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影
幼い頃、家までの道を母とよく歩いた。
幼稚園が終わると、母が園まで迎えに来てくれた。
小学校に上がってからは、通学路の途中で待っていてくれて、そこから一緒に帰った。
公園で遊ぶのに夢中になって、探しに来てくれたこともあった。
夕方のチャイムを聞きながら、手を繋いで歩いて帰った。
あの頃は、母の方が影が長かった。
私が母の背を越したのは、いつだっただろう。
――真夜中。
警察からの電話で目が覚めた。
今度は、私が迎えに行く番になった。
母の手を取り、影も見えない夜道を歩く。
丸くなった背中。細くなった身体。
「お母さん……」
呼んでみる。
けれど、母はこちらを見ない。
ただまっすぐ、前だけを見ていた。




