素材集め2
『あれは新種のゴーレム。普通のロックゴーレムは蒸気を出してない。多分身体中から蒸気が出てるから高熱のはず。ロックゴーレムとは比較にならない強敵……』
『おお、リスナーの頭脳……プロフェッサーでも分からん魔物とは……』
『俺だったら即死だな……』
『ああ、それよりもドワーフおっさんは無事なのか?』
『事故ったか? おっさん逃げて〜!』
『風呂は惜しい! 非常に惜しいが……!』
ハンマーを構えるとスチーム・ゴーレムに突撃した。
右から来るゴーレムの拳をかわして内側へ潜り込み……ゴーレムの関節に……
バッコ〜〜ン!!! ドサッ!
右腕の解体終わり。
バッコ〜〜ン!!! バッコ〜〜ン!!! バッコ〜〜ン!!! ドサッ! ドサッ! ドサッ!
『『『えっーーーー!!!』』』
『ゴーレムがダルマ草』
『おっさん無双再び!』
『凄すぎて滅!』
『ってかリンちゃんとアリスちゃんは無事?』
『大丈夫みたいだ!』
四肢を解体されてゴロゴロと転がる胴体だけのスチーム・ゴーレム。
俺はハンマーを肩に担ぐと、蒸気が吹き出しているゴーレムのコアへ歩み寄った。
「よしよし、コアの熱伝導率も最高だな! これなら湯加減の微調整も思いのままだぞ!」
カンカンとハンマーの柄でコアを突くと、ゴーレムはピクピクと震えることしかできない。
「ゲンさん、お疲れ様ー! 壁用の岩材も綺麗に切り出せそうだね!」
物陰からひょっこり顔を出した凛嬢ちゃんが、パチパチと拍手しながら駆け寄ってくる。
「……あ……あ……」
そして、その少し後ろからついてきたアリス嬢ちゃんは、完全に言葉を失っていた。
口をぽかんと開け、ダルマになった新種のゴーレムの巨体と、俺のハンマーを交互に見つめている。
「えっ……Sランクのゴーレムが……たった数秒で……? おじさま、一体何をしたのですか……?」
「ん? 何って、関節の結合魔法陣をハンマーの振動で叩き割っただけだぞ? 解体の基本だな!」
「解体の基本……!? ゴーレム相手に……!?」
頭を抱えるアリス嬢ちゃんを見て、コメント欄が再び大盛り上がりだ。
『アリスちゃんの常識が音を立てて崩壊していくwww』
『「解体の基本」でS級ゴーレムを相手にダルマにするおっさん』
『プロフェッサー息してるかー!?www』
『【朗報】ボイラー(Sランク魔物)確保成功!!』
「よし! 素材は揃った! 凛嬢ちゃん、アリス嬢ちゃん、さっそく最高のお風呂を作るぞ!」
「「おー!」」
アリス嬢ちゃんもこのノリに慣れてきたみたい。
「がっははは、アリス嬢ちゃんも早くも慣れてきたな……奈落で生活していればそうなるよな」
俺はスチーム・ゴーレムの装甲を全てマジックバッグへ詰め込みながら話をしていると……
『だから容量がおかしいからな!』
『あのバッグの考察がまだだったな……』
『そうだな。これを機会に聞いてみよう。本人に……』
『おっさん、おっさんのバッグって私物なのを魔道具化したのか?』
「ん? ああ、そうだぞ。へへん! 良いだろう。結構作るの大変だったんだぞ……まずはな……」
『おお、それが……では、構造が……』
『おっさんとプロフェッサーだけの空気になったな!』
『さっぱり分からん!』
『変態が二匹に……』
『まだ続くおっさん無双!』
◆◆◆◆
『エルダートレントまで数秒で倒すとは……』
『もはや、何も言うまい!』
『おっさんだからで片付く不思議!』
『イヤイヤ、それだけではないぞ! あのエルダートレントの倒し方が非常に芸術的な……』
『プロフェッサーが本日、バグり中……』
『プロフェッサーが完全にゲンさんの信者になってて草』
『「エルダートレントの倒し方が芸術的」はもう玄人の感想なのよwww』
『で、エルダートレントは何の素材になったんだ?』
『【予想】浴槽のフチ・スノコ・最高級ウッドデッキ』
『お風呂建築のクオリティが劇的ビフォーアフターの域なんだがwww』
「ガハハ! 視聴者の予想通り、トレントの木材は脱衣所のスノコと浴槽のフチ用だ! 木の香りが漂って最高の癒し空間になるぞ!」
俺は鼻歌交じりに、スチーム・ゴーレムのコアはボイラーと岩材を浴槽に、エルダートレントの最高級木材でスノコを組み上げていく。
トントン! カンカン!
魔法とハンマー捌きを駆使することわずか十分。
奈落の最深部とは思えない、蒸気がほんのりと立ち上るトレントの香りに包まれた【極上ジャグジー露天風呂】が完成した!
「「うわぁぁぁぁぁっ……!!」」
凛嬢ちゃんとアリス嬢ちゃんが、目を輝かせて歓声を上げる。
「すごい……! 本当にお風呂ができちゃった……! しかもすっごく綺麗!」
「信じられません……奈落の底で、こんなに立派なお湯が沸いているなんて……!」
「ガハハ! だろ? さて、次は約束の『水着』だな! 凛嬢ちゃん、アリス嬢ちゃん、ちょっと採寸……まぁ、調節できるようにして……このトレントの繊維で作った特製水着を着てみな!」
マジックバッグからサッと取り出したのは、倒したエルダートレントの繊維を『錬る』でパパッと仕立てておいた特製水着だ。
「わあ! かわいい! ゲンさん、裁縫までできるの!?」
「おじさま……本当に何でも作れてしまうのですね……!」
二人は嬉しそうに水着を受け取ると、トレントの木材で作った特設脱衣所の奥へと消えて行った。
そして数分後――。
『『『ゴクリ……』』』
『全リスナー全裸待機』
『セラフィムカメラ! 角度! 角度を考えろ!』
『おっさん、お前マジで神だわ』
緊張感が漂うコメント欄の前で、脱衣所のカーテンがそっと開いた――。




