ep.21 紅狼の牙
おはようございます、空乃葉です。
(たまには名乗ってみようかと思い実行しました!)
引き続き宜しくお願いします(*^^*)
「カイン!!」
医務室へ運び込まれるなり、一人の女性が勢いよく駆け寄った。
燃えるような赤い長髪を揺らし、寝台の横へ膝をつく。
「おい! しっかりしろ!」
その後ろから、紫髪の女性と大柄な男性も慌てて駆け寄ってきた。三人とも、心配そうにカインを見つめている。
「命に別状はありません」
その様子を見かねたリーンが、静かに声を掛けた。
「魔力の乱れは落ち着いています。しばらく休めば目を覚ますと思います」
赤髪の女性の肩が、ぴくりと震える。
ゆっくりと振り返る。
「……」
「……」
リーンも相手を見つめ返した。
どこか見覚えのある横顔。でも、まさか――。
次の瞬間。
「……リーン?」
赤髪の女性の瞳が大きく見開かれた。
「えっ……」
リーンも目を丸くする。
「……ジル?」
一瞬、時間が止まる。
「リーーーーーン!!」
ジルは勢いよく立ち上がると、そのままリーンへ飛びついた。
「生きてたかぁーーー!! 会いたかったぞ!」
「わぁっ!」
突然の出来事に、リーンはよろけながらも笑顔になる。
「ジル! 久しぶり!」
「やっぱりリーンだ!」
その声に、後ろの二人も顔を上げる。
「えっ……?」
紫髪の女性が目を丸くする。
「うそ……リーンちゃん!?」
次の瞬間には、ぱぁっと笑顔を咲かせて駆け寄ってきた。
「きゃーーー!! 大きくなったぁぁ!」
「セレナさん!」
ぎゅっと抱き締められ、リーンは苦笑する。
「もう、苦しいですって」
「だって可愛いんだもん!」
そのやり取りを見ながら、大柄な男性も静かに近付いてきた。穏やかな笑みを浮かべる。
「元気そうだな」
「ダレスさん……!」
リーンは嬉しそうに頭を下げた。
「お久しぶりです」
「あぁ。変わらなくて安心した」
ぽん、と優しく頭へ手が置かれる。昔と変わらない大きな手。それだけで胸が熱くなった。
少し離れた場所から、その様子を見ていたガイアスが静かに口を開く。
「ジル。知り合いだったのか」
ジルは満面の笑みで振り返る。
「あぁ! 我ら紅狼の牙の恩人だ。昔、私の命を救ってくれた薬術師。リーンだ!」
セレナも何度も頷く。
「リーンちゃんのお薬がなかったら、ジルは今ここにいなかったの」
ダレスも静かに続ける。
「俺たちは、ずっと礼を言いたかった」
リーンは照れくさそうに笑う。
「違います。助けたのは師匠です。私は、そのお手伝いをしただけですよ」
三人は顔を見合わせると、同時に笑った。
「それも昔のままだな」
リーンは、ジルたちを見回した。
「ということは……」
ゆっくりと寝台へ視線を向ける。
「まさか、この人……」
ジルがニヤリと笑う。
「あぁ。紅狼の牙の遊撃手。カインだ」
「えぇぇぇっ!?」
リーンは思わず声を上げた。
「全然気付かなかった! 髪凄い伸びてる!」
「そりゃ治療に必死だったからな、顔なんて見てなかったんだろ」
ジルが笑った、その時だった。
「……ん」
寝台の上のカインが小さく眉を動かす。
「カイン!」
三人が一斉に身を乗り出す。
ゆっくりと瞼が開いた。まだ焦点が合わず、ぼんやりと天井を見つめている。
やがて視線が、ゆっくりとリーンへ向いた。
「……」
「カイン!」
ジルが笑う。
「お前を助けてくれたの、あのリーンだったんだぞ!」
「……リーン?」
カインは目を細める。ぼやけた視界の中、リーンをじっと見つめる。
「……」
「リーン……リーフェ村の」
一瞬、医務室が静まり返る。
そして。
「……ぺたんこか?」
シーン……
リーンの頬がぴくりと引きつった。
「……」
「……」
ゆっくり拳を握る。
「……変わってないね」
にっこり笑う。
「その女たらし癖!このぉぉぉ!バッカイーーーーン!!!」
ゴンッ!!
「いってぇぇぇぇ!!」
頭を押さえながら飛び起きるカイン。
「お、おい!」
カインが抗議の声を上げる。
「病み上がりに何すんだ!」
「第一声がそれだからでしょ!」
リーンが即座に言い返す。
「何年ぶりだと思ってるの! もっと他に言うことあるでしょ!」
カインは頭をさすりながら笑う。
「……その勢い。やっぱリーンだ」
リーンは腕を組み、ぷいっと横を向く。
「もう知りません」
するとカインは、少しだけ真面目な顔になった。リーンを見る。
「……助けてくれたんだってな。ありがとう」
リーンもふっと笑った。
「どういたしまして。でも、もう無茶しちゃ駄目だからね」
カインは照れ隠しのように鼻を掻く。
「……相変わらず世話焼きだな」
その様子を見ていたジルが大笑いする。
「はははは! これだよ! この二人だ!」
セレナも涙を浮かべながら笑った。
「懐かしい~!」
ダレスは静かに腕を組み、小さく頷く。
「変わらんな」
その光景を少し離れた場所から眺めていたガイアスは、自然と口元を緩めていた。
(なるほど。これが紅狼の牙の"もう一人の家族"か)
リーンにとっては、ある意味「家族」みたいな関係を築いたメンバーでした。
バッカイン=バカ+カイン、意味通じましたか?(*^^*)




