アリスちゃんスキルを試す
「凛さんは何を上げたのですか?」
「うん、アリスちゃんはスキルが魔法使いっぽいから、私は後ろから攻撃できる槍にしようと思って『筋力+200』『敏捷+100』。あとは『落ち着きがない+100』『ドジ+100』だよ」
「おお、それはぜひ弱点を消した方がいいな」
俺がそう言うと、凛嬢ちゃんはプクッと頬を膨らませた。
「もう、ゲンさんは酷い! あっ、ゲンさんにもポイントを振れる項目があるよ……『ドワーフ』だって……アハハ、そのまんまじゃん。ポイントを全振りにしちゃうぞ〜!」
「――――ゴメンなさい! 止めてください!」
凛嬢ちゃんのスキルは破格だな。そしてアリス嬢ちゃんも相当ヤバそうだ……覚醒したスキルは『光の支配者』だったよな。もうヤバい雰囲気がビンビン伝わってくる。
「アリス嬢ちゃんはどうだ? 『光の支配者』なら光魔法とか使えるのかな?」
「はい、恐らく『レーザーガン』」
そう言うと、近くにあった岩に向けて指でピストルの形を作り、その人差し指から光線を出して岩を貫いた。
「「ヤバ!!」」
レーザーを放った本人はピョンピョン跳ねて……
「やったー! これで私も冒険者になれる。あとは光でできそうな事は……『光学迷彩』……わっ、私が消えてる。楽し〜! 確か光は電磁波でもあるはず。なら……」
ビリ、ビリビリビリ――ズガーン!
かっ、雷まで……ヤバいだろう? 光学迷彩はかなり羨ましい。これがあれば色々とできるのに……昨日とかも……
「波でもあるんだよね。あっ、この穴の開いた岩に手を置いて……えい!」
ドゴンッ……ガラガラ……!
一番大人しいと思っていたアリス嬢ちゃんが……人見知りと引っ込み思案はどこへ行った? あっ、ポイントで消した効果か……復活させないと危ないかも。
「ちょ、ちょっと待てアリス嬢ちゃん! 一旦落ち着こう! 一旦ストップ!」
「ふふっ、おじさま見てください! 光の波を収束させて振動を与えたら、岩が粉々になりました! 楽しいですっ!」
「ヤバい……! 引っ込み思案と人見知りを消したら、アリスちゃんが『無邪気な破壊神』になっちゃったよ……!?」
凛嬢ちゃんも顔を引きつらせている。
当のアリス嬢ちゃんは、両手に光の粒子をまとわせながら、満面の笑みで次の岩山を探すようにキョロキョロしている。これはマズい。早急に人見知りと引っ込み思案を少しだけでも戻してもらわないと、奈落のダンジョンが物理的に崩壊してしまう!
「凛嬢ちゃん! すぐにTPを再割り当てだ! 『人見知り+50』『引っ込み思案+50』くらいに戻してくれ!」
「り、了解! えーっと……ポチッと!」
シュワンッ……。
「……あ、あれ? 私……何を……?」
ポイントを戻した瞬間、アリス嬢ちゃんの手から光の粒子が消え、粉々になった岩山と貫通した大岩を見て顔を真っ赤にした。
「ひ、ひゃいっ……!? わ、私こんな惨状を……!? 申し訳ありません……っ! でも、おじさまの役に立てそうです。この振動で鉱石などを掘れますし、電気はメッキなどにも使えます。それに光源の強弱ができるようになったので、この薄暗い奈落でも作業がしやすくなりますね……」
ありがたいんだけど不安が拭いきれない。あの、車のハンドルを握ると豹変する人種と似ているかも……。ともあれ、俺と凛嬢ちゃんはほっと胸を撫で下ろした。
「ふぅ……良かった、いつものアリスちゃんだ。……でも、凄まじい威力だったね」
「ガハハ! ああ、だがアリス嬢ちゃんのスキルが有用なのは間違いない! 光源ができるのは確かにありがたいぞ。これでさらに細かい作業もしやすくなる」
ふむ……凛嬢ちゃんもアリス嬢ちゃんも、元々は冒険者になりたかったはずだ。自分の可能性を信じてダンジョンに関わっていた。凛嬢ちゃんは容姿を活かしたアイドルに、アリス嬢ちゃんは先代社長の遺志を継ぎダンジョン会社の勉強をしていた。
その中でも「スキルさえ優れていたなら自分も冒険者になれたのに」――という気持ちが奥底にあったのだ。
今回の『果報は寝て待て』と『寝る子は育つ』で、その秘めていた想いが表面に出てきたのだろう。何せ、俺自身がそうだったからよく分かる。そして、2人の活躍を見たいのは俺1人ではないはずだ。
そう、世界中に彼女たちを応援したい視聴者がいる。そんな視聴者は彼女たちの味方であり、理解者になってくれる。俺自身、会社からけなされ、必要ないと蔑まれ、奈落に落とされて死亡扱いにされた男だ。
彼女たちの未来が開けるなら……。
「うむ! 凛嬢ちゃん、アリス嬢ちゃん。お前さん達2人で『冒険者アイドル』をやればいいじゃないか。俺は輝くお前さん達を見ていたいぞ」
そう、彼女たちの新しい可能性を――。
「さしづめ、俺はプロデューサーだな。セラフィムはカメラマンだ。これからのダンジョン配信は、2人を主役に視聴者へアピールしていこう」
売れる。これは絶対に売れるぞ。フフフッ、嬢ちゃんたちの魅力を高めるために頑張るとするか。
「えっ、冒険者アイドル……!? また私はアイドルができるの……!?」
「私もですか……!? 不安もありますけれど……生まれ変わった自分を見てほしい気持ちもあります……!」
「ああ、俺たちで最高の冒険者パーティを組もう。もちろん、セラフィムもな」
俺の言葉に、セラフィムが嬉しそうにみんなの周りをクルクルと行ったり来たりしながら旋回していた。




