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トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル SEASON2~ はためく夏の狭間から  作者: 花田秀彦
第2話

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第2話ー④

 一瞬にして、月が色を変え、大気がざわついた。


「よっちゃん‼」

「わかってる‼」

 北越智の掛け声と共に急いでヘルメットをかぶりバイクにまたがる。


「ここから南西!すぐそばや!」

「間に合え‼」

 北越智を後部シートに乗せた宇治はスロットルを回した。


ーーーーーーーーーーー


 進もうとした自転車の数センチ先を、慌てて右折してきた車がかすめる。

「危ないんじゃ!ボケが‼」

 思わず戒外の素の声が叫ぶ。

「なんやねん!」

 謝りもせずに走り去る車のテールランプを睨みつけながら、戒外は自転車を動かした。


ーーーーーーーーーーー


街灯に照らされた左側の運転座席から、見知らない中年男性が笑顔で顔をのぞかせた。

「こんばんは。あきやさんと、かずきくんですよね。」

 

 いきなり名前で呼んでくる人物に、久米は頭の中の記憶をフル回転させる。

「なんですか?」

 後ずさりしながら、縄手は少し震えつつも強い言葉を吐く。


 道の真ん中でギアをパーキングにいれたその人は、窓から身を乗り出した。

「やっぱりかっこいい。」

 ふたりを交互に見ながら更に口角が上がる。


 ・・・・・・・・・・

 久米は縄手に視線を合わせ、「誰やろ、わからんねんけど」と首を横に振る。


「わたしもゲイでしてね。お二人を応援したいと思いまして。」

「かずきくんがぜんぜん返事を返してくれないから、調べたら大和まほろば高校ってわかったんで、ドライブがてらに来たら、いきなりお二人に会えるなんて」

 笑顔を崩さずに、こちらを凝視したまま言葉を並べる。


 驚いた縄手は久米に眉をひそめる。

「知らん、知らん!」と久米は更に首を振る。


「でも以前からすごくかっこいいお二人だなと思ってたんですよ。」

「実はわたしねぇ、会社をいろいろやってまして、お金はあるんですよ。」

「スポーツジムもやってるんですよ。」

「今流行りだし、お二人とも好きでしょ?」

 ドアから出した手を、ふたりに向ける。


「あの、すいません。」

 縄手が一旦会話を止めるように手のひらを向ける。

「話がいきなりすぎて、まったく理解できないんですけど。」

 少し落ち着いた縄手は毅然とした態度をとった。

 久米の深く息を吐く音が聞こえる。


「わたしがお二人のスポンサーになるんですよ。」

「・・・・いや、それは」

「今やこっちの業界ではお二人は話題で持ち切りなんで、あきやくんは教員でかずきくんは未成年やけど、みんな目をつけてますよ。」

 慌てて断る縄手を無視して、言葉が投げつけられる。


「ゲイは相手の都合お構いなしに、欲望をぶつけてくる人多いからねぇ。」

「かずきくんはもう感じてると思いますよ。」

「メッセージ、凄い数来てるでしょ?」

「だから、わたしが同じゲイのお二人を守って、幸せにしますよ。」

 その人が笑顔で大きく頷く。


「いや。俺は・・」

 その言葉を否定しようと、縄手は声にするが、途中で止めてしまった。


「これ、わたしの連絡先です。」

 その男はスマホを差し出し、読み取りを催促するようにORコードを表示させた。

 早く交換しようと、何度もスマホを揺らしてアピールする。


 そんな状況にそれまで何も言わなかった久米が突然口を開いた。

「大丈夫です。俺たちもう幸せなんで。ありがとうございます。」

 縄手をよそに一歩前へ踏み出す。


 少し驚いた顔のその男は

「とりあえず、交換しようよ。」

 と前に出た久米を見上げる。

「結構です。お気遣いありがとうございます。」

 頭を少し下げる。

「まあ、とりあえず。」

 スマホを更に突き出す。

「いや、結構です。」

 久米は浅い呼吸で言葉を返す。


・・・・・・・・・・・・・

 久米の毅然とした態度に男は言葉の行き場を失ってしまった。

今まで聞こえなかった虫たちの声が戻ってくる。


「じゃあ・・・・じゃあ、一緒に記念写真でも・・・。」

「ごめんなさい。」

 久米は男の言葉が終わる前に、頭を下げた。


「お二人のツーショットでも。」

 追いすがる言葉に、縄手が動いた。

「いい加減にしてください。警察呼びますよ。」

 口調が強くなる。


 その言葉に舌打ちと共に視線が変わり、男の表情が縄手を睨むようになった。


「わたしのなにが気に入らないんだ!」

声が荒がる。

 ふたりはそんな相手の態度に揺るがすに向きあう。


 道路わきの林の中から一羽の鳥の甲高い声が鳴いた。


―――不意に後方から車のヘッドライトが近づいてくる。


「早よ行けや」小声で言う久米を制止するように、縄手は肘を持ち自分へ引き寄せた。


ヘッドライトが近距離まで迫った状態に、男は

「考えといてや。また来るわ。」

 と吐き捨てるように言い残し、車を進ませた。


 二台の車のテールランプが坂道を下って行く様子を、二人は呆然と眺めていた。



「うわぁーーーーーー。ガチかよ。怖いって・・・」

 赤い光が見えなくなったのと同時に、力が抜けた久米がその場にしゃがみ込んでしまった。

 縄手もこれでもかと大きく溜息をつき、自分たちを取り囲む世界の変化に焦りを感じ始めていた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

本作は『トゥルーカラーズ=僕らの家族スタイル』シリーズとして連載しています。


★感想・評価・ブックマークをいただけると、とても励みになります。


また、本作の世界観をもとにしたAIドラマやイメージソングも制作しています。

ご興味のある方は、タイトル名や作者名で検索してみてください。


それでは、次回もお楽しみいただければ幸いです。

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