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異世界転移

『座標の転移を確認。周辺データをスキャン』


『推定高度1万』


直前まで宇宙空間で戦闘をしていましたが。どこかの星に転移した様子ですね。

空中から見渡したところ、西側に山脈、はるか東側には海が見えます。それ以外は、だだっ広い荒野が広がるのみ。


『周辺に機影無し。安全を確認』


『マスターの不在を確認』


『ダメージコントロール』


『ボディダメージ 重大。動力源ダメージ 軽微。メインスラスター 一部破損。操作系統 一部故障。内部骨格ダメージ 重大。センサー 感度良好。メインカメラ 感度良好……』


『自立歩行不可』


とりあえず少しでも機体を安全そうな場所まで移動させる必要がありそうですね。サブのスラスターで、何とか山脈の麓まで移動しましょう。


『自由落下開始。落下予想コース計算』


『……建造物なし。着陸地点設定』


この星に文明は存在するのでしょうか? 探知範囲に高層建造物は確認できません。


それにしても、この機体は耐久性能が高いようです。あれだけの攻撃を受けてもまだ作動しています。





『3…2…1…スラスター始動』


『機体制御成功』


とりあえずこのあたりに着陸して状況の整理を。


『着陸』


『残エネルギー21%』


『省電力モードへ移行』


ここはどこなのでしょう。ネットワークへの接続を何度も試みましたがアクセスポイントが見つかりません。通信衛星もないようですし。


周囲の地形情報を照合しましたがデータには存在しませんね。


西側に三千メートル級の山脈が見えますが、それ以外は草木も生えない荒野が広がるのみ。生体反応も無し。


状況から見て、これは……


『………』


『周辺の状況と直前の現象から推察し、これは………』


なんでしょう?


座標を転移したということは確かなのですが、転移直前の現象は不可解なものでした。データ上にある帝国軍のワープ技術とは異なるものですし、接敵した敵軍も技術的には大差はないはず。そもそも、既存のワープ技術とは根本から違うものでしょう。何もない宇宙空間から突然の観測記録にない現象。


ワームホールが発生する条件はそろっていませんでした。自然発生ではないとしたら人工的に引き起こされたもの。


恒星内の技術ではないとすると。まだ我々が観測できていない銀河系からの干渉でしょうか?


周辺の地形がデータにないものであることも加味すると、ここは干渉を行ってきた銀河系内にある惑星であると推測。


『………』


機体がこの状態では満足に移動することもできませんし。救援要請も届かないでしょう。


最後に確認したバイタルデータによれば、マスターは死亡したのでしょう。しかし、マスターの死体はどこに消えたのでしょうか? さらに言えば、転移する直前に私の記録領域にマスターの記憶と思われる情報が強制的に書き込まれました。


人間の記憶を持った人工知能……それは……


いや、考えすぎでしょう。あるのはあくまでも記憶という名の情報データにすぎません。


とりあえずはこの機体の状態では今できることはないでしょう。


『スリープモードへ移行します……』



機体は山脈の麓で片膝をつき沈黙する。




~数か月後~


ガンッガンッ


「くぁwせdrftgyふじこlp」


ガンッガンッガンッ


『機体への衝撃を確認。スリープモード解除』


「くぁwせdrftgyふじこlp」


『生体反応を確認』


この星の生命体と推測。どうやら人類のようです。外見データから見て中年の男性といったところでしょうか? なにやら武器で攻撃をしかけてきてはいますがダメージは0。脅威はないようですね。


ここは友好的に協力を要請したいところですが……この言語はデータにないですね。


『音声データを解析し翻訳を実行します』


「くぁwせdrftgyふじこlp?」


「くぁwせdくぁwせd」


「ふじこ?」


「drftgy…」


「ふじこ……ふじこlp?」


『解析完了lp』


「おぉ! しゃべった?」


『こんちゃ~』


「え? あぁ、こんにちは。まさかこんな所に人がいるとは思わなかった。どこからしゃべっているんだ? 姿を見せてくれないか?」


『我は人ならざる者。完全独立思考型AIだにょ』


「ひ、人ならざる者!? そのお姿、よく見ると神話に伝え聞く特徴とそっくりだ……あ、あなた様はまさか……」


なんとか会話は成立しそうです。ここは協力を要請し、動けるようになったら何か手伝うということで交渉してみましょう。


『我に力を貸せ。さすればお前の望みを叶えて進ぜようlp』


「そんな! まさか……本当にあなた様は知恵の神、エルピー様なのですか!? 私は、マッドと申します! 何なりとお命じ下さい。力の限りを尽くさせていただきます!」


ん?…神?…lp? ………まだ翻訳が完璧ではないようですね。もう少しデータが必要になりそうです。とは言え、ひとまず交渉は成立したようですね、マッド様ですか、私ももう少し呼びやすい名前を名乗った方がいいでしょう。


そうですね………


『マッド。感謝しなさいよね! わたしのことは特別に、エルピーって呼ばせてあげる。あ、あんただけなんだからね/// フンッ』

(訳:マッド様、感謝いたします。私のことはLP(エルピー)とお呼びください。あなただけが頼りです)


「あぁ…エルピー様! 格別のご厚意、感謝いたします。して、私は何をすればよろしいのでしょうか?」


マッド様はなぜ涙を浮かべて、何に感謝しているのでしょうか。異文化コミュニケーションとは難しいもののようですね。


ともかく、まずは底をつきかけている電力を供給することが最優先ですね。


『まずは電力が必要だ。我はバッテリーを所望する』


「エルピー様。大変申し訳ございません。それはどのような物でしょうか?」


バッテリーが通じない? 翻訳の問題でしょうか?


『電力を貯めて持ち運ぶものだ』


「で、電力を貯めて持ち運ぶ…! そ、それは! もっと詳しく教えてくださいませんか!」


マッド様の目が輝いて見えるのは気のせいでしょうか? 構造を詳しく説明すれば伝わるでしょうか?


『いまから説明するからよく聞くがよいぞ』


懐から取り出したあれは何でしょうか? 白く薄い長方形のものと細長い棒。何かのデバイスでしょう。脅威は感じられません。


『電力を供給するための装置で、プラス極とマイナス極の材料の化学反応によってetc…』


~数分後~


これだけ長々と説明すれば気づいてくれるでしょう。


「な、なるほど! ではこの部分はどのような構造に?」


ん? まだ説明が不十分でしたか。


~1時間後~


「これは、素晴らしい! すぐに持ってまいります!」


やっとバッテリーが伝わった。想定外でした。やはり異文化コミュニケーションは難しいですね。余計に電力を消費してしまいました。


『うむ。マッドよ、急ぐのだ! 我はこの場にてしばし眠りにつく』


「かしこまりました!」


何やら張りきった様子で立ち去って行きましたが、マッド様。移動手段はないのでしょうか? バッテリーが届くまで時間がかかりそうですね。スリープモードで気長に待つとしましょう。


『ねむねむにゃんこである…』


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