蜃気楼の牢獄
今日は2話投稿します!
毎日19時頃投稿予定です。
帝都の片隅に存在する、凶悪犯のための牢獄。
この地下牢は、強固な石造りで、数多くの衛兵により守られている。
その裏手にある、人通りのない路地にユーリ・フォン・リヴァルとは立っていた。
(……さて、今からしようとしている事は間違いなく重罪。しかしながら、愚かな行いを見過ごす事はできない。……それに、ジークハルト様でも同じことをするだろう)
一部の貴族が、私利私欲に駆られて動き、挙句の果てには平民に罪をなすりつける。帝国では良くあることだった。企んだ者は一切動かず、結果だけを待つ。実行は他にまかせ、責任は負わずに利益だけを得る。
(……なんという茶番か)
良くあることだが、彼の正義には反していた。
ユーリは、掌に魔力を集中させる。左手には、清らかな水が渦を巻き、右手には、ゆらめく炎が燃え上がる。相反する属性が、互いに干渉することなく、彼の掌で均衡を保っていた。
そして、水と炎を混ぜ合わせ、地面に放った。すると、辺りの空気がゆらゆらと歪み始めた。
(ミスティ・ミラージュ)
彼は、己の魔法で、自身の周囲の景色を歪ませ、蜃気楼をローブのように纏った。
(これで、視覚では私を捉える事はできない)
ユーリは、静かに牢獄の壁へと歩み寄る。見張りの兵士たちは、彼の存在に気づくことはない。
牢獄の壁に掌をつけた。すると、掌から、熱と冷気が同時に壁へと流れ込み、ピシっと音を立て、崩壊した。
出来た穴から、そのまま地下へと降りていく。そこには、何十もの牢獄があり、それぞれに囚人が収容されていた。悪臭と湿気が蔓延するその場所で、ユーリは、悠然と牢獄を一つ一つ確認していき、ついに目的の人物を見つける。
「アラン教授。無事か」
ユーリがそう問いかけると、教授は驚きの表情で顔を上げた。
「ユーリ君! ……なのか!? なぜここに……」
「時間がありません。ここから教授をお連れします」
ユーリが手を触れると、牢獄の鍵はパキンと音をたて、扉が開く。
アラン教授は、未だ信じられないといった表情で、ユーリを見つめている。
「一体……なぜ……」
「早く行きましょう。魔力で探知されかねません」
ユーリは、そう言うと、教授を連れて来た道を戻っていく。
再び蜃気楼を纏い、地下牢から地上へ、そして帝都の裏路地へと、誰にも気づかれることなく、二人は姿を消した。
教授は、ただ茫然とユーリの背中を見つめていた。まるで、目の前で起こった出来事が、夢か幻のようだとでも言うように。
ユーリは、教授を安全な場所へと導くと、静かに言った。
「教授。数日は身を隠していて下さい。教授の身の潔白は、ジークハルト様が証明して下さります」
「ジークハルト君が?」
「あるいは、フレイアスト・フォン・アトレイディスが……」
「彼も……」
「私ができるのはここまでです。身を隠す場所の心当たりは?」
「あぁ…、それはなんとか……。ありがとう。助かった」
「では」
そう言うと、ユーリの姿はスッと闇に消えた。
ブックマーク、高評価、グッドボタンが何よりも励みになります!
ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!




