アルスランの思惑
お疲れお茶会が終わると、卒業生たちは午後から王都にある各国の館へと移動していく。私はここでお別れになるダニエルとクベストに「今までありがとう」と挨拶を交わし、劇団に入る人たちとは「またね」と言い合って練習室の扉を閉めた。
「ディアナもこのあと帰るでしょう? 正面玄関まで一緒に行こうね」
「あ、ファリシュタごめん。私今からオリム先生と話があって……遅くなると思うから先に帰っていいよ」
本当はオリム先生ではなく王の間に行くのだが、私の言葉にファリシュタは眉を下げた。
「ここから出る時はディアナと一緒がいいよ。だから寮の部屋で待ってていい?」
「でも何時に戻れるかわかんないよ?」
「それでもいいよ。ディアナとはすぐに会えるけど、卒業して学院を出る時に一人は嫌だもん」
「そっか……そうだよね。じゃあ一緒に帰ろっか。でも夕方になっても戻らなかったら先に寮を出てね。乗合馬車がなくなっちゃうから」
「うん、わかった」
そうして私はファリシュタと別れ、副学院長室に行くと見せかけて内密部屋に向かう。そこでいつも通りルザとイシークに待機を告げて秘密の通路に入った。
そういえばこの道って今後どうなるんだろ……残しておいたら危ないよね。
私がこの学院を去れば、この道は使われなくなる。王の塔に直結している隠し通路なんて存在しているだけで危険だ。もしかしたらここを使うのも今日で最後なのかもしれない。
ボードの魔石装具に乗って行き止まりまで来ると、そこから階段を上り、王の塔の一階に向かう。
なんか……変な気分だな。
昨日までは早くアルスラン様に会って文句を言いたいとプンプンしていたのだが、卒業パーティとクラブメンバーとの別れで情緒がぐちゃぐちゃになってしまった。今はどんな心境で会ったらいいのかわからない。
まあ、とにかく言いたいことは言わなきゃね。
私は一つ深呼吸をすると、王の塔の一階から浮石の魔石装具に乗って上へと向かった。
王の間前の廊下に着くと、そこにクィルガーがいて、私の顔を見た途端フッと表情を緩めて歩いてくる。
「卒業おめでとう、ディアナ」
「ありがとうございます、お父様」
クィルガーは私の頭をポンポンすると「やっぱり背が伸びたな。妙な感じだ」と言って首を捻る。
「もう、こういうこともしない方がいいのかもな」
「え、これからは頭を撫でてもらえなくなるのですか?」
「ヴァレーリアが言っていた。もう年頃の見た目になるのだから、それなりの接し方に変えないといけないって」
「ええーそんなぁ。まだいいですよ。成人の見た目にはなってないんですから」
「そうもいかんだろ。というか、中身は成人してるんだから、そろそろお前も子どもに見える仕草はやめた方がいい」
「むぅ……そんな急に言われても」
そんなことを言いながら二人で王の間に入ると、中ではソヤリがアルスラン様になにやら報告をしていた。クィルガーが戻ってきたからかヒシヤトの姿はなくなっている。
私が来たことに気付くと、ソヤリがこちらを振り返って立ち上がった。
「丁度いいところに来ましたね。今から昼の休憩時間に入るのでお願いします」
「あ、そうなんですか。わかりました」
「そういえば、卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます。まさか卒業式の会場でお会い出来るとは思いませんでしたが」
「アルスラン様が結界なしで動けるようになりましたからね。本来は学院長が学院に行くのは当たり前のことですから。ああ、そういえばバイラム、でしたか? あれも面白い催し物でした」
「え、ソヤリさん卒業パーティに来てたんですか?」
「現場には行っていませんが、校舎の屋上から様子を見ていたのです。私だけでなくアルスラン様もクィルガーも見ていましたよ」
「えええ!」
まさかあのパーティを見られているとは思わなくて目を丸くすると、ソヤリがニヤリと笑う。
「演劇クラブと参加者たちの踊りも面白いものでしたが、私は貴女に殺到した告白者の話に興味がありますね」
「ひえぇ! なんでそれを……!」
私は思わずそう叫ぶが、答えは決まっている。ルザが報告したのだ。私は顔を青くしながらゆっくりと後ろのクィルガーを振り返った。
「ああ、それか。報告は聞いた。ったくおまえは最後までいろいろしでかすな……」
「あれは私が起こしたことではありませんよ⁉」
「あの告白場所とかいうのを作ろうと企画したのはおまえなんだろうが。自分から騒動を起こすようなものを作りやがって」
「あぅ……それは……すみません。あんなことになるとは思わなくて……」
私がそう言って耳を下げるとソヤリが僅かに笑う。
「まあその話はまた今度聞きましょう。私はすぐに仕事に戻るので」
「俺も帰ってから家でゆっくり聞く。これから訓練があるんだ」
「あれ、お二人とも行ってしまうのですか?」
「昼食はすでにそこに準備していますので、あとは頼みました」
ソヤリはそう言うとアルスラン様に挨拶をしてさっさと行ってしまい、クィルガーも提出するものを出すとすぐに出て行った。一人残された私は執務机の手前に置いてある昼食のワゴンに目をやる。
「アルスラン様、すぐに昼食を召し上がられますか?」
「……いや、どちらでも良いが」
書類を確認してサインしたアルスラン様はそう言ってこちらをチラリと見上げ、口の端を上げる。
「其方は私に話があるのではないか?」
「……そりゃ、ありますけど。たくさん」
「では先にそちらを済ませるか」
と、なぜか少し楽しげな声でそう言い、アルスラン様は腰を上げる。
「上へ行くのですか?」
「ああ。魔女の話は上でないと出来ぬ」
そうして私は促されるまま彼の腰にしがみついて上へと飛ぶ。ふわりと塔の先端に着地すると、アルスラン様がまじまじと私を見た。
「本当に背が伸びたのだな」
「あ、本当ですね。前までと感覚が違います」
以前までは手をそのまま伸ばすとアルスラン様の腰の位置だったのだが、今はそれよりもう少し上の部分を掴んでいる。私はその手を離すと「卒業式の時は少し距離があったから、そこまでわからなかったのかな」と言って首を捻った。
「あ、卒業式で思い出しましたけど、あんなところで笑うなんて酷いですよ、アルスラン様。どう返していいのかわからずに焦ったではありませんか」
「其方がわかりやすく怒っていたのでおかしくなったのだ。私のせいではない」
「私のせいでもありませんよ! だってアルスラン様には言いたいことがたくさんあって、すぐにでも文句を言いたかったところに目の前に現れるから……!」
私がそう言って怒ると、アルスラン様はフッと笑いながら窓の方へ歩いていく。
「そうだろうとは思っていた。しかしあのように学生がいる場でも全く隠せていないことが面白くてな」
「あ、あれは……確かにやっちゃったとは思いましたが。まさか卒業式でアルスラン様に会えるとは思ってませんでしたし、直接表彰してもらえるなんて考えもしませんでしたから」
彼に付いていってそう弁明すると、窓の外を見ていたアルスラン様が呆れたように口を開く。
「五大老が言い出したのだ。あれだけ頑張ったディアナのことを卒業式で直接認めてあげてくれ、と」
「え、五大老が?」
「それにソヤリが乗っかった。学生の前で私がディアナを表彰すれば、私に認められたエルフとしてみなの記憶に残るから、と。それに私の姿を見せることで病から回復したことを示せると言われてな。だから卒業式に出ることにした」
「そうだったんですか……」
「お陰で其方の面白い顔が見れたのだから、やって良かったとは思う」
「もう、どういう意味ですかアルスラン様!」
面白い顔なんて失礼な、と怒るとアルスラン様は楽しげに笑う。彼がこんなに屈託なく笑うのは初めて見る。
「……なんだか機嫌がいいですね、今日は」
「ここ数日は体が軽いのもあって調子がいいからな。まるで身体中の細胞が若返ったようだ」
その言葉に私はハッとして彼を見上げた。そういえばアルスラン様の肌艶は昨日と同じでとてもいいし、髪も艶々しているように見える。
それに気付いて、私はようやく本題に入った。
「ということはアルスラン様……やっぱり体が……」
「ああ、前とは明らかに違う。どうやら寿命が延びたことで少し若返ったようだな」
「そんな……」
本人が感じているのなら本当にそうなのだろう。ウヌアがアルスラン様の提案を受けて、私たちの寿命を操作したのだ。その事実に、私は思わず俯く。
「どうして……どうしてこんなことを……」
「そのような顔をするな。私が願ってそう提案したのだ」
「だからって自分の寿命を変えるなんて……私と、分け合うなんて……」
「やはり私と同じ寿命になるのが嫌だったのか?」
「そうではありません! 私のためにアルスラン様の人生がめちゃくちゃになったんですよ⁉ 寿命を延ばすなんてしちゃいけないことです。そんなことしたら……アルスラン様が人間じゃなくなっちゃう……」
人間には人間の理があり、エルフにはエルフの理がある。両者の時間は同じではない。その摂理を無理やり操作したことが、私はとても怖い。魔女はまるで魔物を作り出すように私たちの体を変えたのだ。
「私の望みを叶えるために、アルスラン様が変なものに変えられた気がして……嫌なんです。私、今からウヌア様に頼んで元に戻せるか聞いてみます」
「そのようなことはしなくて良い。ウヌア様が言っていたではないか、寿命は延ばすのは簡単だが短くするのは時間が掛かると。それに私はこの体になっても人間だ。その自覚はちゃんとある」
「でも……わ、私はいいんです。元々魔女が作った生命体だから、あの人たちにいじられてもなんとも思いません。でもアルスラン様はその支配下にない、ちゃんとした人間だったのに……!」
私がそう喚くと、アルスラン様は私の頬を両手で包む。その瞬間、二人を白い光が包み込んだ。
「私が……ちゃんとした人間に見えないか?」
「アルスラン様……」
「言ったであろう? 寿命が延びたお陰で調子がいいと。このような感覚になったのは生まれて初めてだ。私はむしろこの体に感謝しているのだぞ?」
「……」
アルスラン様の声とともに、繋がった先からは安心感のようなものが流れてくる。彼の中に不安がないことが伝わってきて、私は体から力を抜いた。それを確かめたアルスラン様は私の頬から手を下ろし、窓の外に視線を移す。
「……まだ誰にも言っていない話をしていいか?」
「誰にも言っていない話、ですか?」
少し気持ちが落ち着いた私は、彼の言葉に耳を傾ける。アルスラン様は遠いところを見るように目を細めて話し始めた。
「これは私が幼いころからずっと考えていたことなのだが……荒唐無稽なものであったため、今まで誰にも言えずにいた。長い間ずっと心の中にしまっていたもの。おそらく、そんな世は実現しないだろうと半分は諦めていたことだ」
その内容に私は目を瞬く。現実的で、何事も論理的に考えるアルスラン様が荒唐無稽なことを考えるなんて想像が出来ない。
「それはどんなことなのですか?」
「……先の大戦が終わってから、力の強い魔石使いの数が減っていっているのは知っているであろう?」
「はい。授業で習いました。先の大戦で一級の魔石使いがごっそりいなくなってしまって、しかもそのあとなぜか一級の人たちが生まれにくくなってしまい、増えていかなくなったのだと」
「そうだ。それどころか二級三級の者たちも徐々に数が減っていっている。幼いころにその事実を知った私は、このままでは世界から魔石使いがいなくなるのではないかと考えた。なぜなら魔石使いを生む魔石の数自体が減っているからだ」
昔は七つあった大規模魔石採掘場はこの一千年のうちに数を減らし、アルタカシークに続いてサマリーにある大規模魔石採掘場まで閉鎖されて、残るはザガルディ、リンシャーク、ウヤトの三つだけになった。その国では今でも一級の魔石使いは生まれているが、それでも数は減ってきている。
「それだけこの大陸に埋まっている魔石の数が少なくなっているということなのであろう。アルタカシークはまだ地下に透明の魔石の鉱脈があった故、なんとか魔石使いが生まれているが、それもやがて減っていくと予想している。透明の魔石はこれから魔石装具作りに使われるからな」
「あ……」
そうだ。魔石使いが生まれるかどうかは魔石がたくさんある地域に住んでいることと、胎児にマギアを吸収する能力がどれだけあるかに掛かっている。その土地に埋まっている魔石の数が減ると魔石使いは生まれにくくなり、マギアを吸収する能力もおそらく遺伝的なものだろうから代々薄れていくと考えられる。
「確かに……今ある大規模魔石採掘場がいずれなくなれば、魔石使いが生まれる環境ではなくなるのかもしれません」
「ああ。そしてその時は意外と近いと私は予測している。魔石術が使えるのは三級からだが、何十年、何百年あとにはその三級すら生まれなくなるであろう。そうなったら残るはそれ以下の平民たちだけになる」
そんな世の中になれば、社会の有り様が変わる。魔石使いであるが故に貴族という身分を手にしていた人たちはその座を追われ、反対に今まで力を持たなかった平民が貴族に成り代わろうと反乱を起こすかもしれない。私がそう予想すると、アルスラン様はゆっくりと頷く。
「そうだ。魔石使いが貴族として君臨していたこの社会が大きく変わることになる。それに気付いた私は幼いころから、どうすればそういう社会に少ない軋轢で進めるのか、そればかりを考えるようになった」
「少ない軋轢ですか?」
アルスラン様が言うには、この先そんな社会になるのは避けられない。だがなんとか元貴族と平民が激しくぶつかるような変革ではなく、緩やかに変化していくことは出来ないか、その方法はないか探していたのだそうだ。
「激しい変革は多くの犠牲を生む。魔女時代から魔石時代に変わったあとに、魔石術を手に入れた人間がエルフを滅ぼしたようにな」
「……」
その言葉に思わず昔のことを思い出して、私は口を噤む。だがすぐにあることに気付いた。
「でも、アルスラン様。今度の変革は逆に魔石術が使えなくなって、力のない平民ばかりになるということでしょう? それならば激しいぶつかり合いにはならないのではないですか?」
「人間は今まで必要になれば様々なものを作り出してきた。魔石使いの力が弱くなってきたと知った平民たちは、ここぞとばかりに秘密裏に強力な武器を開発するであろう。それにタイミングの悪いことに、大きな争いに発展する武器が最近生まれてしまった」
「え?」
「テルヴァが作っていた魔石装具武器だ」
「……!」
「あれは四級のマギアコアを持っていれば稼働することが出来る危険なものだ。あのようなものが今後量産されれば、平民が大きな戦を起こすことも可能になる」
「で、でもあれはお父様や騎士たちによって全部壊されたのですよね?」
「カランビアが秘密裏に作っていたものは処分出来たが、すでに魔石装具に透明のミニ魔石が使えることは世界中に知られているのだ。今は存在しなくとも、そのうち同じようなものを開発する者は出てくるであろう」
「……っ」
それは思ってもみないことだった。それが本当ならば私が魔石装具に透明の魔石を使ったことが、新たな武器を作るきっかけを生み出したことになる。
「そんな……私のせいで……」
「其方が思い悩むことではない。其方が発見しなくても、いずれ誰かが見つけていたかもしれぬ」
アルスラン様は慰めるように優しい声でそう諭す。
「……昔の私はそのような武器が出来ることは予想していなかったが、それでも危機感は抱いていた。だが誰にも言えなかった」
「……いつか魔石使いがいなくなった時、出来るだけ衝突がなく次世代に進むこと……それは私にはとても立派で素晴らしい考えに思えますが、なぜ誰にも言えなかったのですか?」
争いを避けようとする考えを、なぜ周りに言わなかったのだろうか。
「私は体が弱く、当時はなんの役にも立たない人間だった。そのような者がそんな未来の話をしても誰の支持も得られまい。それにそのころのアルタカシークは危機に瀕していてそれどころではなかった」
アルスラン様は今後の魔石使いの辿る道が暗いものであることを知り、それをどうにか出来ないか一人で考えながら幼少期を過ごした。そして毒撒きの事件が起こって王座を継ぐことになったアルスラン様は、そこで改めてそれについて考え、まず学院を作ろうと動き出したんだそうだ。
「一番最初に世界中の子どもの価値観に、共通の意識を植え付けようと考えたのだ。まず全学生に平等に魔石術の知識を与え、自分の国が有利だなどと考えるものがいなくなるよう仕向ける。そして学生たちに身分差を気にせず過ごせる場所を与え、親との価値観から離そうと考えた。新しい時代に、旧世代の価値観は邪魔になるからだ」
そうして学院で世界の縮図を経験した子どもは、やがて物事を世界規模で考えるようになる。各国の学生の数や級別の授業の人数から、現在魔石使いがどれくらいいるのか、その数がどう減っていっているのか目の当たりにさせる。
現状を正しく知った学生たちは今後についても考えるようになる。この先、魔石使いの数が減っていけばどうなるのか、と。
「そうしてこの先の時代を考える人材を育成すること。それが学院の真の目的なのだ」
「……そうだったんですか……そんなことを」
アルスラン様の考えに私は素直に驚く。確かに思い起こせばその新旧の価値観の違いについては私も感じることがあった。学院にいる時と国に帰った時で習慣が違うことに戸惑うというのは周りからもよく聞いていたし、クベストのように新しい価値をここで学んで国に役立てようと考える人もいた。
すごいな……そんなことを考えて学院を作ったんだ。
「だが学院の運営は思惑通りに進んでいったが、まだ平民だけの社会に緩やかに移行出来る方法が思い付かなかった。子どもだけでなく、大人の貴族にも変化を与えることが出来るものはないか。そう考えていたところに、其方が現れたのだ」
「え、私ですか?」
アルスラン様に見つめられ、私はパチパチと目を瞬く。
「正しくは、其方の知識だ。其方が教えてくれた別の世界の政治形態に、私が欲しかった答えがあった」
「別の世界の……?」
そう問うと、アルスラン様が軽く微笑む。
「其方が前にいた世界は王ではなく、平民が治めていた世界なのであろう?」
「ええ、そうです。まあ王様が残っている国もありましたが」
「選挙というものをして、民たちが国の代表を選ぶ。そうであったな?」
「そうですね。みんなで選んでました」
「そのような社会をこちらでも作れないかと考えたのだ。今この世界の国は魔石使いの王が治めているが、その時代はいつか終わる。その前に王が中心の政治の仕方を変え、身分制度も徐々に緩やかにしていけば、魔石使いがいなくなったあとに大きな変革が起こる危険は避けられるのではないか、と考えたのだ」
「あ、あの……それってつまり王政から民主政に変えるってことですか?」
「最終的な形はそうなるであろうな」
「そんな大きなことを考えていたんですか……っ」
私が信じられないと目を瞬くと、アルスラン様は「其方を保護しようと決めたのは、そういう知識を持っていたからという理由もあるのだ」と呟く。
自分の常識にはないものを私は持っていた。もしかしたらそれが今後のこの世界に役に立つことがあるのではと考えたらしい。
……それって、私に前世があると告白したことがいい方向に転んでくれたってことだよね。
「もし私に前世の記憶がなかったら、私は問答無用であのまま監禁生活になってたんですか?」
「そうだな。そういうことになっていたであろう」
「ひえぇ」
今知った事実に少々身震いするが、私は話を戻す。
「じゃあこれから何代かあと、魔石使いがいなくなるころまでに民主政治に移れるように、アルスラン様は動いていかれる予定なのですか?」
「いや、そこまで時間を掛ける気はない。準備が出来次第、新しい政治形態に移行しようと思っている」
「え……出来次第というのは?」
よくわからなくて首を傾げると、アルスラン様は私を見て目を細める。
「私は私の代で、王政をやめるつもりだ」
その言葉に、私は大きく目を見開いた。
ウヌアの元から帰ってきてからの
怒涛の日々が終わり
ようやくアルスランと話が出来ました。
そこで明らかにされた彼の思惑。
ただの勢いでウヌアにあの提案を
したわけではありません。
話は続きます。
次は ディアナが得たもの、です。
本編は次回で最終回、そしてエピローグとなります。




