンさんは1年くらいここに居るのでしょ? なんで?」
「なんでって……ほら、あそこに生えてるじゃん。『除虫菊』っていう殺虫剤の原料な。まぁ、『錬る』でその殺虫能力を尖らせてるけどな……ガハハハ」
「ガハハハ――じゃありません。あの数を一匹ずつ倒すのかと……」
えー、ヤダよ。面倒くさいじゃん。




