Début.3 最初のメンバー
この世界は私の前世で言うと中世ヨーロッパに近しい。
しかし"文明が発達してる"と言うわけでは無さそうだ。
と言うのもこの世界では魔法が発達し
技術革新が起きなかった世界線のようだ。
太陽の様に高揚する頬、肌を吹き抜ける風
天候に愛された神からの恵み。
その噂は村を飛び越え数年後エリルは
村一番の有名人になっていた。
特段裕福とは無縁だったが王立魔法学園に
特待生として招かれた。
「エリル、俺たちが居なくて寂しくないか?」
「なんかあったらすぐに手紙を送るのよ」
過保護な親たちだ。
多分生きていたら私と同い年ぐらいなのだろう。
いい友達になれたと思う。
それくらい素晴らしい人間性であった。
「もう!心配性なんだから。大丈夫だよ。
頑張って"アイドル"になって見せるからね」
「そのアイドル?ってやつはわからないけど
お前のなりたいような人間になれ」
この実直な人間性に似て良かった。
前世では親の愛情を受けた事がなくて
少しやさぐれてしまった気がしてる。
”誰かに愛されたい”そんな承認欲求が
私をアイドルに駆り立てた。
アイドルは 言わば真人間がやる様な仕事ではないと思う。
寂しさ、悔しさ、劣等感や憎しみ
幼少期受けてこれなかったものを全力で取り返そうとする
その執念深さは異質だ。
恵まれた家庭で生まれて親の過度な保護下では
大体はでかい口を叩いてサックと辞めていく。
そんな景色を横目でずっと見てきた。
多分これが初めての人生だったら
私はアイドルを志して無かったと思う。だけどありがとう。
「それじゃ 行ってくるね。パパ、ママ」
これから始める大きな夢に心を震わせた。
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大都市クロスノイズまでは馬車で行く。
---魔術が発達してると言うのになんと古典的な。
現代で例えるなら電車があるのに
人力車で登校する様なものだ。
とは言え、こんな田舎村だ。近代的なものは無い。
10歳になるまでこの村を出てないから外の世界を
私は知らない。
行商屋から買った本ででしか私の世界はまだ拓けて居ない。
しかしそれで良かった。
この世界に生まれスローライフを大々的に満喫した。
4年間も月20本以上のライブ、握手会をこなし
精神的に健康と言えるわけでは無かった。
柄にもなく歌詞を書き綴って見たり
衣装のデザインを考えてみたり
今度は自分のやりたい事をやれる様に勉強したりと
有意義な時間を過ごした。
才能があるかと言ったらそれは心の中の深く閉まっておこう。
”自尊心マシマシで!”
アイドルを続けるにあたって最大の敵は
承認欲求が尽きること、自分に自信がなくなる事、
期待が重すぎて逃げたくなっちゃう事
これの9割型は酒と男に起因する。
まぁ地味にちゃんと努力してた私には無縁な話だが。
「それにしても今日も空は綺麗だぁ ふんふんふ〜ん♪」
馬車から見える空はとても澄んでいる。
この風景だけで曲が作れそうだ。
「そこの途中の音半音上げた方が
明るい雰囲気になると思うよぉ!」
隣を見るとそこには赤茶色の髪をした
可愛らしい女が居て緊張した。
----うぉ。ナチュラルボーンつ、、、ツインテール?!
「え?!あ。ありがとうございます。
てことはふんふんふ〜ん♪こんな感じかな?」
鼻腔を膨らませ頭蓋に音を響かせる。
「うんうん♪いい感じだぁ!
・・・にしても歌うんまいねぇ!
見た目もお人形さんも見たい!
優勝してるの?!いいなぁ・・・」
妙に馴れ馴れしいがとにかく可愛いい。
引っ込み思案のオタクはイチコロだろうよ。
「あ、ありがとう・・ございます」
村では年上の人たちに囲まれてきて
年の近い人との距離感がいまいち分からない。
「ねぇ、その制服ってアルテミだよねぇ?
私もアルテミだよ!友達になれたら嬉しいな♪
私の名前はマイラ。マイラロビンソンだよ。よろしくね♪」
とにかく話のテンポが早い。
---距離の詰め方天才スギィ....
「あっ!!!」
馬車が大きく揺れマイラとの距離感がグッと縮まる。
---大きな目、フリフリした尻尾、
程よく肉付きのいいボディ・・・
何より耳!みみ!!ミミ!!!
素晴らしい!これは新メンバー候補だ。
仲良くなるしか無い!
「こんにちは。私はエリル。凄い早口で可愛いです」
「あぁッ。エリルさんごめんなさい!
ついテンション上がっちゃって・・・。
私、音楽クラスで作曲家志望だから、その・・・
キミみたいな人に歌をうたって貰ったら
嬉いなとか思って・・・・!」
その瞬間私はマイラの両手を掴んで見つめていた。
「その!私と・・・"アイドル"になりませんか?!」
この衝動は止められない。
空白の時間が流れる。
----しまったこの世界に"アイドル"なんて言葉はない
なんて言い換えればいいのだろうか?
ユニット?劇団?ツイン?バンド?
「そのアイドルってのは・・」
改めて説明をしようとした最中
食い気味にマイラが口を開く
「私なんかでもなれるものですか・・?」
さっきまでの威勢が無くとても弱々しい。
表情は前髪でよく見えないが小刻みに震えている。
「私みたいな普通の女の子でもそれってできますか!
私みたいな根暗で、空気読めなくて、早食いの女の子でも!」
マイラをぎゅっと抱きしめた。
---可愛い・・・!可愛すぎる・・・!!!
「もちろん!
あなたみたいに可愛い子見たことないわ!
私はあなたと組みたい!」
初めて人を口説いている。
肉食女子ってこんな感じだろう。
まぁ見た目的に肉食はマイラなのだが。
「こ・・こんな私でよければ友達からよろしくお願いします♪」
メンバー集めは順調に始まった。




