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アルニラム騎士団の憂鬱  作者: 古川モトイ
10/10

ジャクソン・セルマンの証言と見解(メールから抜粋)

 反重力技術を手に入れたことで復興の意欲を湧かせたニューヨークでは、瓦礫を押しのけながらもクリスマスの準備を始めていた。軍人や宗教家のボランティアが特別なセレモニーを各所で行っていた。市民ボランティアや歌手も多かった。生き残ったミュージカル俳優たちによる野外劇も行われて、それらは捕囚されているエイリアンたちも観劇することができた。多国籍軍からは「地球にはクリスマスには軍事行動を中止する風習がある」というメッセージが連日届けられていた。忘れもしない12月14日。特に南方の国から来た軍隊にはニューヨーク州の冬の寒さは過酷で、斜めに降る雪の中、コーンビーフのスープが振る舞われている中、ボランティアが騒ぎ出した。雪に霞むリバティー島、自由の女神を踏み潰していたハイヒールのかかとが、細い部分から折れて、崩落を始めたのだ。反重力フィールドに何かあったことは一目瞭然だった。距離があるため、崩落の音は、数秒遅れて、我々の耳に届いた。およそ「ゴゴゴゴ」という低い音で、やにわに辺りは騒がしくなった。誰かが「ツナミが来る」と叫んだのがはっきりとわかった。捕虜を見殺しには出来ないため、全ての捕虜施設が解放されて、ボランティアも軍人も捕虜も誘導されて、グレーンセンタービルの高層階へ階段で非難した。ビルは人でごった返して、特に窓には崩落を見届けようとする人間が端末のカメラを構えて鈴なりになっていた。こうして人類が初めて体験した、異星人との戦闘は幕を閉じた。

ツイッターでアイディアを見つけて書いた短編です。技術格差が開きすぎていて互角の戦いになってしまう宇宙人と地球人というアイディアは、本来はハードSFに属する切り口だと頭では理解しているのですが、いかんせん学が無くて短編どまりという感じです。ただ、そんな足りない私でも、何とかリアルな戦争を感じてもらえるようにと考えた結果が「証言と見解」というやや、モキュメンタリーじみた手法でした。

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