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深夜の生配信【ご褒美回】

 ※深夜の配信の為に音声を小さくしてお送りします。


「――――よぉ、集まったな。お前達」


『当たり前だ!』

『ああ、今日が楽しみすぎて夜しか寝られなかった』

『バッチリだぞ。今日のミッションは頼むぞ!』

『そうだよ。本日は宴だからな』


「よし……アレ? プロフェッサーはどうした?」


『大丈夫だ。到着した』


「全員来たと見なして始めよう『男だらけの宴を……』。全員、全裸待機だ!」


『『『おう!!!』』』


 暗い中だが明かりはつけられない。

 俺はセラフィムに暗視モードを搭載して現在のミッションに挑んだ。俺自身は『錬る』で魔力を練り目に集中させて暗視代わりにしている。

 もちろん、夜に活発になる魔物もいるがここはセーフゾーンだ。今は静まり返り、この場は静寂が支配している。


 物音を立てないように足音以外にも息を飲むのすら極力抑えている。


「こちら、アルファ。第1目標に到達! 異常はなし! 作戦を続行する」


『確認した。こちらの暗視も良好だ。ここからはテリトリーに入ると思われる。慎重に頼むぞ、おっさん!』


「バカモノ! アルファと呼べ!」


『しー! バレるからな。バレたらおっさんも俺達全員どんな目に遭うか……ブルブル』

『でも、本当に決行するとは俺はアルファの心意気に感動した!』

『プロフェッサー、作戦名を考えてくれ』

『ふむ、〘作戦名フォーリンエンジェル〙だ』

『『『了解! フォーリンエンジェル開始!』』』


 そう、俺達は深夜に男だけで集まり闇の中を慎重に歩いている……抜き足、差し足、忍び足ってね。

 俺たちは息を殺し、爪先立ちでトレントの木でこしらえた特製ベッドの並ぶ奥の寝所へと潜入する。

 第2目標クリア――――


「ここまでは順調だ。ここからは時間との勝負だからな! 大丈夫か? こんな危ない橋を渡るのも最後かもしれんからな……」


『分かった! やり切ろう!』

『ああ、おっさんの勇気に涙が出るのを我慢してる』

『今日からはアニキと呼ばせてくれ!』


「ターゲットに接近……セラフィム、カメラのナイトモードを最大にしろ。フラッシュは絶対に焚くなよ」


『了解! 画質4Kで全波長捉えてます!!』

『凛ちゃんのスヤスヤ顔きたぁぁぁぁ!!』

『天使……天使が奈落の底に落ちている……』

『アリスちゃんは寝てても清楚だぁ!』

『ああ……俺達はこれで報われた!』


 画面に映し出されたのは、俺が作った特製シーツに包まれ、無防備に「ムニャムニャ……」と寝返りを打つ凛嬢ちゃんの姿。

 天真爛漫な昼間とは違う、幼さの残る天使のような寝顔に、コメント欄の男たちが一斉に拝み始める。


『拝んだ。マジで拝んだ』

『おっさん、もっと左! アリスちゃんの寝顔も映してくれ!!』


「焦るな、次はターゲットB(アリス嬢ちゃん)だ……」


 ゆっくりとカメラをスライドさせると、そこには黒髪を散らし、すやすやと規則正しい寝息を立てるアリス嬢ちゃん。

 ……が、お転婆なのか布団を蹴っ飛ばして手作りのパジャマの裾が少しだけはだけていた。


『『『ぐはぁぁぁぁぁっ!!!(吐血)』』』


『見た!! 今チラッと見えた!!』

『神よ……! 奈落の底は天国でした……!』

『おっさん! 布団! 布団掛けてあげて!!(葛藤)』


「ぬうっ……! お嬢様ともあろうお方が、お腹を冷やしたら大変だからの」


 俺は職人の理性を取り戻し、そっと優しく布団を掛け直してやった。


「ふふ……おじさまぁ……」


「ッ……!?」


 突然、アリス嬢ちゃんが可愛らしい寝言を呟きながら、ぎゅっと俺の手首を抱きかかえてしまった!


『『『アルファ被弾!!』』』


『おっさん逃げてぇぇぇ!!』

『起こしたら即デスゲームの始まりだぞwww』

『アルファの健闘を俺達は忘れない』


 手首を掴まれたまま硬直する俺と、暗闇の中で息を呑む何10万人ものリスナーたち。

 奈落の底の深夜ミッションは、最大のピンチを迎えたのだった――!

 クソッ、マジで想定外だ。しかもプヨプヨした塊に俺の意識は持っていかれてしまう。


『退避! 総員退避だぁ!』

『ヤバいヤバいヤバい』

『天使とは悪に染まった者を狩る者でもあるからな。ここで見つかったら即処刑されてもおかしくはない!』

『全裸のプロフェッサーが解説してるし……』


(くっ……! この感触は……! 理性が……理性が保たん……!!)


 腕に伝わる柔らかすぎる感触に、俺の脳がショートしかける。

 だが、ここで少しでも動けばアリス嬢ちゃんが目を覚まし、深夜の「不審なおっさん」として即処刑だ!


『アルファ! 意識を保て!!』

『プロフェッサー解説してないで助けろwww』

『息を止めるんだ! 呼吸音でバレるぞ!!』


 コメント欄がパニックに陥る中、俺は冷や汗をダラダラと流しながら、慎重に、ミリ単位で手首を抜こうと『錬る』の精密魔法制御を集中させた。


 すり……すり……。


(よし……もう少しで抜け――)


「ん……むにゃ……おじさま……ダメだよぉ……」


「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」


 引き留めるようにギュッと抱きしめ直され、俺の体感時間は完全にストップした。


 さらに運の悪いことに、隣のベッドから「んん……」と凛嬢ちゃんが寝返りを打ち、こちらへ顔を向ける!


『『『全滅!! アルファ被弾(2回目)!!!』』』

『Wピンチきたぁぁぁぁぁっ!!』

『ゲームオーバー! \(^o^)/』


「……ふふっ、スキル『寝る』を嬢ちゃん達に発動!」


 一瞬、生きた心地がしなかったが、二人とも幸せそうな寝顔のまま、再び「スー……スー……」と規則正しい寝息を立て始めた。


(……助かった……のか……?)


 俺は死に物郭で手首をそっと引き抜き、音もなく後ずさりして寝所を脱出。

 セーフゾーンの物陰まで転がり込むように退避した。


「ハァ……ハァ……こちらアルファ……第3目標より無事脱出……作戦完了だ……!」


『『『うおおおおおおおおっ!!!』』』

『生還!! アルファが生きて戻ったぞぉぉぉっ!!』

『感動した! 今夜のミッションは歴史に残る!!』

『俺たちのフォーリンエンジェル作戦は大成功だ!!』


 静かな夜の奈落で、そこには確実に友情を育んだ男達と一部の『腐』……いや『漢』達がお互いの健闘をたたえ合った。

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