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トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル SEASON2~ はためく夏の狭間から  作者: 花田秀彦
第1話

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4/16

第1話ー④

「遅くなってすまん。」

「遅いっすよー。珍しいやんか、遅刻なんか。」

 斎部と縄手はお互いの軽いノリで笑顔になる。


「ちょっとややこしい一件があって。」

 椅子を軽く引き座った斎部のグラスにワインが注がれようとした、

「あ!ごめん!今日はノンアルで。」

 グラスのふちに人差し指と中指を当てながら、顔見知りの店員に謝る。


「おー。さらに珍しい。この後、戻らんとあかんとか?」

 縄手は身を乗り出し、顔を覗き込んだ。


「そーゆう訳やないんだけど。ちょっとなぁー。」

「体調悪いとか?大丈夫?」

「まあー多少は疲れてる。」

 肩の凝りを取るように首を回しながら、運ばれて来たジャスミンティーを手に取り「とりあえずお疲れー。」とグラスを合わせた。


「イスラエルへの赴任の日取りとか決まったとか?」

「うん。今日決まった。あと三か月後には出発やな。」

「そっかーーーー。いよいよかぁー。」

「寂しいなぁー。」

 アミューズを二口で平らげた斎部を、縄手は力なく見つめる。


「フッ、なんだその目。本当にそう思ってるのか?」

 子犬のような瞳で、こちらを見る縄手に愛おしさを感じながらも、意地悪を言いたくなる。

「当たり前やって・・・優耳がいないと心細過ぎて・・・」

「誰が俺の事守ってくれるねん・・・。」

 そう半分冗談を言いながら、オードブルにフォークを刺し口に運ぶ。


「早く自立しろ!」

 微笑みながら斎部は、ジャスミンティーを一口飲んだ。


「二年は本当に長いなぁー。」ビールグラスを持ちながら小さく溜息をつく縄手に

「久米って僕ちゃんがいるやろ。」

 意地悪を続ける。

「は?何を言ってるんやって。」と言いながら、東京で一晩を共に過ごしたことを、思い出していた。

 あの大都会の中で偶然にも彼を見つけ、抱きしめ合ったこと。


「私に話してないことあるやろ。」

 不意の突っ込みに縄手は少し動揺する。

「まあ、いいや。」

 斎部は微笑みながら目を逸らし、置かれたスープに、スプーンの先を沈めた。


 確かに所々話していない部分があることは事実で、何故か言葉にすることをためらってしまっていた。


 スープ皿が下げられ、魚料理がテーブルに並べられる。

「で、どうなんだい、最近の僕ちゃんの様子は。」

「意外と普通に日常を送ってるで。」

「ふつうってなんやねん。」

 あいまいな返事に苦笑いをしながら、フォークを手に取る。


「前みたいによう笑うようになったしな。野球やってる時の・・・」

「あーせや!俺、明日から野球部の監督させられることになったで。」

 思い出したように縄手が目を丸くした。


「ふーん。野球のことわかるん?」

 斎部は魚の白身を口の中へ運ぶ。


「監督さん辞めることになってな。」

「大人がおらんと試合出られへんらしいねん。」

「まあ監督と言うよりは付き添いやな。」

 ガルニチュールの人参ピュレをすくい上げながら、縄手は自分自身で納得するように呟いた。


「僕ちゃんのいる野球部の付き添いねぇー。」

 不敵な笑みを咀嚼で隠しながら、斎部は小骨を避けようとナイフを手にする。


「まあ、順調だったらよかったやん。」

「でも、あいつまたいつ暴走するか、わからんからなぁー。」

 縄手はビールで口の中の魚の味を消した。

「お前が言うな!暴走の原因、全部お前やろ!」

 斎部は手にしていたナイフで縄手を指した。


「おい!やめろって!マジすぎる!」

 口に含んだビールをゴクリと飲んで、両手で遮った。

「本当に二人とも、ネットじゃあ結構有名みたいやから、行動に気をつけや。」

「ひょっとしたら、今も誰かに撮られてるかもしれんで。」


 そんなこと考えたことなかったと、縄手は驚き顔で辺りを見渡す。

「キョロキョロすんなって・・・。」

 斎部は呆れ顔でナイフを置き、手を額に当てたままガックリ俯いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

本作は『トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル』シリーズとして連載しています。


★感想・評価・ブックマークをいただけると、とても励みになります。


また、本作の世界観をもとにしたAIドラマやイメージソングも制作しています。

ご興味のある方は、タイトル名や作者名で検索してみてください。


それでは、次回もお楽しみいただければ幸いです。

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