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薬術師リーンは騎士団長の監視対象です ~隣国のスパイ容疑をかけられましたが、なぜか最強騎士に囲われています~  作者: 空乃葉
第一部/第2章 王都の波紋

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ep.20 リリアの雫

少しずつ不穏な足跡がみえてきます。



王立薬館を後にし、馬車止めへ向かって歩いていた、その時だった。


「……っ」


視界の端に、一人の男性が石畳へ崩れ落ちる姿が映った。


「大丈夫ですか!」


 リーンは反射的に駆け寄る。


男性は革鎧を身に着けた冒険者らしい風貌だったが、長い金髪が顔に掛かり、表情まではよく見えない。


肩で苦しそうに息をし、呼び掛けにも反応はない。

リーンは状態確認のために魔法診断をした。


「《ディアグノス》」


淡い光が男性の身体を包み込む


体内状態――異常無し。


魔力循環――異常。


呪毒反応――なし。


状態異常――魔力汚染(微々・未知)。


「……!」


(これは…魔力が乱れてる!)


 リーンの胸がざわつく。


 この乱れ方――。


王立薬館で感じた、あの嫌な魔力とよく似ている。

それに、レオン様と同じ反応!


(やっぱり……偶然じゃない?)


「アイリスさん、この方を支えてください!」


「承知しました」


リーンは腰に下げたクリスタル小瓶を取り出した。

淡い青白い薬液が、陽の光を受けて静かに揺れる。


(持っていてよかった……)


レオンハルトのために調合した際、念のため多めに作っておいた薬。リーンは小瓶を包み込むように両手を添え、静かに魔力を流し込んだ。


「どうか……」


 蒼金色の光が薬液へ溶け込んでいく。


 薬を男性へ飲ませると、数秒後――


「……っ!」


苦しそうだった呼吸が少しずつ落ち着いていった。


「よかった……」


リーンは安堵の息を漏らす。

しかし、男性はまだ目を覚まさない。


「呼吸は安定しています。ですが、このまま安静にした方が良さそうですね」


その頃には、周囲にも人だかりができ始めていた。


「誰か倒れたぞ!」


「冒険者じゃないか?」


一人の男性が腰に下げられた銀色の牙の徽章を見て目を見開く。


「紅狼(こうろう)の牙(キバ)の紋章だ!」


 その言葉に周囲がどよめく。


「早く冒険者ギルドへ知らせろ!」


「担架を!」


 街の人々は慣れた様子で動き始めた。


 リーンはその光景を見て、小さく息を吐く。


(すごい……。王都の人たち、連携が早い)


やがて担架が運ばれ、男性は冒険者ギルドへ運ばれることになった。


 アイリスがリーンへ視線を向ける。


「リーンさん。どうしますか」


リーンは少しだけ迷った。薬の効き目を最後まで確認したい。


それに、この魔力の乱れも気になる。


「……すみません。症状が気になるのでギルドへ行ってもいいですか」


 アイリスは静かに頷いた。


「では、公爵家には私から連絡を入れておきます」


「ありがとうございます!」


 ◇ ◇


――王都冒険者ギルド


重厚な扉が開くと、中にいた冒険者たちが一斉に振り返った。


「担架だ!」


「何があった!?」


騒然となるギルド内。受付の女性が駆け寄り、顔色を変える。


「まさか……!カインさん!?」


 その名前に、リーンは小さく首を傾げた。


(カイン……?どこかで聞いたことがあるような……)


 記憶の奥に引っ掛かる。


 けれど、思い出せない。


 その時だった。


「カイン!!」


ギルドの奥から、勢いよく飛び出してくる一人の女性。


燃えるような赤い長髪を揺らし、人混みを押し分けて駆け寄る。


「おい! しっかりしろ!」


さらにその後ろから、紫髪の女性と、大柄な男性が続いた。三人とも、心配そうな表情で担架を囲む。

そのまま医務室へ向かう光景を見て、リーンは思う。


(きっと、大切な仲間なんだ)


そして最後に、ゆっくりと歩いてきた大男が口を開く。


「……みな、仕事へ戻れ!あいつは大丈夫だ!」


落ち着いた低い声。

ギルド中が、その一言で動き始める。


 リーンは自然と、その人物へ視線を向けた。


大男はリーンへ軽く一礼する。


「俺はこのギルド長のガイアスだ。君が助けてくれたそうだな。詳しい話は医務室で聞かせてもらえるか」


(この人が……冒険者ギルドのギルドマスター)


 リーンも一礼を返した。


「はい」


久々の《ディアグノス》→魔力の流れや体調などの鑑定魔法です


すみません、朝にアップができれば7時に。

間に合わなかったらすみません、21時になります!

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