スキル強化
「ゲンさん、おはよー」
「おじさま、おはようございます」
「あっ、ああ、おはよう」
昨晩の大騒ぎはバレていなかったようだ。ものすごい緊張でよく眠れなかったからな。
俺は朝飯を採りに行くために準備をしていると……
「ゲンさん、ゲンさん! 私達からお願いがあります」
「はい! おじさまだけが魔物と戦って私達は逃げてばかり……私達にも戦いを教えてください」
「う〜ん! でも……危ないしね……」
「覚悟の上です。それにゲンさんは強くなる手段を知ってるんじゃないの? ゲンさんの話を聞くと奈落に落ちる時は弱かったんだよね?」
おお、凛嬢ちゃんは鋭いな。でも女の子を戦わせるとか……気が引けるんだよね。でも……
「――――昨日の夜もできたからひょっとして……」
「「昨日の夜って?」」
あっ? 思わず言ってしまったが……
「いや、なんでもないよ。じゃあ、教えてあげるけど……本当にやるの?」
「「もちろんです!!」」
「よし、そこまで言うなら覚悟を決めろ! 俺の特訓は……ちょっと『常識』と違うからな!」
「「はいっ!!」」
俺はマジックバッグから魔水晶を取り出す。
「戦うと言っても、二人に直接巨大な魔物と殴り合いをさせる気はない。……凛嬢ちゃん、アリス嬢ちゃん、まずは二人の『スキル』と『魔力特性』を俺に見せてみな」
「えっ……私のスキルはゲンさんも分かってると思うけど『テーブル』で、戦闘用じゃないよ? テーブルを出すだけのスキル……」
「私のスキルは『光』です。小さな光源しか出せません……このスキルなので冒険者は諦めていました」
二人が少し申し訳なさそうに俯く。地上では「戦闘に向かない不遇・後衛スキル」と評価されていたのだろう。
「ガハハ! 何を言っとるんだ! 『テーブル』の支援と『光』の光源発生……これ以上ない最高の『スキル』じゃないか!」
俺は2人を寝室へ連れて行く。寝室へ入る時に2人は一瞬、身体が強張ったように固くなるが、
「嬢ちゃん、俺のスキルは覚えてるか?」
「確か……『ねる』だよね!?」
「そうだ! 俺のスキルは『ねる』だ。そしてこれから2人には寝てもらう」
「寝る……ゲンさんのエッチ……!!」
フゥ、配信を切ってあって良かった。というか連中は昨晩の宴があったからほとんどが寝てるだろうけどな。
「ちげーよ! 良いからベッドで横になれ!」
「「(想像してた修行と全然違う……!!)」」
2人が寝転がったのを確認すると……
「じゃあいいな! 2人共、手を出して俺の手に重ねてくれ」
2人共に恐る恐る俺の手を握る。
「ゲンさん、握ったよ」
「私もです、おじさま」
「よし! スキル『ねる』発動!」
2人はあっという間に眠りについた。
ここからが本番だよ。俺はすかさず『錬る』で魔力を極限まで高めて俺から凛嬢ちゃんへ、また俺に返してもらい今度はアリス嬢ちゃんへと魔力を流して3人で循環させてから……
「寝るの裏コード――『寝る子は育つ&果報は寝て待て』……発動」
俺達3人は光に包まれ、スキルが染み渡るように感じる。身体は熱く細胞が擦れて摩擦熱が発生しているかのようだ! ヤバい、起きていたら耐えられそうもない……仕方ない。『寝る』発動!
――――俺の意識は暗転した。
どれくらい時間が経っただろうか。
「ん……う……んっ……」
「ふぁぁ……すっごく……ぐっすり眠れた……」
まぶたを開けると、目の前で凛嬢ちゃんとアリス嬢ちゃんが、むにゃむにゃと目をこすりながら起き上がるところだった。
その肌はまるで脱皮したかのようにツヤツヤで、全身から溢れ出る魔力の密度が……以前とは比べ物にならないほど膨れ上がっている! ヤバい。俺は2人の受け皿みたいな使い方だったから身動きが取れん!
「えっ、ゲンさん? なんで服の中に手を入れてるんですか? エッチ! こら、つまむな!」
「え……? あっ、本当ですね。私にはお腹を触ってますね。フフフッ、くすぐったい」
ぽかんとする二人に、「ゴメン、動けない!」とアピールした。
なんとか誤解を解いてハチミツでご機嫌を取りながらも、ようやく動くようになった身体でカバンから魔道具を取り出した。
鑑定魔道具を自作してみたんだ。
「2人共この部分に1人ずつ手を置いてごらんよ」
「……? うん、分かった! はい、これで良いかな? え?」
『風間凛……スキル〘テーブル・表〙』
「えっ? 表? どういうこと? テーブルだけじゃなかったの?」
「おお、変わったね。俺以外にもやっぱり効果があったんだね。じゃあ、アリス嬢ちゃんも……」
「は、はい!」
鑑定魔道具に手を置くと……
『結城アリス……スキル〘光の支配者〙』
「びっくりしました。私も『光』から変わりましたね」
「『テーブル・表』に『光の支配者』か! ガハハ、素晴らしい進化じゃないか!」
「ええぇぇ……!? でもゲンさん、『テーブル・表』って何ができるの!?」
頭を抱えて混乱する凛嬢ちゃんに、俺は自作の鑑定魔道具の画面をスライドさせながら説明する。
「どれどれ……『テーブル・表』は様々な用途のテーブルをその場に用意できる。テーブルの使用者にバフを授ける。表は様々なことをリストアップしてそれを選んで出すことができる」
「えっ……! 選ぶ……!? リストアップされたもの……!? ちょっと分からないな……」
「そしてアリス嬢ちゃん! 『光の支配者』は魔力を込める量によって光の強弱を調節できる。光のことなら大抵のことができるってさ」
「わ……私の光が役に立つのでしょうか……!?」
二人は自分の手のひらを見つめ、溢れ出る新しい力に目を輝かせた……それと同時に役に立てるのか不安なんだろう。
「よし! 少し確認してから配信を始めよう」
2人を伴って新たな力を魔物に試してみよう……




