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薬術師リーンは騎士団長の監視対象です ~隣国のスパイ容疑をかけられましたが、なぜか最強騎士に囲われています~  作者: 空乃葉
第一部/3章 封じられていた記憶

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プロローグ 変わりゆくもの

第3章始まりました。

皆さんがお休みの時に、少しでも、読んでくれたらと思い頑張りました!

宜しくお願いします。(*^^*)

――王都、冒険者ギルド


「カイン、お願いがあるの」


そう切り出したリーンに、カインは片眉を上げた。


「なんだ? 金なら貸さねぇぞ」


「なんで私がお金借りる前提なの?」


「冗談だって。で、なんだよ」


「リーフェ村に行ってほしいの」


リーンが事情を説明すると、カインの表情が少しだけ真面目になる。


必要なのは、月雫の星露草。


通常の星露草とは異なり、特殊な環境で育つ希少な薬草だ。ローウェンなら持っているはずだが、今のリーンが簡単にリーフェ村へ戻ることはできない。


「なるほどな。じーさんからそいつを貰ってくりゃいいんだな?」


「うん。できれば師匠に、この手紙も渡してほしいの」


「分かった」


 あっさりした返事に、リーンが目を丸くする。


「いいの?」


「お前の頼みだろ。そんくらい行ってきてやるよ。それにお前の事情も分かってるしな」


チラリとリーンと一緒にやってきた、レオンハルトとアルヴィンに視線を投げた。


「ありがとう、カイン!」


「おう」


カインが笑って、昔と同じようにリーンの頭へ手を置いた。


 くしゃくしゃと撫でる。


「ちょっ、髪ぐちゃぐちゃになる!」


「七年前は喜んでただろ」


「喜んでないよ!」


「そうだったか?」


「そうだよ!」


その少し後ろで。


「…………」


 レオンハルトの眉間に、一本の皺が刻まれた。


 そして、なぜかその皺は、カインの手がリーンの頭に乗っている時間に比例するように深くなっていった。


     ◇ ◇


「……何がおかしい」


 低い声に、アルヴィンは窓の外へ向けていた顔を戻した。


「いや、別に?」


「なら笑うな」


「それは無理だな」


 ギルドから王城へ戻る馬車の中。


向かいに座る幼馴染を見ながら、アルヴィンはまた口元を緩めた。


 先ほどの光景を思い出したのだ。


カインがリーンの頭を撫でるたび、レオンハルトの眉間に皺が寄る。


実に分かりやすかった。


「……お前、変わったな」


「何がだ」


「そこが分からないところも含めてだ」


 レオンハルトが怪訝そうな顔をする。


アルヴィンはそれ以上言わなかった。

昔から、この男は他人に無関心だったわけではない。


むしろ逆だ。ガーディナスの剣として、守るべきものには誰より真摯だった。


 だが――あんな顔をする男ではなかった。


「まあ、いい変化なんじゃないか?」


「だから何の話だ」


「独り言だ。気にするな」


「……気味の悪い奴だな」


「酷いな」


笑いながら、アルヴィンは窓の外へ視線を移した。

リーンがガーディナス家へ来てから、まだそれほど長い時間が経ったわけではない。


それでも確かに、何かが少しずつ変わり始めている。


 本人だけが、それに気づいていないらしい。


     ◇ ◇


 王城へ戻ったアルヴィンは、廊下を歩いていた。

次の予定まで、それほど時間がない。


 足早に角を曲がったところで――


「これは、アルヴィン殿」


 呼び止められた。


 アルヴィンが振り返る。


「アストレア閣下」


そこに立っていたのは、魔法国家レイガルドの五大貴族の一角を担う男、ダミアン・アストレアだった。


「久しいな。こっちにいるなんて珍しい。今日は騎士団の使いか何かか?」


「ええ。少々、団長から頼まれた仕事がありまして」


「なるほど」


 ダミアンが穏やかに笑う。


「ガーディナスの若き騎士団長殿も、最近は随分と忙しそうだ」


「まあ、あいつは昔から働きすぎですから」


「それだけではないだろう?」


「……?」


 ダミアンの笑みが、ほんの少し深くなった。


「近頃、ガーディナス家で若い薬術師を保護しているそうじゃないか」


 アルヴィンの目が僅かに細くなる。


「耳が早いですね」


「これでもこの国の政治を担う一人だ。城内の噂くらいは耳に入る」


「噂、ですか」


「若いながら、随分と腕の立つ薬術師だと聞いている」


「ええ。腕がいいのは確かですよ。なかなか面白い子です」


「そうか。君がそう評するのなら、間違いなさそうだ」


 ダミアンもそれ以上は追及しなかった。


―ダミアン・アストレア

五大貴族の一角、アストレア家の当主にして、王国の監察官を務める男だ。


同じ五大貴族であるガーディナス家とも当然ながら付き合いがあり、アルヴィン自身もこれまで幾度となく言葉を交わしている。


柔和な物腰に反して、腹の内を容易には読ませない。貴族社会に疎かった頃など、何度この男との会話に神経を使わされたことか。


(……少なくとも、隣国のスパイだという噂を鵜呑みにしているわけではなさそうだな)


だからアルヴィンも、特に気に留めることはなかった。


「では、私はこれで」


「ああ。また機会があるだろうから、今(・)度(・)は(・)ゆ(・)っ(・)く(・)り(・)話(・)そ(・)う(・)、またな」


「…はい、失礼します」


微かに何か意図があるような気がしたが、そのまま互いに背を向けて歩き出した。


数歩進んだところで、ダミアンがふと振り返った。


 だが――


アルヴィンは、その視線に気づくことはなかった。



次は本日の夜になります

新しいキャラも登場です。

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