アビス・プロダクション【ニュース回】
【総合ニュースチャンネル】
『本日も現在、世界中の注目を集めております「アビス・シグナル」が所属する予定の「アビス・プロダクション」の続報をお伝えします。
……ダンジョン動画配信にて帰還者がいないことで知られる『奈落』に転落した事件を発端に、元冒険者アイドル『ローズ・ヴァルキリア』のセンターを務めていたリンちゃんこと、風間凛さん。
先日逮捕された御剣氏が代表を務めていたマジカルアドベンチャーの創業者を祖父に持つ結城アリスさん。
元暗殺者として脅されていたコードネーム:黒猫こと神楽坂クロエさん。
そして、奈落の原住民として騒がれたドワーフこと岩本源さんの4人で構成されています。
前回同様に、ダンジョン評論家の平川さんにお越しいただいてます。よろしくお願いします』
『平川さん、今回の『マジカルアドベンチャー社』の社長逮捕と、アビス・プロダクションの地上帰還について、どうご覧になりますか?』
『はい。一言で言えば【ダンジョン配信界の歴史が塗り替わった】と言えますね。かつて帰還不能と言われた奈落を、彼らは完全に攻略・生活拠点化してしまいました』
『なるほど……文字通り前代未聞ということですね』
『特に注目すべきは、ドワーフこと岩本源氏の存在です。彼の持つ「スキル・ねる(工夫)」と「神業クラフト」は、世界のダンジョン素材市場の価値観を根本から破壊しつつあります。一部のアナリストの間では、彼の生み出す装備や薬品の経済価値は国家予算レベルとも試算されていますよ』
『国家予算レベル……! 一方で、元暗殺者のクロエさんの妹さん、ノエルさんを治すための帰還を目指しているとか……』
『ええ、ダンジョンカビという今まで不治の病とされた病気を、岩本氏のクラフトした試作薬で完全に治療できる可能性があるという報告です。これにより医学界からも絶大な注目を集めており、現在彼女が移送された医療施設の周りには、世界中の報道陣が集結しています』
『まさに破竹の勢いですね! 今後のアビス・プロダクションの動きから目が離せませんね!』
『ええ、それに私も動画を拝見しておりますが、アレほど簡単にミスリルの採掘をする冒険者チームは世界中を探しても恐らくはいないのではないですか? そんな彼らは今、まさに地上を目指して歩んでいるワケですね。それも奈落の魔物素材や大量のミスリルと共に……』
『そうですね。彼らの持つマジックバッグもかなりの容量ですし……』
――ピロリロン、ピロリロン……
『おっ、ここで奈落周辺への中継が入りましたね。現地の吉田さん? 状況を教えてください』
「――――はい、こちらは奈落ダンジョンが見える位置よりお伝えします。先ほど、警察より奈落ダンジョンの入場規制が入りました。動画配信より、まもなく岩本源氏をはじめとした『アビス・プロダクション』のメンバーが現れるとの情報で人々が集まってきております」
『――吉田さん? 現地ではどのような感じなのですか?』
「――はい。恐らくは動画配信のリスナーと思われる方々や、外国人の姿もチラホラ見えますね。その数は増えていく一方で……おっと、警察だけでなく自衛隊まで動員された模様です!」
『――自衛隊まで出動ですか!? 吉田さん、現地の緊張感はいかがですか?』
「はい! 外国人の一部はどうやら海外のメガギルドや巨大企業のスカウトマンらしく、岩本氏の確保……失礼、交渉権を巡って不穏な動きを見せたため、国が事態を重く見て警備を強化した模様です! まさに一触即発……おや!? ダンジョン入口周辺が騒がしくなってきました!」
『動きがありましたか!?』
「はい! ゲートの前に一両の漆黒の高級リムジンが到着しました! 中から降りてきたのは……なんとアドバンスカンパニーのCEO、ジョニー・ラインハート氏! そして隣には女性の姿もあります!」
『世界的大企業のアドバンスカンパニーCEO自らが直接出迎えると!?』
「――あ! 出てきました! 奈落のゲートから人影です! 1・2・3・4人の人影と、空を浮遊するドローン『セラフィム』! 『アビス・シグナル』のメンバーだと思われます……第一声はどのようなことを言ってくれるのでしょうか? おっ、1人が駆け出して前に踊り出ました。アレは風間凛さんです! 奈落へ落とされた風間凛さんの姿が……」
「――――――みんな……今日は私達のために来てくれてありがとう! 私はみんなに会えて嬉しいよ……みんなはどうかな? 私達の、みんなの前での初ステージ楽しんでいってね〜!」
「「「リンちゃーーーん!!!」」」
「ウフフッ、ありがとう! じゃあ、メンバー紹介だよ……まずはアリスちゃん……」
「皆様、初めまして。結城アリスと申します。よろしくお願いいたしますわ」
「「「アリスちゃーーーん!!!」」」
「続いて新メンバー、クロエもちゃんだよー!」
「か、神楽坂クロエでしゅ! あッ、舌かんだ! よろしくお願いしましゅ!」
「「「クロエちゃーーーん!!!」」」
「最後は私達のプロデューサー、ゲンさんだよ……」
「…………誰か日本酒をくれよ…………しばらく飲んでねぇから恋しいんだよ…………」
『――――――えー……現場からは以上です』




