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死んでも盗み続ける俺たち  作者: 名無之権兵衛


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第5話

 いや、変なことを考えるのはよそう。


 俺はかぶりを振ると、再びプレハブ小屋の中へ入った。


 シンクの隣に置かれた冷蔵庫を開ける。中にはカップラーメンとミネラルウォーター、パスタとトマト缶、塩胡椒が入っていた。


「ったく、カップ麺くらい外に置いとけよ」


 冷蔵庫には食料が随時補充されている。おそらく俺たちが任務に出ている間に何者かが入れているのだろう。補充してる人がどんな人なのか知る術はない。


「あっ、夏目くんも夕飯?」


 プレハブにちほさんが入ってきた。夕日に照らされた彼女は、体のラインに沿って陰影がはっきりと描かれていて、彼女のダイナマイトボディをより鮮明に映し出していた。


 脳裏にあるシーンがよぎる。




 ————()()()()()()




 ちほさんは関西で舞台俳優をやっているという。


 けど、それは嘘だ。確信がある。


 何度も画面越しで見た。有吉弘行より見てきた。


 両手に収まりそうにないほど大きな胸、それを強調するように引き締まった腰、ハリのある臀部、なにより二の腕と口元にあるほくろに琥珀色の瞳。


 彼女は加藤フユリ——A()V()()()()


 紗倉まなや三上悠亜ほど有名ではないが、FANZAのランキングに載ることもある有名女優だ。


 そしてなにを隠そう(周囲の人には一度も明言したことはないが)、俺はフユリさんの大ファンだ。育ての叔父叔母には内緒で彼女のDVDを何枚も持っている。大学に入ったらバイトして電子とディスク両方買って、オフイベにも行くんだと決めている。


 だから、まさかこんなところで出会えるなんて————


「大丈夫、夏目くん?」

「あっ、はい。大丈夫です」


「夕飯つくるんでしょ?」

「はい。ちほさんも食べますか?」


「なら、お願いしようかしら」

「カップ麺でいいですか?」


「いいよ。じゃ、作ってもらってる間、シャワー浴びてくるね」

「……シャ、シャワー!?」


 ちほさんが眉根をあげてこちらを見る。


「別に驚くことないでしょう」

「そ、そうですよね……ハハ」


 苦笑いを浮かべつつ、頭の中では彼女の裸体が思い浮かんでいた。初めて彼女を見た時。浜辺で全裸になっている彼女の姿が。


「じゃあ、よろしく〜」


 彼女は俺の横を通り過ぎると(華やかで甘い香りが鼻腔をくすぐる)、ユニットバスへと消えていった。


「あっ、のぞいたらダメだからね」


 唐突に扉から顔だけ出す、ちほさん。


「しませんよ!」


 なんて言い返すが、鼓動はドクドクしっぱなしだ。


 扉が閉まる。シャワーの音とともにミセスのライラックが聞こえてきた。大森元貴ほど綺麗な高音は出ていない。でも俺のオールタイムベストでは本家を差し置いてぶっちぎりの一位だった。


 俺はお湯を沸かしている間、ユニットバスの扉を凝視した。


 もしここで男子部員に扮した男優みたいに入ったら、陸上部員に扮した彼女は受け入れてくれるだろうか……。困惑する彼女をよそに口づけして胸に手を伸ばして、そして————


 ……、…………。


 やめよう。今のはライン越えだ。


 ヤカンの水がボコッと音を立てた。




   * * *




 夜6時に布団に入ったものの、なかなか寝付けない。


 本当なら今頃、部活が終わって友達とファミレスで「果てしなきスカーレット」の批評や、好きなジェームズ・キャメロン作品について語り合っていたはずだ。こんな時間に寝なきゃいけないなんて、考えたこともなかった。


 映研のやつら元気にしてるかなぁ。


 俺がいなくなってどう思ってるんだろう。心配してくれてるのかな。


 それとも〝運営〟が偽装工作でもしてるのだろうか。メン・イン・ブラックみたいに謎のライトを浴びせたり、俺そっくりの分身を用意してるかもしれない。ほら、なんだっけ、ドラえもんの秘密道具の————


「ちょっと……やめて!」


 ちほさんの声がして飛び上がった。


 あたりはすっかり暗くなっていてプレハブ小屋の明かりもついていない。七畳半の床には布団が敷き詰められていて、増倉さんと文人は寝息を立てていた。


 一方ちほさん——小屋の一番隅で寝ている彼女の布団には、彼女以外に二人の男がいた。


 寺坂はちほさんの上に馬乗りになっている。彼女の腰を股関節ではさみ、細腕をクロスさせて床に押さえつけていた。


 骨川は動けなくなったちほさんの太ももに指を入れようとしていた。しかし、彼女は足をガッチリと閉じていて、うまく開くことができていない。


「……なにやってんだよ、お前ら!」


 声が出た。3人ともこちらをみる。


「おう、夏目」寺坂は笑みを浮かべた。心なしか、頬が紅潮してるように見える。

「ちょうどいいところに来たな。お前も手伝えよ」


「は?」


 ちほさんのことを見た。彼女は涙目で首を振った。


「するわけないだろ、そんなこと!」


 俺は立ち上がると駆け出した。

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