Début.2 田舎町から始まるアイドルストーリー
---まぁなんて美しいの。
---そりゃ僕たちの子供だからね。
---まぁ おバカねあなたは。
目を開くととても眩しい。
何かを喋りたくても呼吸をする事に必死で
言葉にならない声を吐き出すの精一杯だ。
収縮されたスポンジに水が染み渡る様に
肺が空気でいっぱいになる。
理屈で分かってても吐き出し方が分からない。
生前の幼少期の記憶なんてあろう筈なくて
呼吸なんて物心つく前から当たり前に出来てたから
筋肉の使い方なんて考えたことが無くて
というか考えてる事を処理する事も出来なくて・・・
思考を張り巡らせては忘れていく
ニワトリの様な気分になった。
"かくして私は再度産まれた。"
記憶を持ったまま赤ちゃんから
やり直したいと思った事はあるだろうが
実際になってみると分かる
----これは苦行だ。
あの身勝手な神め、覚えておけ。
そう思ってもすぐに忘れてしまうのであった。
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なんとなく記憶が定着し始める様になったのは
3歳にもなる頃だ。
四角い吹き抜けから見える世界は
淡いグリーンに包まれていて目に良さようだ。
果物が熟す木から香るフルーティーな香りに
包まれて私はスクスクと育って行った。
「痛てっ!!!えーん!!!!」
小窓から外に落ちた。
「エリルったら!また転んで 歌って踊る事が大好きなのね」
母親に抱えられ頭を撫でられる。
そういえば母親からの愛って感じた事が無かったなぁ。
父親のアロン、母親のエーテルの間の
長女として産まれた私は"エリル"と名付けられた。
くるりと体を翻しステップを踏むと讃美歌を口ずさむ。
音楽の才能に恵まれたのかその声は透き通り、
山に囲まれた村は大きなライブハウスの様に反響する。
深い海のように黒く艶やかな髪が靡き
風が巻き起こると隙間を通り音色を奏でる。
少し悪戯にニコッと笑うと
見たものは初恋に似た熱気に包まれ高揚した。
「わぁ!すごいぞエリル!
将来は国を代表するミューズで間違いなしだ!」
両親の拍手が沸き起こるとエリルは左手は背中、右手を胸に当て深々と礼をする。
「本日は足元の悪い中足をお運び頂き、
誠にありがとうございました」
目を丸くした両親が視界に入ると
「はにゃ?」と首を傾げおどけて見せた。
「そんな言葉どこで覚えてきたんだか」
「もしかして・・・・。」
---やばい。母親に転生を疑われる。
「ヤバいくらい天才なのかもしれない」
どうやら杞憂に過ぎない様だ。
少しの間が空き笑って見せると
アロンに抱きかかえられ頭をわしゃわしゃと撫でられた。
くすぐったくてなんだか恥ずかしくて
ちょっと誇らしくて嬉しくて温かい気持ちだった。
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パチパチパチパチ・・・。
どこからか拍手が聞こえる。
見渡すと緑の髪をした少年と目が合った。
少年の方へ駆け寄ると少年は足音を察知し
足早に逃げていってしまった。
「まぁもうファンが出来たのね。さすがうちの子だわ!」
目の中に一番星が宿った様にエーテルは目を輝かせ
顔の前で手をポンと合わせた。
---そっか。私はこの世界にアイドルになりに来た。
この才能ならもしかして本当に一番になれるかもしれない。
夢がなんとなく目標に気がした。




