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マジカルアドベンチャー【ざまぁ回】

【マジカルアドベンチャー現社長・御剣慎也《みつるぎしんや》視点】


 なぜだ? なぜこうなっているんだ? 全てが順調だった。ワシが代表になってからは増収増益で株価も上がっている。それもワシの手柄だというのに……


「社長、○○テレビより派遣切りの件で取材をしたいと……」


「こちらは○○雑誌より岩本君の事を聞きたいと……」


「黙れ! 後にしてくれ! 今はそれどころではないのだ!」


 ワシは頭を抱えて怒鳴り散らした。

 報告に来た秘書がビクッと肩を揺らし、怯えた様子で部屋を出ていく。


「くそっ……! なぜだ! なぜあの『ゴミ捨て場』に落としたはずの岩本源が生きておるのだ!?」


 デスクの上のモニターには、例の配信画面が映し出されている。

 そこには、奈落の底で手作りのジャグジー風呂に入り、優雅にお茶会を楽しんでいる岩本と風間凛、そして……先代社長の孫娘である結城アリスの姿があった。


 クソッ、これでは……奈落の底では配信を止めさせる事もヤツを買収する事も――口を封じる事も出来んではないか!


 ――――――ダンッ、ダンッ。


 テーブルを叩いていると……


『【悲報】マジカルアドベンチャー社、追放した職人を奈落に落とすも超快適スローライフを送られてしまう』

『東郷白哉容疑者、生配信で不法侵入&誘拐&過去の悪事を全て自ら告白www』

『マジアド社、株価暴落ストップ安www 社長会見まだ〜??』


 モニターの横で目まぐるしく流れるネットのニュース記事とコメント。

 そう、事の発端はあのアホの東郷白哉だ。

 勝手に奈落へ降りて行き、ご丁寧にドローン配信の前で自らの罪と、我が社が岩本に行っていた不正な実績横取りの数々を喋り散らかしたのだ!


 プルルルルルッ! プルルルルルッ!


「ひっ……!?」


 デスクの上の固定電話が、悲鳴のような音を立てて鳴り響く。最近では電話が掛かってくるとビックリしてしまう。なぜ、ワシがこんなにビクビクしなければならないんだ?


「ま、また株主からか……!? いや、まさか警察……!?」


 受話器を取る手すらガタガタと震える。

 先代社長を追い落とし、実力を隠していた岩本を追放して手に入れたワシの完璧な王国が、奈落からのたった一本の配信によって、ガラガラと音を立てて崩れ去ろうとしていた――。


 ◆◆◆◆


 先代の社長とは馬が合わなかった。ワシは冒険者として活躍するどころかスキルの悪さから常に裏方だった。だからだろうか……『スキルが悪いのに頑張る』なんて甘っちょろい考えの冒険者がキライになったのは。


 先代社長もそういう甘い考えのもと、利益よりも安全? 株価よりも社員の保証? 売り上げよりも冒険? 全てが間違いだ。冒険者とは会社を大きくする為に捨て駒となる者達。それが真実であり絶対だ。


 ワシが正しいからこそ売り上げを伸ばし利益を上げて株価も上昇する。それが社会というものだろう?

 それが寝ればケガが治る程度のハズレスキル持ちに落とされる……そんな理由がない。


 ――――ピロリ、ピロリ……


 緊急回線より社長室へ連絡が回ってくる。もちろん、あの配信による質問や苦情などの類だろう。


「なんだ? 私は今は……」


「――社長! 大至急電話を取り次げと、あの世界的大会社アメリカのアドバンスカンパニーのCEO、ジョニー・ラインハート氏より直電が入ってます!」


「……ジョニー・ラインハート氏だと!?」


 ワシの脳内に、雷が落ちたような衝撃が走った。

 アドバンスカンパニーといえば、世界中のダンジョン利権と魔導具市場を牛耳る超巨大複合企業だ。先代の甘っちょろい経営時代には一顧だにされなかった、まさに世界の頂点。


「つ、繋げろ! 今すぐだ!」


 ワシは慌てて汗ばんだ手で受話器を耳に押し当てた。

 そうだ、これだ! 海外の巨大資本と業務提携を結べば、国内の小さな不祥事や警察の査察など一気に押し潰せる!


「ご、ご無沙汰しておりますラインハートCEO! マジカルアドベンチャー社代表の御剣で――」


『御剣社長。挨拶は不要だ。時間がない』


 スピーカー越しに聞こえてきたのは、冷徹な翻訳音声を通した重厚な男の声だった。


『単刀直入に言おう。我が社は今すぐ貴社との全ての既存契約を破棄し、保有株式を全て売却する。すでに法務部が手続きに入った』


「は……? え……な、何を仰っているのですかラインハート氏!? 我が社は今期も過去最高の利益を――」


『……君はまだ理解していないようだな。あの動画はキミも見たのだろう? 彼の魔道具化する技術やS級の魔物をいとも簡単に解体してしまう戦闘力……彼には無限の可能性を感じる。キミは違うのかね?』


「〜〜〜〜っ!?」


 御剣の喉から、ヒッと引きつった声が漏れた。


『もしも、彼が奈落から戻った時には是非とも我が社で迎え入れたい。もちろん、彼が納得するポストに報酬は用意する。彼にはそれだけの価値がある。キミもそうは思わないのかね? 思わないから優秀な彼を簡単に手放してしまったのだったな!』


「い、いや! あれは東郷の独断で! 岩本ならすぐに地上へ連れ戻して――」


『無理だな。彼のドローンにこちらからのアプローチは全てシャットアウト。全く凄い技術だよ。久しぶりだよ。私が本気で欲しいと思った人材は……』


「は……はい……!?」


『君のような無能な経営者に付き合う義理はない。……彼が地上に戻った時にキミとキミの会社に繋がりがあると困るのだよ。キミも分かってくれるね。それではGood luck、シンヤ・ミツルギ』


 ツゥ……ツゥ……ツゥ……


「あ……が……あ……っ」


 受話器が、カチャリと手からこぼれ落ちてデスクに転がった。


「社長、警察の方がお見えです」


 私の野望が……終わるのか?


「誰かぁ〜。あの配信を止めてくれ〜」

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