エピローグ 千年前、世界樹の下で
こんにちは、空乃葉です。
第2章ラストをお届けします。
千年前の出来事をチラリとお見せします。
――千年前
まだ、人と精霊が共に生きていた時代。
まだ、この地がレイガルドと呼ばれるよりも昔。今よりもずっと多くの精霊たちが暮らしていた。
風の精霊は人々の髪を悪戯に揺らし、水の精霊は子供たちと泉で戯れる。
人と精霊が共に生きることが、当たり前だった時代。
その中心には、天を覆うほど巨大な世界樹が聳えていた。
「もう、ルナティス! また食べたでしょう?」
世界樹の根元で、一人の少女が頬を膨らませる。
その隣では、大精霊ルナティスが何食わぬ顔で焼き菓子を頬張っていた。
『ひとつだけよ』
「昨日もそう言ってたじゃない。ロウも何か言ってよ」
「俺を巻き込むな」
少し離れた木陰で、薬草を選り分けていた青年
――ローウェンが面倒そうに答える。
「ロウの意地悪」
「その呼び方をやめろ」
「嫌よ」
「……勝手にしろ」
少女の笑い声に誘われるように、小さな精霊たちが楽しげに舞う。
穏やかな午後だった。
こんな日々が、いつまでも続く。
誰もがそう思っていた。
「――またここにいたのか」
森の小道から、一人の若い騎士が現れた。
「あ! 遅い!」
「仕事だったんだ。仕方ないだろう」
少女を見る青年の表情が柔らかくなる。
その時、小さな光の精霊が少女の髪へ舞い降りた。
「もう、くすぐったいってば」
楽しそうに笑う少女。青年も笑っていた。
――ただ
少女の髪に触れる精霊を見たその一瞬だけ、青年の瞳から笑みが消えた。
『……』
ルナティスだけが、それを静かに見つめていた。
その時――
カァン――
遠くから、鐘の音が響いた。
「……警鐘?」
ローウェンの手が止まる。
カァン――
カァン――
鐘は止まらない。
それまで楽しげに飛び回っていた精霊たちが、一斉に森の奥を振り返った。
ひらり、と。
世界樹から一枚の葉が落ちた。
ルナティスが、その葉を見つめる。
『――来る』
ルナティスが呟く。
やがて、地鳴りが響いた。
一頭。
二頭。
そして――数え切れないほどの魔物が、森の奥から姿を現す。
「……多すぎる」
青年が剣を抜いた。
少女の顔からも笑みが消える。
ただ一人、ルナティスだけが、押し寄せる魔物ではなく、その遥か向こうを見つめていた。
『……なぜ』
その日。
人と精霊が共に生きた時代は――
静かに、終わりへ向かい始めた。
読んでいただき、ありがとうございます。
次は第3章です。
今度はリーンとレオンにとって、色々な意味での試練が待ち受けています。
次はちょっと制作期間をいただきます。
飽きずに待っててください。
引き続き宜しくお願いします!(*^^*)




