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トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル SEASON2~ はためく夏の狭間から  作者: 花田秀彦
第1話

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7/16

第1話ー⑦

「先生、ユニフォームめっちゃ似合いますね。やばいっス!」


「似合うか?着られてる感満載やで。」

 縄手はトレーニングシューズの紐を結びながら、笑顔で近づいてくる久米を見上げる。


「ガチ、かっこいいっす。」

 ニヤつく久米に立ち上がり

「ありがとう!久米主将!明日、試合頑張ろうや!」

 拳を握る。

「もちろんっすよ!勝ちます!」

 縄手の白い眩しさに更に目を細め、久米もガッツポーズを見せる。


「せや!昨日、借りた野球部ノート、ありがとう。かなり参考になった気がする。まだわからん部分はあるけど。時期によっての練習内容とか、選手の特徴とか。ホンマに細かく書いてあるな。感心したで。」

 二人で肩を並べてグラウンドに向かう。


「あれ、俺も書いてる部分もあるんっすけど。ほとんど山本さんが書いてくれたんですよね。」

「へえー」

 驚くように目を開く縄手。

「今日も、対戦相手となるチームのデーターを集めてくれていたみたいで、後でそのノートもらいます。」

「彼女すごいねぇー。」


「はい。俺もビックリです。スコアシート、やけにスラスラ書けるなぁって思ってたんですけど・・・」

「ホンマにええマネージャーやで。」

「俺より詳しいかも知れないっすよ。」

 久米の言葉に縄手は、バックネット近くで練習の用意をしている山本に目を移し、頷いた。



 すべての部員が、目の前で起きていることに、驚愕を隠せていなかった。



 試合前日ということもあり、軽いシートノックで体を慣らそうと、それぞれの守備位置につきボール回しをした後、バッターボックスを振り向いた時にそれは起こった。


 全員の視線の先にいたノッカーは、縄手ではなくマネージャーの山本の姿だった。

 傍にはボールの山に手をかける木之本。


 驚く暇もなく

「はい!サード行きます!」

 山本の張る声と共に、ゴロが久米の前に迫り来るが、あまりの衝撃に体が遅れる。

「はい!そこ!しっかり!」

 木之本がニヤリと笑う。


「はい!もう一回!」

 ギリギリのラインを狙った、本番さながらの打球。

「え!ガチで??」

 なんとかキャッチした球をファーストへ流れるように送球する。

 信じられないと、久米は首を横に振るも、拳をグローブに勢いよく当て気合を入れて、臨戦態勢に入る。


「おっしゃーーーーー―!」

 山本の上手さに興奮した誰かが叫んだ。

「おい!こい!」

 それに釣られ久米の声を張った。


 結局汗だくになってしまった驚愕のシートノックが終わり、水分補給をしっかり取った後、クールダウンを兼ねて、縄手はオリンピック候補生時代に教わった試合前によく行ったワールドグレイテストストレッチを伝えていた。


 息を整え見上げた夏空は、まだ有頂天に勢いよく遥かに広がる青さをたたえ続けていた。


 久米は斜め前でストレッチを教える縄手の横顔を見ながら、初めて一緒にグラウンドを走り、二人息せき切ったまま寝転び見上げた空を思い出していた。


 二人の汗の跡が、仲良く手を繋ぎ、いつまでも一緒に空を見上げているようだったことも。




「じゃあ、明日の打順とスターティングメンバーを発表します。」


 縄手の瞳に映る選手十五名とマネージャーの二名。

 三年の葛本は自宅謹慎中で不参加。二年と一年もそれぞれ一名ずつ参加出来ない選手がいる。


 ゆっくり全員の顔を覚えるように見つめ発表した。


 ―――――――――――

 一番 三年 土橋【つちはし】レフト

 二番 一年 北越智【きたおち】ライト

 三番 三年 久米【くめ】サード

 四番 二年 十市【といち】センター

 五番 三年 曲川【まがりかわ】ピッチャー

 六番 二年 戒外【かいげ】キャッチャー

 七番 二年 八木【やぎ】ショート

 八番 二年 鳥屋【とりや】ファースト

 九番 二年 大垣【大垣】セカンド

 ―――――――――――


「スターティングメンバーは以上!」

「ただし、全員控え選手となるので、いつでも交代できるように心がけておいてください。」

 久米から渡されたノートに書かれていたことを、活舌良く気合が伝わりように大声で伝えるが、これでいいのか不安になり視線を久米に一瞬向ける。

 小さく頷く久米。


 全員が納得するように、お互いの目を見ながら、静かに頷き合っている。


「あと、曲川と北越智をスタメンに入れたから、もうピッチャーの控えが居ない。それに、キャッチャーも葛本がまだ参加できないから戒外、ひとりや。」


「他のポジションの選手にも言えることやけど、ルール上、ほとんど交代は可能やけど、十分に体には気を付けて、思いっきり試合を乗り切ってほしい。」

 全員と目を合わせながら縄手は言葉に思いを乗せる。


「最後に主将!一言。」

 縄手は久米に前に出て来るように手で招く。

 その光景を茶化す者はいない。


 部員を前に、縄手と久米が並び立っている光景に木之本は微笑んだ。


 駆け足で立ち帽子を取る。

「今年は合同チームでなく、大和まほろば高校野球部として、試合に参加できます。」

「ずっと頑張ってきてくれているみんなのおかげです。ここから新しい歴史が始まると感じています。明日は全員で勝利を取りに行きましょう!」

「みんなの力を下さい!」

「お願いします!」

 頭を深く下げた。


「やるぞーーーーぉ!」誰かが叫ぶ。

 続くように雄叫びが一斉に上がる。

「うぉーーー!」

「おおっしゃーーーー!」

「下剋上じゃーーぁ!!」


「野球部は血の気の多い奴多いなあ」と、縄手は笑いながら、ハイタッチを繰り返す選手たちを眺めていた。


 蝉の大歓声をバックに、

 大和まほろば高校野球部の

 青春【BOYS】が

 青夏【HEROES】に

 変わる瞬間だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

本作は『トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル』シリーズとして連載しています。


★感想・評価・ブックマークをいただけると、とても励みになります。


また、本作の世界観をもとにしたAIドラマやイメージソングも制作しています。

ご興味のある方は、タイトル名や作者名で検索してみてください。


それでは、次回もお楽しみいただければ幸いです。

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