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疑惑の冒険者パーティー【微ざまぁ回】

【ローズ・ヴァルキリア リーダー 神崎麗華視点】


 なぜ……こうなったのかしら……

 ローズ・ヴァルキリアは元々は私がセンターの冒険者アイドルでした。

 私達はそれなりに上手くやって来たつもりです。

 それこそフォロワーも着実に増えていました。


「社長、納得出来ません。なぜ、スキルを取得したばかりで……しかもハズレスキルの娘にセンターを譲れと……それはあんまりじゃないですか……」


「ふむ、困りましたね。神崎麗華さん。これは遊びではありませんよ。冒険者アイドルはビジネスなんです。いいですか? 魔物素材を持ち帰ってくる以外でも動画配信で人気を出すのも必要なんです。彼女、『風間 凛』のスター性は素晴らしい。今の『ローズ・ヴァルキリア』に必要なんです。それとも……まだワガママを言ってみますか?」


「クッ、わ、分かりました。でも、これだけは言わせて下さい。私達は『風間 凛』を認めない。でも、利用して必ず売れてみせますから……」


「おお、そうです。素晴らしい。それが聞けて私も安心しました。会社でのバックアップはお約束しますから……」


「利用して必ず売れてみせますから……」


 そう社長に宣言してからの日々は、私にとって屈辱以外の何物でもなかった。


 新しくセンターに据えられた風間凛は、確かに顔だけは良かった。

 だが、得たスキルは【テーブル】などという、ただの木製の机を出すだけのゴミスキル。戦力にもならないただの足引っ張りだ。

 でも1番頭に来たのが『神崎さん頑張りましょうね』と私の後ろをチョロチョロとしている所がムカつく。戦闘力ゼロの冒険者アイドルなのに……


 ――配信をつければ「凛ちゃん可愛い!」「凛ちゃん頑張れ!」「頑張る凛ちゃん健気!」と、コメント欄はあの女の話題ばかり。

 私がどんなに華麗に魔物を倒しても、カメラはいつだって凛を追っていた。


(許せない……! 私が汗水垂らして築き上げた『ローズ・ヴァルキリア』なのに……!)


 だから、裏で教育してあげたのだ。

 グループの「お荷物」なのだから、せめて雑用くらい完璧にこなしなさい、と。

 重い荷物はすべて背負わせ、返り血で汚れる魔物の剥ぎ取り作業もすべて押し付けた。

 カメラの前では笑顔を作らせ、裏では徹底的に居場所を奪ってやった。それを文句も言わずにやり、ドンドンと人気者になる『風間 凛』にもはや殺意しかなかった。


 そして……あの奈落の底での出来事。その前日のメンバー達との会話からの流れがありました。


「あー、ムカつくよね。さっきも出待ちのファンが声をかけて来たと思ったらまた、『凛ちゃんは?』だもん。私達は無視ですか……」


「だよねだよね……それでもアイツは『ローズ・ヴァルキリアはみんなで人気を勝ち取ってます』……とか、良い子ちゃんカマして……キズだらけになってるのウチらだけじゃん」


「そうよね……そういえば、明日探索する奈落って落ちたら最後なんだよね……」


 その会話の後は誰も口を開かなかった。


 ◆◆◆◆


 奈落の穴近くで倒した魔物の素材を剥ぎ取っていた時に、私は背後から凛の背中を強く押し弾いた。

 それはワザとなのか無意識なのか……分からない。

 でも暗闇の穴へと真っ逆さまに落ちていく凛の顔は絶望に満ちていて、聞こえて来た悲鳴は心地良かった。


『――風間凛は、誤って足を滑らせて奈落へ落ち……即死でした』


 地上へ戻り、テレビの前で悲劇のヒロインを演じて涙を流した。

 世間は私に同情し酔いしれ、チャンネル登録者は爆増。私の計画は完璧だったはずなのだ。


 ――なのに。


 ダンジョン配信は『風間 凛』の微かな生存を世間に知らしめてしまった。まさに誤算だった。その後は私達の犯行だと決めつけた外野からのプレッシャーに、遂に国家権力でもある警察も動いた。


「神崎麗華さん。重要参考人として警察署まで同行願います」


「な、なに言ってるのよ!? 私は被害者なのよ! 凛を救えなかった悲劇のリーダーなのよ!?」


 フラッシュの嵐、警察の冷ややかな視線、そして取り調べ室の重苦しい空気。フフフッ、そうなのね。『風間 凛』はあくまでも私達の邪魔をするのね。


「奈落ダンジョンでの出来事を詳しく教えて下さい。『風間 凛』さんの転落は事故なのか事件なのかをね……」


「……嫌だわ、刑事さん。冒険者メンバーを亡くした私達を逆に疑うなんて……あんまりですわ。そうだわ。この事を動画配信して警察の在り方について日本人が考える機会にするのはどうかしら? 奈落に落ちてしまったメンバーである凛の生存を喜んでいたのに……」


「あっ、イヤ。これは事情聴取ですからね……」


「じゃあ、凛から当時の事を聞いたり証拠などを集めて下さい。アナタも奈落に落ちて凛に当時の事を聞きに行けばよろしいのではないですか? ウフフッ、出来ればですけどね……それでは失礼しますね」


 もう、分かったわ。私達は非常に危ない橋を渡り始めてしまったわ。それも引き返す事は出来ない橋をね。

 それでも私達のステージはまだ終わらないの。必ずメンバーで有名冒険者アイドルになってみせますから。

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