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薬術師リーンは騎士団長の監視対象です ~隣国のスパイ容疑をかけられましたが、なぜか最強騎士に囲われています~  作者: 空乃葉
第一部/4章 守りたいもの

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ep.41 過去からの手がかり

イケオジの登場回です(*^^*)


追記:セルギウスの肩書→元黒曜騎士団総長

に変更しました。団長2人は紛らわしかったですね。


「久しいな、レオン」


 その声に、レオンの瞳がわずかに揺れた。


「……お久しぶりです。セルギウス総長」


 男――セルギウスは苦笑した。


「その呼び方は、いい加減やめろ。今の団長はお前だろう」


「……長年の癖です」


「まったく。昔から妙なところで律儀な男だな」


 豪快に笑うセルギウスを見ながら、リーンはそっとアイリスへ顔を寄せた。


「ねえ、アイリス。あの人って……」


「セルギウス・グレイヴ様です。先代の黒曜騎士団長であり、軍部の総括長でもあった方です。レオン様の剣の師でもあった方ですよ」


「レオン様の……!」


「ええ。それに――この国では、英雄として名を知られている方でもあります」


「英雄……?」


 思わずセルギウスを見る。

 豪快に笑う姿からは、かつて騎士団の頂点に立っていた人物とは思えないほど気さくな印象を受ける。


 けれどレオンが敬意を向ける理由も、彼が姿を見せただけでギルド中が騒がしくなった理由も、それで納得できた。


「遅かったじゃねぇか」


 ガイアスが声を上げる。


「呼びつけておいて、随分な言い草だな」


「呼びつけた?」


 リーンが目を瞬く。


「……なるほどね」


 ジルが何かに気づいたように呟いた。


「この間言ってた『伝手』ってのは、この人のことだったのかい?」


「ああ。セルギウスだ」


 ガイアスはあっさり認めた。


「最近の魔物の動きについて、何度かこいつに聞いてたんだ」


「随分正確な地図まで作ってたじゃないか」


「使えるもんは使う。それがギルドマスターってもんだ」


「相変わらずだな、ガイアス」


「お前に言われたかねぇよ」


 二人のやり取りに険悪さはない。

 長い付き合いなのだろう。


「お二人は、昔からのお知り合いなんですか?」


「まあな。こいつが騎士団総長になる前からの腐れ縁だ」


「誰が腐れ縁だ」


「お前以外に誰がいる」


 セルギウスが笑う。


「それで?」


 その視線が机の上へ移った。


「わざわざ俺を王都まで呼び戻したんだ。ただの近況報告じゃないんだろう?」


「ああ」


 ガイアスの表情から軽さが消えた。


「お前に直接見てもらいたいものがあった」


 地図をセルギウスの方へ押し出す。


 魔物の目撃地点。縄張り。そして、移動方向。

 セルギウスは地図に引かれた線を目で追った。


 やがて、その表情から笑みが消える。


「……なるほどな」


「どう見る?」


「お前は?」


「同じことを考えてる」


 二人の視線が合う。レオンが眉を寄せた。


「何の話です?」


「昔にもあったんだよ」


「昔?」


「ああ」


 ガイアスが地図の一点を指した。


「二十年以上前――魔物が一斉に縄張りを捨てたことがある」


「今回と同じように?」


 リーンの問いに、ガイアスは頷いた。


「似てる。一種類や二種類じゃねぇ。普段なら互いの縄張りに近づきもしない魔物まで、同じ時期に住処を離れた」


「原因は分かったんですか?」


 アルヴィンが尋ねる。


「いや」


 セルギウスが首を振った。


「当時も調査はした。だが、何が起きていたのか分からないまま終わった」


「では、なぜ今回の異変と関係があると?」


「場所だ」


 レオンの問いに、ガイアスが地図を指す。


「昔、最初に異変が確認されたのはこの辺りだ」


 アルヴィンが現在の目撃情報と照らし合わせる。


「……近いですね」


「ああ。今回、最初に異常な動きが確認された場所とほとんど同じだ」


 偶然と片づけるには、出来すぎている。


「その時は……どうなったんですか?」


 リーンが訊く。


 ガイアスとセルギウスが、一瞬だけ視線を交わした。


「ドラゴンが出た」


「……え?」


 カインたちの表情も変わる。


「ドラゴンって……あのドラゴン?」


「他に何がいるんだよ」


 ガイアスが呆れたように返した。


「森の奥から突然現れた。周辺にいた魔物なんざ比べものにならねぇほどの、でかい奴だった」


「それを……どうしたんですか?」


「倒したぞ」


「倒した!?」


 リーンの声が裏返る。


「俺一人じゃねぇ。騎士団も冒険者も総出だった」


「とは言ってもな」


 セルギウスが口元を緩めた。


「最後に仕留めたのはこいつだ」


「おい」


「それで付いたんだったな。お前の二つ名は」


「二つ名……?」


 ガイアスが露骨に嫌そうな顔をした。


「昔の話だ。気にすんな」


「気になります!」


「気にすんな」


「ですが、かなり有名な話ですよ」


 アルヴィンがさらりと付け加える。


「アルヴィン、お前まで余計なこと言うんじゃねぇ」


 セルギウスが笑い、張り詰めていた空気がほんの少し緩んだ。


 だが、レオンだけは地図から目を離していなかった。


「ドラゴンを討伐した後、魔物の移動は?」


「ああ。次第に収まった」


 ガイアスの声から軽さが消える。


「だから当時は、ドラゴンに怯えて魔物どもが逃げ出したんじゃねぇかって話になった」


「では、原因はドラゴンだったのでは?」


 グレンが訊く。


「……それが分からねぇんだ」


「なぜです?」


「ドラゴンが、どこから現れたのか分からなかった」


 ガイアスの言葉に、部屋が静まる。


「あの辺りに巣があったわけじゃねぇ。以前からの目撃情報もない。ある日突然、森の奥から姿を現した」


「当然、周辺も調べた」


 セルギウスが続ける。


「だが、巣も卵も、長く棲んでいた痕跡も見つからなかった」


 アルヴィンが眼鏡を押し上げた。


「つまり……ドラゴンが魔物を追い出したのか。それとも、ドラゴンもまた何かによってそこへ現れるしかなかったのか」


「今となっちゃ、確かめようがねぇ」


 リーンは地図を見つめた。


 二十年以上前。魔物たちは突然、縄張りを捨てた。その後、どこからともなくドラゴンが現れた。


 そして今、同じ場所で、同じように魔物たちが動き始めている。


「……じゃあ」


 リーンは恐る恐る口を開いた。


「今回も、ドラゴンが出る可能性があるってこと?」


 誰も、すぐには答えなかった。


 やがてガイアスが、低く告げる。


「――ゼロじゃねぇな」



さて、ガイアスの二つ名は何だったでしょうか。

(いきなりクイズ!?笑)

回答と更新は明日の夜です(*^^*)



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