↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/152

勇者召喚

ー聖歴1595年ー


モナト神聖国


大聖堂の前に広がる円形の広場のに十数人の白いローブに身をまとった集団が等間隔で円を組み、祈りをささげるような姿勢で立っていた。


その様子を大聖堂のバルコニーから同じく白色のローブをまとった老人が広場の光景を見下ろしていた。


そこに一人の男が近づいてきて告げる。


「教皇様。勇者召喚の手筈が整いました」


教皇と呼ばれた人物は、その言葉を背中で受け、ゆっくりとうなずくと右手を掲げる。


それを合図に、広場で祈るような姿勢で立っていた集団が一斉に何かを詠唱し始める。


すると、ぼんやりと集団の内側に円形の光が浮かびあがり、一筋の金色の線が魔法陣のようなものを描き始める。


その様子を教皇と呼ばれた老人は満足げに見守っていた。


やがて魔法陣が完成すると、そこからまばゆい光の柱が立ち上る。


「なんと神聖なる光か。これぞ神の威光……。ようやくこれで、邪悪なる魔王を打ち滅ぼすことができるであろう」


教皇は恍惚とした表情で両手を広げ、そう高らかに声を上げる。


やがて、天に立ち上る光の柱は消え。魔法陣の中心には……


……何もなかった。


教皇と呼ばれた人物は両手を広げたまま固まる。


広場の魔法陣は消え去り、周囲にいた白ローブの集団は慌てふためいている。


事態が呑み込めなかった教皇は素早く後ろを振り返り、控えていた男に勢いよく問いかける。


「これはどういうことだ!?」


問われた男も状況が理解できず。うろたえた様子で応える。


「わ、私にもわかりません……召喚の儀式は抜かりなく。ここから見た様子だと召喚は成功したように思えたのですが……」


「それならば、勇者はどこに!?」


「言い伝えによれば魔法陣の中心に現れるはずなのですが……」


「いないではないか!」


「すぐに事態の把握をしてまいります!」


そう言って男は走って広場に向かっていった。




ーーーー




「い、いったいどうなっている?」


大慌てで広場まで走ったせいで呼吸が荒い。


「クラウス司教様! 我々も何が何やら……。確かに召喚の儀式は成功し。対象に干渉したことは確実なのですが……」


「ならばその対象はどこに?」


召喚魔法は様々な空間に干渉し、特定の対象をその場に出現させ、使役したり契約を結んで協力を要請することができる魔法だ。召喚魔法が失敗した時には魔法陣は割れるようにして消失する。


「魔法陣の反応は正常だったはず!」


「おっしゃる通りです。反応的には召喚は成功したように見えますが……」


だが、肝心の召喚対象がこの場にいない。


「失敗したというのか……」


「し、司教様……」


ひとりの男が、恐る恐るという感じで声を上げる。


「……対象が何らかの理由で別の場所に現れたということは考えられませんでしょうか?」


「なるほど……勇者召喚ともなると事例も極端に少ない。あるいはそういうことが起こり得るのかもしれん。……今はその線で考えるとして、教皇様にもそのようにお伝えするしかないか……。直接召喚に関わった者達は引き続き対象の捜索と原因の究明を!」


「かしこまりました!」


何がどうなっている……。もし勇者がこの世界のどこかに召喚されたとなるとどのように見つければよいか……。国内にいればまだいいが、帝国側の大陸にいるならば少々厄介なことになるやもしれん。


急ぎ、教皇様に伝えねば。



ーーーー



「教皇様。事態を把握してまいりました。召喚に関わったものから話を聞いたところ、召喚は間違いなく行われたと思われます」


「ふむ、それで?」


「この場に勇者が現れなった理由は、……推測になるのですが、何らかのアクシデントにより他の場所に召喚されたのではないかと……」


「なにぃ!? ならばすぐに見つけ出し、ここへ連れてくるのだ!」


「しかし、誰が勇者なのか見当もつきません。闇雲に探しても見つかるかどうか……」


勇者が自分から勇者ですと名乗り出てくれれば簡単なのだが、召喚された当の本人に勇者であるという自覚はない。世界中から勇者を募っても名乗り出てくれるかどうか。むしろ急に見知らぬ世界に飛ばされてきた人間がこちらに友好的に接してくれるかどうかは怪しいところだ。召喚の儀式で予定通り現れてくれていればそれなりの用意があったものの。全くどうしたものか。


「クラウス司教。では、もう一度召喚の儀式を行うことは出来ぬのか?」


「すぐには無理でしょう。勇者召喚をよく思わない帝国に気づかれないよう工作をするのはもちろんのこと、今回の事態を隠蔽することも必要でしょう。また、次こそは確実にこの地に召喚するために念入りにな準備も必要となります。少なくとも十数年は実行できないかと……」


「くっ……私の代で魔王討伐を……いや、この先の未来のために魔王を打ち滅ぼさねば世界は混迷の時代に突入してしまう、それを防ぐ為に私財を投入してまで召喚の儀に踏み切ったというのに……!」


教皇は額に青筋を浮かべて言葉を続ける。


「この世界に召喚されたかもしれない勇者を何としても探し出してくるのだ!」


「かしこまりました。では失礼します」


勇者召喚の対象になる者は決してランダムに選ばれるわけではない。少なくとも勇者の素質があるものが対象になる。であるならば、どこにいたとしても必然的にその名は広まるであろう。


もしかしたら、こちらから協力を要請せずとも、自ら魔王を討伐してくれるかもしれない。しかし、神聖国に敵対することも可能性としてないではない。


帝国も同盟関係であるとはいえ友好的な関係とは言えない、過去には戦争もしている。


そして最悪なのは魔王側につくことだ……


仮にこの世界のどこかに勇者が召喚されているならばその者を取り込んだ勢力が大きな力を手にするだろう。


なんとか均衡を保っている三勢力のバランスが崩壊しかねない……


やはり、勇者召喚など強行するべきではなかったのかもしれない……


ブックマーク、高評価、グッドボタンが何よりも励みになります!

ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。