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アルニラム騎士団の憂鬱  作者: 古川モトイ
5/10

ポール・ゴールドバーグの証言と見解1

-貴重な休日をありがとう。


いや、どうってことないですよ。先輩の頼みとあれば。


-今でも、僕を先輩だと言ってくれる後輩はポールと電気屋のサイモンだけだ。


「ケン・ダールの6枚抜き」は僕が退役したら孫に話してやろうと思ってるとっておきの話です。逆に先輩こそ、その頃になって痴呆で僕の事を知らない奴呼ばわりしないでくださいね?


-君が、また別のエイリアンが攻めてきたときに前線勤務にならないことを祈ってるよ。


ありがとうございます。私がオフをスポーツバーと実家の往復で過ごしていた頃、スポーツバーのテレビで史上初の宇宙人と地球人の射ち合いを見たわけです。直後に私の端末が光って、すぐフェイクじゃないと悟りました。あとオフは終わりだってことも悟りました。すぐに基地へ戻ると最初の交戦国となったアメリカがどう動くのかを見守りました。当然、いつでも出動できる状態です。詳しいことは機密なので言えませんが、およそそんな感じです。


-どう思った?


マンハッタンのビルがバターみたいに溶けるのを見たでしょう?「あんなのどうやって追っ払うんだ?」って思ってました。出撃命令が出たら死ぬだろうなと。しかし、現実にはご存じの通りです。


-詳しく


アルニラム騎士団の兵器が光学兵器に偏っていたのは明らかで、地球の文明にそれを防ぐ手段はほとんどなかったんです。一方、地球の兵器と言えば質量兵器ばかりで、彼らはきいた話では数億年前に質量兵器は使わなくなっていて、せいぜいスポーツや理科の実験で見る程度だそうですね。分かりやすく言いかえると「宇宙人はレーザーで、地球人は銃弾で」戦争をして、両者ともに防御手段を持ってなかった。ボクサーが足を止めて素手で殴りあいしているような戦争でした。


-それは分かりやすい言い方だね。特に印象に残ったことは?


赤外線誘導ミサイルの類が通用しなかった事が多分一番ショックだったと思います。彼らは赤外線の類をほとんど発しない推進方式を使っていたのと光学迷彩で隠していたのと両方の理由で、熱を感知して誘導する兵器が使えなかったんです。だから最終的には鉄の弾丸を届く距離から当てることになりました。


-今でも分からないんだけど、彼らの反重力フィールドは弾丸に対して上手く働かなかったのかな?


反重力フィールドは重力を遮断する機構らしくて、反重力フィールド内に入ると弾丸が放物線を描かなくなるってだけの話だったんですよ。それで、自由の女神の数倍のデカさの敵を倒すんですから目を閉じていても当たりますよね?ただ、質量兵器に対抗する手段がないわけでは無かったらしいんですよ。


-初耳だぞ?


これは機密でもなんでもない、考えれば分かる話なんですが、彼らはあの艦で宇宙を航行して地球までやってきているので、小隕石を迎撃する機構は持っているんです。飛翔物はレーザーで自動的に撃ち落とす。だから、揚陸艦トゥレイスがリバティー島に沈む時の映像を見るとレーザーで打ち返しているのが少しわかりますよ。


-なんで、そんなシステムがあるのに沈んだんだ?


飽和攻撃です。


-なんだそれ?初めて聞く言葉だぞ?


先輩が初めて聞くってだけで昔からあった言葉ですよ。迎撃能力を超える量の攻撃を叩きこむって伝統的な方法です。ニューヨークが攻撃されたって聞いて世界中の軍隊が最新鋭の兵器をマンハッタン島に集結させましたからね。……まあ、それら全てエイリアンからすると時代遅れだったんですが。一斉に打てば飽和攻撃ですよ。宇宙空間の高速航行では全方向から隕石が同時に飛んでくることは無いですからね。

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