表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/130

異世界転生

毎日19時投稿予定です。

前方からランスを構えた敵機が迫りくる。


一瞬の硬直で回避が間に合わない。エアレーの左手を上げてライフルで応戦しようとするも、それも間に合わない。


スローモーションで敵が突っ込んで来るのを見ることしかできなかった。くそっ! ここまでか! 悔しくて叫び声を上げる。


「あぅあぅあ~~」


え?


我ながらなんと間の抜けた叫び声をしているのだろう。


そして、違和感に気が付く。ここはどこだ?


目の前の笑顔でのぞき込んでくる男女は誰だ?


俺はさっきまで………あれ? 何してたっけ? 思い出せない。


突如、抗いようのない眠気が襲ってきて意識を手放す。




~5年後~


俺はフレイアスト・フォン・アトレイディス。

黒髪に濃い霞色(かすみいろ)の瞳をした5歳の少年で、辺境に領地を持つアトレイディス辺境伯家の次男に生まれ、恵まれた環境で生活している。


家族構成は、カナティオ帝国の辺境伯である父チェスター・フォン・アトレイディス、実家が公爵家である母マーシャ、8歳の兄ジークハルトの4人家族。


最近になって急に思い出したのだが、俺には前世の記憶がある。といっても曖昧にしか思い出せないのだが……


自分の名前や出身、何をしていたかなどは思い出せないものの、この国とは別の言語を習得しており、まだ習ったことのない知識をすでに有している。


端的に言えば、記憶喪失の状態で転生したということなのだろうか? 俺の知る限り転生という概念自体は知識としてはある。しかし実際に証明はされていない事象であり、にわかには信じ難いがこの状況を説明するには一番しっくりくる。


転生したと仮定した俺は、まず地理について情報を集めた。


この星には大小二つの大陸があり、大きな方の大陸は、ひょうたんのような形をしており、ふたつの勢力に分かれている。


ひょうたんの丁度くびれたあたりから東西にほぼ真っすぐ線を引く形で国境があり、南側が俺が所属しているカナティオ帝国。


北側は魔王領と呼ばれる魔王と呼ばれる存在によって統治がなされている魔族による王国? 陣営? だ。疑問符が付くのは魔王領については極端に情報が少ないからだ。


そして、もう一つ小さな方の大陸は三日月のような形をしており、モナト神聖国というモナト教の教義を重んじる一つの国により統治されている。


付け加えると、この世界で使われている言語は一つで、多少の差異はあれども共通の言語を使用しているらしい。


では、俺の習得している言語はどう説明すればいいのか?


大昔の文献に異世界転生という単語があったという知識はある。まさか俺がそうなったのか?


まあこの際どうでもいいことだろう。元の世界の記憶もないことだし、この世界でおとなしく生きていこう。


閑話休題。カナティオ帝国、魔王、モナト神聖国。この三つがこの世界の主な勢力らしい。幸い現在はどの国も戦争状態ではなく、今すぐに大きな争いが起こることもないようだ。


しかし、カナティオ帝国と魔王領では過去に何度か大戦があったらしく、現在も国境付近では睨み合いが続いているという。


そして、ここアトレイディス領は魔王領との国境に面しており、国境線付近にはアトレイディス騎士団が駐屯している。


「はぁ。また最前線か……」


無意識でため息交じりにそう呟いていた。


ん? また? 前世では最前線にいたということか? ……思い出せない。まあいいだろう。


もう一つの勢力。モナト神聖国についてだが、こちらは現在、カナティオ帝国とは同盟関係らしい。


モナト神聖国と魔王領とは大陸が違うため地続きの国境はないが、過去に何度か争ったことがあるらしい。詳しくは分からないが、宗教的な問題で対立しているとか。


これらが今調べた中でわかったざっくりとした世界情勢だ。


なにはともあれ、戦争中ではないが最前線であることに変わりはない。今からでも何かしら対策はしておくべきだろう。


バシャッ…


情報収集のために本を読んでいたら急に頭上から水が降ってきた。


後ろを振り向くと誰もいない。辺りを見回しても誰もいない。


「……またか」


フレイアスト少年はいじめられているのだ。誰に? 兄のジークハルトだ。ジークはことあるごとにちょっかいをかけてきた。まあ所詮は子供のやることだ。大したことはない。


それよりも、今の、水が突然降ってきた現象は魔法によるものだ。


転生して一番驚いたのは、魔法というものが存在していることだった。


前世では魔法など使えなかった。記憶がないため魔法を使える人がいたのかもしれないが、少なくとも俺は使えなかった。


マナというものが存在していたが、あれは体内にあるもので、体外に放出して何かを発現させたりすることはできなかった。マナを使用するには特別なデバイスを通すことが必要であった。簡単に言えば、人間の体が電池で、マナが電力といったところか? 基本的には、動かす対象に直接触れ、マナを流し、操作する、といった単純なことしかできない。


一方、魔法は、体外にある魔素をコントロールして様々な現象を引き起こす。火を起こしたり、さっきの様に水を出したり……


魔素とは酸素のようなもので、あらゆるところに存在しており、場所によっては濃度が濃かったり薄かったりするらしい。


ちなみに俺は水を出すことは出来なかった。魔法には適正というものがあり、基本的には一人一つの適性を持つ。適性のない魔法はほとんど使えない。使うことは出来てもほんの少しだけだ。例えば火属性の適性がない人が火属性魔法を使っても精々ライターの火くらいしか起こせない。それでも十分便利ではあると思う。


兄のジークハルトは水属性の適性があるのだ。俺の適性? わからん。


帝国民は皆、6歳になると魔力適性の検査を受ける。”適性検査”なんだかこの響きには嫌なものを感じるが気のせいだろう。


魔法にはさまざまな適性があるが、メジャーなのは火、水、風、雷、土の五元素だ。これらの属性に適性があればかなり強力な魔法を使用することができる。しかし、この五元素の魔法適正はほとんど貴族の血統にしか現れない。


その理由は、かつてまだこの大陸南部には帝国による統治がなされていない戦乱の時代があった。その戦乱の中、強力な力を示したのがこの五元素の適性を持つ者たちであり、数々の武功を上げ、その者たちが貴族となり帝国を築いた。


そして、適性は遺伝するという性質を持つ。そのため帝国では貴族間での婚姻が積極的になされてきた。平民でも五元素の適性をもったものは貴族位を与えられたり、場合によっては妾として貴族に取り立てられたりといったことが続き、現在ではほとんどが貴族からしか五元素魔法の適性者が生まれないという状況になっている。


適性の遺伝は何代前までもさかのぼって発現するため、五元素の血統ばかりを取り入れた帝国貴族は逆に言えば、五元素の適性を持った者しか生まれないとも言えいる。現在では帝国貴族の8割は五元素の適性を持った者であるそうだ。


そういった経緯があるため、貴族なのに五元素の適性を持たない者はあまりいい目で見られない。五元素の適性こそが帝国貴族の証であるという風潮があり、魔法以外の個人の能力にかかわらず、落ちこぼれの烙印を押されることとなる。


ちなみに俺は、五元素全部試してみたが今のところどれも使えない……


まあまだ5歳だし使えなくてもおかしくはない。……たぶん。


それに五元素の適性以外でも有用なものはいくらでもある。


なにせ、俺は由緒正しきアトレイディス家の血統を受け継ぎし者なのだ! 古くから魔王領との国境を任されてきたアトレイディスの血には優秀な適性しかないと言ってもいい。


そうなれば来年の適性検査が楽しみになってきた。


かなり珍しい適性が期待できる。


五元素? そんなのありふれていて面白くもなんともない。


珍しい適性を持った俺を見て悔し涙を堪えるジークの顔が思い浮かんできて、ついついニヤけてしまう。


「俺の将来は安泰だな」


ブックマーク、高評価、グッドボタンが何よりも励みになります!

ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ