第4話
「それが本当ならね」
骨川ラファウがダミ声を上げた。新潟のカトリック系高校に通うポーランドとのハーフは青い瞳を増倉さんに向けていた。
「なにが言いたい?」増倉さんが骨川の方に向き直る。
「さっきガキンチョも言ってたでしょ」
「誰がガキンチョだ〜」
文人の抗議を無視して骨川は続ける。
「この落書きが偽物だったら、ボクらは骨折り損のくたびれ儲けになる」
「そうだ。その可能性は考えている。だからこそ、今夜のうちに決着をつけたい」
増倉さんはもう一度、電気屋の場所を叩いた。
「3日前に俺が、2日前からは俺と夏目で挑んでいたが、問題はここの店主だ。
PCを手にいれるためには店舗事務所の金庫にあるカードキーを使って店のセキュリティを解除する必要がある。金庫の暗証番号は8桁。これを店主がいない隙を見計らって瞬時に解錠するのは今の俺たちでは不可能だ。この中で一番鍵開けが得意な夏目でさえ時間がかかる」
俺は金物をいじる手を止めると黙って頷いた。
「だから解錠して盗み出すまでの時間、店主を取り押さえる必要がある。だが、一人では限界だ。どうしてももう一人、もしくは二人欲しい」
「窓割って盗りゃァいいンじゃねぇの?」
寺坂ががなる。
増倉さんは鋭い視線を向けた。
「そしたら警報が作動して大勢の警察官がやってくるぞ。そこを切り抜けられるのか? 初日のときみたいに」
南千住町の住人は普通の日本人じゃない。
大抵の人は、泥棒と鉢合わせたら逃げて安全を確保しようとする。
しかし、南千住の住人はアメリカ人みたいに「自分の身は自分で守る」という価値観を持った人が何人かいる。そういった人は、敷地に入っただけでバッドや刃物を持って襲いかかってくる。
前回の軽井沢村とは大違いだ。
あそこの住人は家の中で鉢合わせしても、まるで見えていないかのようで、体を触らなければバレることはなかった。
おかげで、俺たちはなに不自由なくノルマを達成することができた。寺坂と骨川に至っては最後の方はわざと窓を壊したりして盗みを楽しんでいるようだった。
けど、舞台が南千住になって認識を改めざるをえなかった。
俺たちは狩る側ではなく、狩られる側なのだと。
南千住での初日。俺たちはあっという間に見つかって、そして殺された。住人は足音ひとつ立てただけでも警戒し、警察に通報する。中にはバッドやナイフを持って自らパトロールし出す者もいた。
以降、俺たちはイーサン・ハントみたいにスニーキングを徹底するようになった。
寺坂と骨川を除いて。
彼らはまだ学習していない。窓ガラスを割ってすぐに警察を呼ばれ、殺されている。
「クソッ」
寺坂は吐き捨てるようにいうと、そっぽを向いた。
「お前には期待してるんだぞ、寺坂。今夜はみんなであの店主を取り押さえる。俺と寺坂、骨川で店主を押さえつけて、夏目と下平、文人で金庫破りを行う。万が一俺たちが負けたら下平と文人で時間を稼いでくれ。
最後の砦は夏目、お前だ。任せたぞ」
手元でいじくってた二つの金物が、カチリと音を立ててハマった。
「はい。今度は失敗しません」
* * *
〝強盗〟は午前0時から6時までに行われる。
それ以外の時間は自由時間だ。寝てもいいし、飯を食ってもいいし、盗みのスキルを磨いてもいい。
ただ、任務中に死亡すると、目が覚めるのは翌日の12時になる。なんで死んだのに生き返るのかは意味がわからない。〝掲示板〟でも一番の議論のネタになっている。
会議が終わって午後3時すぎ。俺はシャワーを浴びて早めの夕食を取ることにした。
タオルを濡れた髪の毛に巻き付けながら、3点ユニットバスの洗面台で日課となった洗濯を行う。
衣類は2種類が2組ずつ、合計4着支給される。1つはここに連れ去られる際に着ていた学生服。俺は映画同好会に所属していて、その友人と放課後サイゼリヤでだべったあと、家に帰ろうとして何者かに拉致された。そのときに着ていた服だ。
もうひとつは〝運営〟から支給された黒のパーカーとチノパン。闇に溶け込むこの服装はまさに泥棒向けだ。
この2種類の服をどう着るかは人それぞれだ。
寺坂みたいに支給品をずっと着ている人もいれば、骨川やちほさん、文人のように自分の服を着ている人、増倉さんのように着ていた服と黒のパーカーを組み合わせている人もいる。
俺はというとどっちつかずで、その日によって学生服を着る時もあれば支給服を着るときもある。我ながら統一感がないなと思いつつ、この鬱屈した日常でコード選びが唯一の楽しみなところもある。
今日は学生服に黒のパーカーにした。
昨日着ていた服をプレハブ小屋の外に設置された洗濯ロープに干す。
ふと、ロープの先端に目が行った。ロープの先端はシーツのカーテンに遮られていて見ることはできない。
あそこに、ちほさんの下着が
(浜辺での青姦)




