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この世界  作者: 御影 零
~運命の始まり~

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第19章  今後の行動

 極夜(キョクヤ)と音波(オトハ)は縁(ヨスガ)が2度目の眠りに就くまで、夢魔(ムマ)の事や、夢魔の言い伝えの事などの話は一度もしていなかった。


 縁が眠りに就いてからお互いに気まずく、沈黙が続いていた。そんな中、最初に口を開いたのは音波だった。


「なぁ、極夜。お前は今でも魔羅様の地位に就きたいなどと思っているのか?」


音波は自分の台に座り、手を組み下を向いたまま極夜に聞いた。


「俺は、今はもうよくわからない。」


極夜も自分の台に座り、音波と向き合っていた。


「いいか、私は極夜の事を魔羅様に歓喜を与えることができる悪魔だと思っている。じゃなかったら、魔羅様の命令を無視し、こんなにも好き勝手にしているお前を黙って見ている訳がない。」

「それはそうだけど。俺にはもう何が歓喜で、何が災いなのかもわからないんだ。俺にとっては、俺が魔羅様の地位に就き、悪魔を解放することが歓喜だ。そして今の状態でいることが災いだ。俺はずっと自分の好きに生きたいと思ってたから。」


この言葉を聞き音波は顔を上げ、極夜の目を見つめながら言った。


「それは、私もよくわかっているつもりだ。この前も言ったが、私たち悪魔は極夜のことなど見ていなかった。お前を一人にさせていた。極夜は私たち悪魔の中で唯一魔羅様への忠誠もなく、自分の事だけを考えることができる。しかし、裏を返せば唯一我々悪魔の事も考えられるということだ。だから、お前が悪魔の事を考えてくれるようになれば、きっとそれが歓喜につながると思う。」

「そんなこと言われても、よくわからない。」


音波の言葉に極夜は困惑した。


「お前が言うように、悪魔を解放することが歓喜だとしたら、それは魔羅様にとっての災いになるだろう。そんなことをするかもしれない悪魔をほっとくと思うか?」と音波が言った。

「まぁ、ほっとかないとは思うけど。でも、俺は好きに生きたいんだ。自分の快楽だけを求めて生きたい。それに、人間界でもう自分の力を抑えられない。思い出すだけで興奮し、震えが止まらなくなるんだ。」

「極夜、お前が何をやっても魔羅様が何もしないのは、もしかしたらまだ言い伝えの内容がわからないからなのかもしれない。何が歓喜で、何が災いになるのか、わからないから極夜をほっといているのだとしたら、今お前は魔羅様の命令をきき、魔羅様のお心に沿う行動をしなくてはいけない。よく考えろ。魔羅様には死魔様がいるんだぞ。極夜のことはいつでも消せると思っているかもしれない。今はまだ様子を見ているだけだとしたら、お前は絶対に魔羅様の災いに繋がると思われる事をしてはいけないんだ。もし災いになりうると魔羅様がお考えになれば、すぐにでも死魔様がくるぞ。」


極夜は何も答えなかった。


「いいか。私はお前を死魔様に消されたくはない。言い伝えの何が歓喜で何が災いになるのか、それがわかるまでは大人しくするんだ。信じたくはないが、例え言い伝えが悪魔の解放を歓喜だとしているのだとしても、今はどうすることもできないんだ。今何をどう逆らったって、死魔様に消されてしまうだけだ。」


この時、極夜の中に一つの疑問が湧いていた。言葉にしようか迷ったが思い切って音波に聞いてみた。


「なぁ、音波。お前がそんなに俺のことを気にするのは、俺が魔羅様の歓喜になるかもしれないからか?」


音波は驚いた顔をしたが、すぐに答えた。


「そうか。お前にしたらそう聞こえるのかもしれないな。でも私は魔羅様よりも極夜のことが一番心配だ。お前にしたら、何を今さら言っているんだと思うかもしれない。しかし私がお前を気にしているのは、魔羅様のためではない。極夜自身を心配しているんだ。お前は私の言葉を信用できるか?」


 極夜は、音波の言葉が嬉しかった。魔界で一番話せると思っていた相手が今自分の心配をしてくれている。でも、音波は魔羅に忠誠を誓っている。すべてを信じられなかった。


「音波、俺は魔羅様に忠誠を誓っていないし、命令だって何度も無視している。俺は悪魔にしたら到底理解できない異端の存在だ。でも音波は、魔羅様に忠誠を誓っている。心配しているのも俺のことだけとは思えない。お前はわかっているのか?俺の心配をするということは魔羅様に忠誠を誓っているお前にしたら魔羅様を裏切ることになるんだぞ。」

「そんなことはとうの昔から考えている。でも、極夜がいなくなってしまったらもうこの魔界に私のことを理解してくれる者はいなくなってしまうんだ。私はそのほうが辛い。それに、縁が言うには、極夜は私の友達なんだそうだ。」


音波はすこし恥ずかしそうに言った。


「はっ?友達?音波、お前何を言っている。」


極夜は音波の言っていることがまったくわからなかった。


「なんでも、相手が困っている時に助けてあげたくなるのは友達らしい。私はなんとなくわかる気がするよ。」


そう言われても、極夜は理解できなかった。


「だから、極夜を魔羅様から守るように努めるよ。だから、お前も考えて行動するんだ。何かわかるまでは、魔羅様に忠誠を誓う行動をしろ。」


極夜は少し考えてから答えた。


「わかったよ。とりあえずは、言うことを聞く。俺は自分がよくわからない。何が夢魔の宿命なのかもわからないんだ。だから、とりあえず音波の言うことを聞くよ。でも、何度も言うように俺は自分の力の制御ができないんだ。」

「そうか。それじゃあ、私はできるだけ極夜の側にいるようにしよう。危なくなったら言うからな。」

「あぁ、わかったよ。」


 極夜は友達という言葉の事を考えていた。友達は人間の間にある言葉じゃないか。俺には理解できない。でも、音波と縁が言うのならそうなるのかな。


ここから再び沈黙が続いた。その中極夜が口を開いた。


「なぁ、音波。お前、他の悪魔に魔羅様を侮辱したと言われたままでいいのか?お前は魔羅様に忠誠を誓っているのに。」

「私は魔羅様を侮辱したとは思っていない。極夜が魔羅様に歓喜をもたらす存在だと信じている。だから、皆の前で言ったんだ。だからといって魔羅様のためだからでもないからな。極夜を守るために皆がわかってくれるのが一番いいんだ。」

「そうか。でも、もういい。他の奴らは絶対に音波の言うことは理解できないだろう。また囲まれて責められるだけだ。そんなことを続けていたらお前に死魔が現れるぞ。だから、お前はもう外で余計なことは言うな。」

「ん?そうか?まぁ確かに今騒ぎを大きくしてもしょうがないしな。わかったよ。あと、極夜。お前ももう寝ろ。もう縁に邪魔はさせないから。縁が人間界に行く時には満タンになってないといけないからな。」

「あぁ、わかった。」


 そう言うと極夜は台に横になった。極夜は広場から帰ってきた時、なんで心穏やかに眠りにつけたのか少しわかった気がした。人に自分のことを心配してもらうのはなんて心地いいんだろうと思った。

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