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聖女を虐める悪女だと思われたので、婚約者の王子と身体を入れ替えてみました  作者: S@Y@


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第三十話 決着


「今です!」


 セシリアの叫びが王都に響いた。


 彼女の身体から溢れた白い光が、魔王の胸を貫く。


『ぐっ……!』


 初めてだった。


 魔王の動きが止まる。


 黒い鎖が軋み、漆黒の魔力が乱れる。


「離せ……!」


 セシリアは苦しみながらも、胸元に浮かぶ黒い紋様を両手で押さえ込んだ。


 全身が悲鳴を上げている。


 それでも、決して手を離さない。


『愚かな契約者め!』


「うるさい!」


 セシリアは涙を流しながら叫んだ。


「私は……!」


 息を吸う。


 震える足で立ち上がる。


「私は、もうあなたの人形じゃない!」


 その瞬間。


 白い光がさらに強く輝いた。


 魔王の身体がわずかによろめく。


「殿下!」


 エレノアが叫ぶ。


 アレクシスは力強く頷いた。


「ああ!」


 二人は同時に駆ける。


 エレノアは無数の魔法陣を展開した。


 金と蒼の光が重なり、一つの巨大な魔法陣へ変わる。


「《聖光氷華》!」


 光が魔王を包み込む。


 魔王は咆哮を上げた。


『人間ごときがぁぁぁ!!』


 なおも抵抗する。


 黒い魔力が光を押し返そうとする。


「殿下!」


「任せろ!」


 アレクシスは大きく跳躍した。


 全身の魔力を剣へ集める。


 王家に伝わる奥義。


 今、この一撃にすべてを懸ける。


「エレノア!」


「はい!」


 二人の視線が重なる。


 その瞬間。


 エレノアの聖なる魔力が剣へ流れ込んだ。


 白銀の光を纏った剣が完成する。


 アレクシスは微笑んだ。


「一緒に帰ろう」


 エレノアも笑った。


「もちろんです」


 そして。


「はあああああっ!!」


 白銀の剣が、魔王の胸を真っ直ぐ貫いた。


『馬鹿な……』


 魔王の目が見開かれる。


『我が……人間に……』


 剣から溢れた聖光が、漆黒の身体を飲み込んでいく。


 腕が崩れる。


 翼が砕ける。


 闇が光へ変わっていく。


『こんな……終わり方……』


 最後の言葉は、風に消えた。


 次の瞬間。


 魔王の身体は無数の光となって夜空へ舞い上がる。


 黒雲が晴れた。


 夜空には、満天の星が広がっていた。


 王都を覆っていた闇は、完全に消え去った。


「……終わった」


 誰かが呟いた。


 その声をきっかけに、王都中から歓声が上がる。


「勝った!」


「助かった!」


「殿下!」


「エレノア様!」


 人々は涙を流しながら抱き合った。


 アレクシスは剣を納めると、真っ先にエレノアのもとへ向かう。


「怪我は?」


「私は大丈夫です」


 エレノアが微笑む。


 その笑顔を見た瞬間、アレクシスはようやく張り詰めていた糸が切れたように息を吐いた。


 そして。


 そっとエレノアを抱き締めた。


「……よかった」


 ただ、その一言だけだった。


 エレノアも静かに抱き返す。


「はい」


「一緒に帰れますね」


「ああ」


 もう二度と、この手を離さない。


 二人がそう誓った、その時。


「……殿下」


 弱々しい声が聞こえた。


 二人は同時に振り返る。


 そこには、地面に倒れたセシリアの姿があった。

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