↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術師リーンは騎士団長の監視対象です ~隣国のスパイ容疑をかけられましたが、なぜか最強騎士に囲われています~  作者: 空乃葉
第一部/第5章 在りし日の精霊たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/84

ep.48 竜の声

ローウェンVSレオン、っファイ!(≧∇≦)/

「師匠……?」


 リーンが呼んでも、ローウェンはすぐには答えなかった。


 やがて、隣にいるシルフィーへ視線を向ける。


「シルフィー。向こうから逃げてきた連中は、何か言ってなかったか」


『……言ってたわ』


 シルフィーの表情が曇る。


『こわいって。それから、いたいって』


「痛い?」


『うん。いろんな力がぐちゃぐちゃになってるって。あの竜の中で、喧嘩してるみたいだって』


 ローウェンの目が細くなった。


「……やっぱりか」


「師匠、何か知ってるんですか?」


「来る途中で聞いた。あの竜は、炎、水、風、土――四つの属性を同時に纏ってるそうだな」


「はい。アルヴィンさんは、エレメントドラゴンだって」


「……エレメントドラゴン、か」


 ローウェンが小さく呟く。


「少なくとも、俺の知ってる竜にそんなものはいない」


「え……?」


「自然に生まれた竜なら、普通は一つの属性に強く寄る。四つもの力を同時に抱えるなんて、まずあり得ん」


「じゃあ、あのドラゴンは……?」


「分からん」


 ローウェンは短く答えた。


「ただ、シルフィーの話を聞く限り、四つの力を使いこなしているわけではないようだ」


「……喧嘩してる?」


「ああ。互いに反発してるんだろうな」


 リーンは昨日見た竜を思い出した。


 炎、水、風、土。


 次々と異なる力を放ちながら、空で暴れていた巨大な竜。


 けれど――


『たすけて』


 あの声だけは、今も耳から離れない。


「それって……苦しいんでしょうか」


「可能性はある」


 ローウェンの表情から、いつもの気怠さが消える。


「四つの力が一つの器の中で反発し続けてるなら、ひどく不安定な状態だ。今は動いてないだけで、均衡が崩れれば、いつ暴れ出してもおかしくない」


「もし、暴れたら……?」


「王都どころじゃ済まん」


「……」


「最悪、この国全体が巻き込まれる」


 リーンが息を呑む。それほどの力を持った存在が、助けを求めている。


「師匠」


「何だ」


「……助けられないんですか?」


 ローウェンはすぐには答えなかった。


「分からん」


「でも――」


「だから、見に行く」


「え?」


「俺が直接、竜を見てくる」


「だったら私も――」


「駄目だ」


「まだ最後まで言ってない!」


「言わなくても分かる」


「師匠!」


その時、扉の向こうから足音が聞こえた。


 ほどなくして扉が開く。


「リーン。レオンハルト様がお戻りになりました」


 アイリスが告げ、その後ろから騎士団の制服姿のレオンハルトが現れた。


 室内にいるローウェンを見て、僅かに目を見開く。


「……ローウェン殿」


「久しぶりだな」


「いつ王都へ?」


「ついさっきだ」


 レオンハルトは一度ローウェンを見たあと、リーンへ視線を移した。


「何かあったのか?」


「え?」


「村にいるはずのローウェン殿がここにいる。何かあったのかと思ったが」


「あ……」


 リーンが答えようとした、その時。


「竜を見に行く」


「師匠!」


 また先に答えられた。

 レオンハルトの表情が険しくなる。


「……どういう意味です」


「そのままの意味だ。放っておく方が危険だからな」


 ローウェンは、竜の内に四つの属性が一つの器の中で反発している可能性と、その危険性を簡潔に説明した。


「……最悪、この国全体が巻き込まれる可能性があると?」


「ああ」


 レオンハルトは黙り込んだ。


 やがて、ローウェンを見る。


「ですが、あなたが行って何ができるんです」


「……」


 ローウェンはレオンハルトを見た。


 少しの間、値踏みするように目を細める。


 そして一度だけ、リーンへ視線を向けた。


「まあ、当然の質問だな」


 小さく息を吐く。


「仕方ないか……ここだけの話にしろ」


 その声音が変わった。


「俺には精霊が見える」


「……精霊?」


「声も聞こえる。俺は薬術師だが――精霊魔導師でもある」


「精霊魔導師……」


「今じゃほとんど残ってないがな」


 レオンハルトは驚いたようにローウェンを見る。


 その時だった。


 ――ォォォォォォン……


 遠く、森の奥から、低い咆哮が響いた。


「……!」


 窓硝子が、微かに震える。


 リーンは胸元を押さえた。怒っているようには聞こえなかった。


 むしろ――


「……苦しそう」


 思わず、そう呟いていた。


 ローウェンがリーンを見る。シルフィーも、不安そうに森の方角を振り返った。


『……ロー。やっぱり、あの子おかしいよ』


「ああ」


 ローウェンはしばらく考えたあと、低く言った。


「精霊があれだけ怯えてる。それに、リーンに声が届いた」


 レオンハルトの眉が僅かに動く。


「……声?」


「ああ」


 ローウェンはそれ以上説明せず、話を続けた。


「ただの竜とは思えん。もし精霊に近い何かが関わってるなら――俺の術が通じる可能性はある」


 レオンハルトは一瞬リーンへ視線を向けたが、今は話を遮らなかった。


「助けられるのですか?」


「分からん」


 ローウェンは即答した。


「だから、直接見る必要がある」


 レオンハルトはしばらく黙っていたが、ふとローウェンの視線を追った。


 そこには何も見えない。


「……先ほどから、何を見ているんです」


「シルフィーだ」


「師匠!」


「……シルフィー?」


「風の精霊だ。ここにいる」


 ローウェンが自分の隣を指した。


 レオンハルトの目が僅かに見開かれ、そして、リーンを見た。


「……リーンには見えるのか?」


「あ……」


 リーンは言葉に詰まった。ちゃんと自分から言うつもりだったのに。


「最近見えるようになったらしい」


「師匠!!」


「何だ」


「それ、私から言おうと思ってたんです!」


「今言っただろ」


「師匠がね!」


「同じだろ」


「全然違います!」


「待て」


 レオンハルトの低い声に、二人が黙る。


「……順番に説明しろ」


「はい……」


 リーンは小さく肩を落とした。


「前から声は聞こえていたんです。でも、姿は見えなくて……最近になって見えるようになりました」


「なぜ黙っていたんだ」


「黙ってたわけじゃ……ちゃんと話そうと思ってたんです」


「いつ」


「……近いうちに」


「リーン」


「ごめんなさい」


 即座に謝ると、ローウェンが小さく鼻で笑った。


「相変わらずだな」


「師匠は黙っててください!」


 レオンハルトは何か言いたそうだったが、今はそれ以上追及しなかった。


「その話は後で聞く」


「……はい」


 リーンは一度息を吸った。


「それより、レオン様。私も行きます」


「「駄目だ」」


「また!?」


 今度はレオンハルトとローウェンの声が綺麗に重なった。


「どうしてですか!」


「危険だからだ」


「でも、あの子の声が聞こえたのは私だけです」


 レオンハルトの眉が寄る。


「……さっき言っていた『声』か」


「あ……はい」


「何が聞こえた?」


「それは――」


「竜から『たすけて』って聞こえたらしい」


「師匠!」


「どうせ言うだろうが」


「私から言います!」


 リーンはレオンハルトへ向き直った。


「本当に聞こえたんです。『たすけて』って。だから確かめたい」


 レオンハルトの表情が変わった。


「……竜が、助けを求めたのか?」


「分かりません。でも、私にはそう聞こえました」


「リーン」


「レオン様も言ってくれましたよね」


 昨日交わした言葉を思い出す。


「確かめるって」


 レオンハルトが黙る。


「あの子が本当に苦しんでいるなら、何が起きているのか知りたいんです。私なら、また声が聞こえるかもしれない」


「だが――」


「お願いします」


 リーンはまっすぐにレオンハルトを見た。


「危ないのは分かってます。でも、聞こえたのに……何もしないままにはできません」


 長い沈黙が落ちた。レオンハルトは険しい表情のままリーンを見つめる。


 やがて、諦めたように小さく息を吐いた。


「……俺から離れるな」


 リーンの顔が明るくなる。


「はい!」


「勝手に動くなよ。戻れと言ったら必ず戻れ」


「守ります」


「俺からも離れるな」


 横からローウェンが口を挟む。


「師匠からも?」


「当然だ」


「じゃあ、どっちのそばにいれば――」


「「両方だ」」


「無理です!」


 その時。


「でしたら、わたくしも参ります」


 アイリスが静かに告げた。


「アイリスも?」


「はい」


「でも、ドラゴンがいる森だよ?」


「存じております」


「危ないよ?」


「ですから参ります」


「……え?」


 アイリスはいつもの穏やかな笑みを浮かべた。


「侍女ですし、ついて行きます」


「侍女って、そこまでしなきゃいけないの?」


「それに、わたくしはリーンの護衛も兼ねておりますので」


「……護衛?」


「はい」


「誰の?」


「リーンのです」


「…………私の?」


「はい」


 リーンはゆっくりとレオンハルトを見る。


「レオン様。私、初めて聞いたんですけど」


「……言ってなかったか?」


「聞いてません!」


 今度はアイリスを見る。


「アイリスも!」


「申し上げておりませんでしたね」


「なんで!?」


「特に必要がありませんでしたので」


「あるよ!?」


 ローウェンが呆れたように言う。


「お前、自分が護衛されてることにも気づいてなかったのか」


「師匠まで呆れないでください!」


 リーンはふとアイリスを見る。


「でも……護衛ってことは、戦えるの?」


「はい」


「どのくらい?」


 アイリスは少し考えて、いつもの控えめな笑みを浮かべた。


「わたくし、こう見えて強いんですよ」


「……そうなの?」


 リーンがレオンハルトを見る。


「アイリスなら問題ない」


「そんなに?」


「そんなにだ」


「ええ……」


 アイリスは楽しそうに微笑んでいた。


     ◇ ◇


 動くのは夜と決まった。森の周辺には騎士や冒険者が配置されている。


 大人数で近づけば竜を刺激する可能性があるうえ、ローウェンが精霊魔導師であることを知られるわけにもいかない。


「俺が――つーか、シルフィーに案内させる」


『私?』


「精霊の通り道なら分かるだろ」


『もう。仕方ないなぁ』


 リーンが小さく笑う。レオンハルトには、その声も姿も分からない。


「……何と言っている」


「仕方ないから案内してくれるそうです」


「そうか」


 レオンハルトはまだ少し複雑そうだった。


「アルヴィンにだけは伝えておく。夜明けまでに戻らなければ、捜索隊を出させる」


 それだけを決め、それぞれ準備へ向かった。


     ◇ ◇


 ――夜


 月明かりの下、四人は人目を避けて北東の森へ向かった。


 ローウェンの傍らにはシルフィー。


 その後ろにリーンとアイリス。


 最後尾をレオンハルトが警戒しながら進む。


『こっち』


 シルフィーが、人の通らない細い道へ入っていく。


 森が深くなるにつれ、リーンは違和感を覚えた。


「……精霊が少なくなってる」


 ローウェンが足を止める。


 シルフィーの表情も強張った。


『ロー』


「ああ」


 その時。


 ――ォォォォ……


 遠くから、大気そのものを震わせるような低い音が響いた。


 レオンハルトの手が剣へ伸びる。アイリスの表情からも、いつもの柔らかさが消えた。


 ローウェンが森の奥を見据える。


「……ここから先は、気を抜くなよ」


 四人は静かに、さらに森の奥へと足を踏み入れていった。

リーンの話したかったことを、すべて横から攫うローウェン(笑)大人げない…


ローウェン)

( ¯﹀¯ )ドヤッ


レオン)

なんで、あの爺さんが先に知ってるんだ…!

毎日会ってたのは俺なのに!!(´・ω・)σ゛ イジイジ


という気持ちだったかもしれませんね。(^o^;)


ここからはバトル回が増えるので、しばらくは毎日、夜に更新を頑張ります!

宜しくお願いします。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。