ブラックアウト
毎日19時頃投稿予定です。
左胸部のダメージが、システムにエラーを吐き出し続けている。それでも、私はこの部屋を、そしてマーシャ様を守り続けた。
隠れ家を包囲している《影牙》の刺客は、私一人では対処できない数だった。彼らは、手を変え品を変え、絶え間なく攻撃を仕掛けてくる。多勢に無勢。私のプログラムが弾き出した結論は、あまりにも絶望的なものだった。
「この化け物め……! いい加減くたばりやがれ!」
刺客たちの怒号が飛び交う。彼らの攻撃をいなすたびに、私の人工皮膚は破れ、赤黒いナノ・ブラッドが噴き出す。それは、彼らの恐怖を増幅させるだけのようだった。
何とか耐えしのいでいたが、一斉に分銅鎖が投げられた。
私は、全神経を集中させ、迫りくる鎖を次々とはじいた。しかし、左胸部に受けたダメージの影響で、私の動きは鈍っていた。全ての鎖をはじいたつもりだったが、一本の鎖が、動きの鈍くなった左腕に絡みついた。
(……しまった)
その瞬間、次々と鎖が投げられ、私の四肢は拘束されていく。
「これで終わりだ、化け物!」
散々な被害を出し、ようやく捕らえることが出来た獣を見るように、刺客たちには安堵や怒り、畏怖……分類不可能な感情データが含まれた視線を向けてくる。
分析を中断し、私の思考回路のリソースをただ一つに絞る。
(……奥様を逃がさなければ)
私は、拘束された体で、もがいた。鎖を引きちぎろうと、全力を振り絞る。しかし、鎖は私の身体を、より強く締め付けてくるだけだった。
「サン! 逃げて!」
マーシャの悲鳴が聞こえる。しかし、もう逃げることはできない。
その時、一人の刺客が、ナイフを構え、マーシャへと歩み寄っていく。
(……ダメだ)
私の右眼のカメラが、ノイズにまみれながら、マーシャが連れて行かれる光景を捉えていた。
(……フレイアスト様……)
私は、命令を達成できなかったことを、内心で謝罪した。
(……申し訳ありません……)
視界が暗転していく……。
その時だった。
「グアァァァァァッ!」
マーシャを引きずっていた刺客が、突如、轟音とともに吹き飛んだ。
何が起こったのか、理解できなかった。
見れば、路地の向こうに、フレイアスト様が立っていた。彼の右手からは、黒い渦のようなものが立ち上っており、その瞳は、怒りに燃え盛っていた。
(……闇属性魔法……)
私のデータベースに、その魔法に関する情報が記録されている。しかし、データは少なく実際に見たのもこれが初だった。
「……遅れた、すまない」
フレイアスト様は、そう言って、静かに、そしてゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる。
彼の姿を捉え、私は機能停止した……。
ブックマーク、高評価、グッドボタンが何よりも励みになります!
ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!




