Change The World
「只今後帰宅ご機嫌うるわしゅう〜」
Unreality社の自室に戻りゼオはゾディの頭をポンと叩いた。
「キノコ菌あげる」
「…本当に帰ってきた…」
「あったりめぇだ」
ゼオがゾディの頭を再びポンポンと叩き、ソファーにふんぞり返る。
「だだいま」
ゼファーがゾディに言うとゾディは顔を逸らした。
「うん…」
「しっかしおっさんのやろーどこ行きやがったんだ?」
「確かにニコルズさん居なかったね、火事でも見に行ったんじゃない?」
「出かけるって言ってた」
ゾディが2人に言った。
「出かけたぁ?」
「世界がどうとか…意味わかんないけど」
ゾディはソファーに座り丸くなる。
「ふーん、テレビなんかやってねぇ?ヤラセ満載低俗なバラエティ番組とか、つけて」
ゼファーがテレビを付けた。
ニュースに切り替えると、火事の話でニュースは騒いでいる。
驚く事にアナウンサーが度々Slaughterと言っている。
「すごいね…あの屋敷が燃えちゃったんだ…」
どこか寂しそうにゾディが言う。
「なーんかめっさ犯罪者だな俺達」
「仕方ないさ」
『南地区で起こった火災…有名なベル家が出火原…』
プツン
いきなり画面が暗くなった。
「あれ?とうとうイカレたかこのオンボロテレビ!世界の東芝とは言ったもんだなぁ!」
バンッバンッ
「必殺昭和の直し方」
ゼファーがテレビの横を軽く叩く。
パッ
「あ、映った」
「見たか!これがDarknessの力だ!」
「ん…?」
テレビ画面には
Laughter 全局国内放送
の文字が浮かんでいる。
「んだ?」
画面が変わり、大使館が移る。
台があり、その前に大勢の国民がガヤガヤ騒いでいる。
そして横から背広姿の偉そうな男が姿を表す。
カメラのフラッシュで画面がチラつく。
台に立った男は一礼。
その顔はどこか焦っているような顔をしていた。
「このいかにも裏では乱行パーティしてそうなおっさんがなんか発表でもあんのか?」
「世界がかわるってやつじゃない?」
『我が国…Laughterは…』
「ふんふん」
ゼファーが腕を組み画面に食らいつく。
『Slaughterの存在をここに認める』
『緊急首脳会議において、ここにSlaughterを正義と認める事を可決しました』
開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
ゼファー ゼオ ゾディ
全員目を点にして口を開けている。
『ふざけるなぁ!そんなのいつ決まった!』
『Slaughterは悪だ!』
騒ぐ民衆。
『…Slaughterの力で犯罪件数は減った…決して悪い方向に向かってる訳ではない…』
『国民の声も考えろ!認めるものか!』
余計に騒ぐ民衆。
賛成など誰もいないだろう。
『バンッ』
男が台を叩く。
『Slaughterは常識とは桁外れの力を持っている!それに値する組織など存在しない!』
『そんな奴らを常識として考えるな!』
『では国民諸君等は!Slaughterの拠点であるUnreality社に直々に向かい反乱でも起こせるのかね!?』
突然黙る民衆。
『そんな事をしたら身の保証はない…彼らは干渉しない限り…無害だ…』
『……ふざけるな!行ってやる!国民全員でSlaughterに反乱し、奴らの存在を否定する!』
『わぁぁぁぁ!』
歓喜、拍手喝采。
『無意味だ…』
そう嘆くとボディーガードを横に連れ、男はその場を去った。
『逃げるのか!?それでも国の代表かよ!』
『行ってやろうぜ!皆でかかればSlaughterなんて怖くねぇ!』
『うぉぉぉぉ!』
「…お兄さん達…本当…凄い…」
ゾディが目を点にさせたまま語りかける。
「みたかよ…この男…今ズラがズレたぞ…」
「そっちかよ!」
流石にゼオにツッコミをいれる。
「世界が変わった…俺達…世界変えたんだぞ…!」
「よぉぉし!Slaughter最強が証明されたぞーー!!」
「でもさお兄さん達…」
盛り上がっていたところゾディが割って出る。
「皆来るよ、ここに」
ゼファーとゼオは顔を見やる。
「…に、2~3人殺りゃあ黙るよな…?」
「多分…」
テレビが切り替わり、ニュースが再び流れるが、さっきの放送の繰り返しだ。
ついに世界が動いた。
俺達が世界を変えてしまったんだ。
プルルルルル
社内は電話電話の殺到。
入り口もシャッターを閉め、反乱軍が侵入しないようにしている。
「えぇ〜い働け社畜ども〜」
「こんな騒ぎなのにニコルズさんはどこ行ってるんだろ、電話対応してる社員がかわいそうじゃないか」
「シャッター閉めたから入れなくなってんじゃね」
ゼオがケラケラと笑う。
「どうする?」
ゼファーがゼオに訊く。
「うーん…屋上行ってみねぇ?」
2人は屋上に向かった。
そして外を見るとUnreality社の正面玄関からずっと奥、視界にも入りきれないほど人が殺到していた。
おまけに五月蝿い。
「お盆と年末にビッグサイトはこうなるよな」
「そんなレベルじゃないだろ…」
「こっから小便したらどうなるかな」
ゼオがベルトをガチャガチャとし始めた。
「ばかばかばかばか!」
「うわぁぁぁ!膀胱炎になるーー!!」
その肩を引っ張り室内に連れ込んだ。
「とりあえず…なんも動きがないな…」
数時間経つが民衆の抗議はそのままだが変わった動きは無く、電話も少なくなっている。
「ほっとく?」
「それが一番だろうけど…社員さんが…」
「じゃあどうするよ?黙らせに行くか?」
「うーん…ニコルズさんが帰ってきたら相談しよう」
ゼファーはシャワーを浴びに行った。
ソファーに座ったゼオはボーっとニュースを眺める。
「ゾディお前はどうすんの?」
未だにソファーに丸まっているゾディにゼオは話かけた。
「知らないよ…お兄さん達が連れてきたんじゃない…家もないし」
「うーん…そうだな…俺と違って死ぬわけだからSlaughterに入れてはやれねぇし…」
「いいよ別に心配しなくても…」
「ここで働くか?社畜人生の始まり始まり〜」
「別に…」
ふてくされるのかよくわからない顔でゾディは顔を下げた。
この空気…嫌いだ…
「あんまいじめんなよー」
ゼファーが頭をタオルで拭きながらシャワーから帰ってきた。
「いじめてねーし!仕事を紹介しようとしてんだ、超絶ホワイト企業」
「僕部屋にもどるね…」
ゾディが立ち上がり部屋から出て行った。
「なにしたのゼオ?」
「いや…この先あいつどうしようかと」
「なんだ…案外優しいんだな」
「ちげーよ…責任だよ責任」
「そうか責任か…ははっ!ゼオに1番似合わない言葉だ」
ゼファーは寝間着に着替えた。
「なんか今日疲れまくり、先寝るね」
ゼファーは髪を乾かすと寝室に向かってった。
「おやすみぐっなぁーい!夢精には気をつけろよー」
ゼオもシャワーを浴びに行き、先に寝たゼファーに続き眠りに就いた。
The Slaughter darkness making what still starves for blood
Murder him, and tear a person…
くそ…まただ…
しかしいつもの夢と違い、人々が俺を殴っている。
そして血まみれの自分が目の前に現れた。
Project darknesssssssssss!!
「うわぁ!」
飛び起きようとした。
ビュン
目の前にナイフの先があった。
「!!」
反射的に避けるが耳をほんの少し掠める。
痛い!?
ゼファーは攻撃してきた何かに向かって毛布を投げた。
「んお?」
毛布を退かされゼオが起きる。
「ゼオ!気をつけろ!」
「なんだよめっちゃいい夢見てたのに」
ベッドの上で黒煙ブレードを構えるゼファーにゼオは何が起きたか解らない顔でゼファーが構えた先を見る。
「何あれ、くっそベターなおばけじゃねー」
ゼオはケタケタと笑う。
その人物は毛布をどかして、手を突き出した。その手には水晶が握られていた。
暗闇に目が慣れてきて、その人物の顔を見る。
「……ニコルズさん…?」
いつもの弱々しいへたれそうな顔のニコルズが鋭い目つきで2人を睨んでいた。
「惜しいなぁ…」
ニコルズはナイフに付いた血を眺めた。
「なぜ…やっぱりあなただったんですね…」
「おいおっさん…何してんだよ…!」
「ここで君達を殺せばこの世界は私のだろう?」
「…なに言ってんだよ…?」
「サイコパス共はいらなかったかな…」
ゼファーがニコルズに黒煙ブレードを突きつける。
「FEAR…」
「そうだよ、私はUnreality社の上層部でありFEARのトップさ」
「てめぇぇぇ!」
ゼオがニコルズに殴りかかる。
ブンッ
ニコルズは軽々と避けゼオの腹に膝蹴りを食らわせた。
「がっはっ!」
そしてゼオの脳天目掛けナイフを振り下ろす。
ガァン
寸ででゼファーが銃でナイフを撃ち落とす。
「ちぃ…」
パララララララララララ
そしてニコルズの腹部にマガジンが空になるまで撃ち続けた。
カラカラカラカラカラカラ
ニコルズの白衣に穴は開けど、ニコルズはニヤついたまま後ろに下がって言った。
「流石ルーカの合金だ…ま、裏切ったあいつを殺しておくべきだったな」
そしてニコルズは懐から銃を取り出した。
ゼオが取り乱して飛び出した日に渡した銃だ…しまった…。
パララララララララララ
ニコルズがゼファーに向かって銃を放つ。
ギリギリでゼオがゼファーに飛びかかり、ベッドの端に突き飛ばして隠れた。
「助かった!」
「おう!おいごらニコルズ!わかってんだろうなぁ!?てめぇただじゃおかねぇぞ!」
「まぁそうだね、君達に殺される道理はいくつもあるからね」
ニコルズはそのまま出口まで下がり銃を捨てた。
「でもまだ死ねなくてね」
ダッ
ニコルズはそのまま走り去った。
「待ててめぇ!」
「追うぞゼオ!」
2人も続いて部屋を出る。
しかしゾディの部屋が開いていて、血の足跡があった。
2人は足を止めた。
「ゾディ…?」
「おい…う…そだろ…」
2人の目の前には着ていたYシャツが大きく裂け、腹部が血まみれで目と口を半開きにさせ息耐えているゾディがいた。
ナイフで腹をメッタ刺し。
それに裸にされ、血と白い体液に塗れていた。
「なんで…なんでなんで…!?」
ゼファーは髪をぐしゃぐしゃと握った。
「くっっっそぉぉぉぉぉ!ニコルズの野郎!ぜってぇぶっ殺す!!」
ドォン
ゼオは壁を殴り、大きく凹ます。
「ああくそ…くそ…ごめんなゾディ…」
ゼファーがゾディの遺体に毛布をかけ、開いた目を閉じさせた。
ドォン
「ゼオ…」
ドォン ドォン ドォン
「ゼオ!」
壁を殴り続けたゼオが睨む。
「追うぞ…!」
ゼオは何も言わず、一目散に走り出した。
ゼファーはゾディに別れを告げ後を追った。
「エレベーターが上に向かってる!屋上か?」
2人は階段で屋上まで駆け上がる。
一段抜かし?
一歩で踊場に着く勢いだ。
ガシャァン
屋上に着き、ゼオが鉄のドアを蹴り破る。
パタタタタタタタタ
そこにはヘリコプターがあり、今にも飛び去る。
「ニコルズゥゥゥ!!」
ゼオが叫ぶとニコルズがこちらに気づく。
「やぁ以外と早かったんだね」
「どうしてゾディを殺した!!!」
「ああ…あれか、結構良い声で鳴いてたんだけど五月蠅くてねぇ、君達が起きないようにさ、ほら?死とセックスは同じだと聞くし」
「なぜ…!なぜ犯してまで!」
ゼファーも叫ぶ。
「ははっ!ただただ鬱憤が貯まってたんだよ、ゼオ君、君のせいでね」
「んなん知るか!ボケぇ!!」
「ははっ…いやいやあのガキも良かったんじゃないか、よがってたし愛する兄弟の元へ行けたし」
「あぁぁぁぁぁ!」
耐えきれなくなったゼオが両手に銃を出現させた。
「おっと、出せ」
パララララララララララ
カカカカカカカカカン
乱射するが全く歯が立たない。
そのままヘリコプターは飛び去って行った。
「あぁぁぁぁ!」
ダッ
「ゼオ!」
ゼオは飛んだヘリコプターに向かって走ったが、下には民衆。
落ちてしまえば民衆の餌食。
もし水晶を持ったFEARの残党がいれば死んでしまう。
ゼファーは怒り狂うゼオを抑えつけた。
「離せゼファー!あいつ殺す!!」
「落ち着け!死ぬぞ!」
「逃がすのかよ!?」
「そうは言ってない!」
ゼオはゼファーの腕を払った。
「じゃあどうすんだよ!」
「奴の目的は俺達だ…!必ず次がある!」
「今すぐにでもぶっ殺してやりてぇのに…!なんで…!…なんでだよぉ……」
ゼオはついには泣き出してしまう始末。
無理もない、俺だって今すぐにでも殺してやりたい。
しかしゼオの命の方が大事に決まっている。
「一旦戻ろう…オフィスを探せばどこに向かったのか分かるかもしれない」
ゼファーはゼオの肩に手をやり、社内に戻って行った。
よく見ると社内は地獄絵図だった。
社員全員が 物 と化していた。
結構仲が良かった社員のお兄さん。
首から下の身体はどこに行ったの?
面倒見が良かったお姉さん。
ゾディと同じ事になってるよ?
そして2人はニコルズのオフィスに着く。
ゼオは泣き止んだが無口になってしまった。
何かないものか…
「そうかパソコン」
パソコンを起動させ、社員パスを拾ったカードから読み取った。
「くそ…全部消されてる」
ガシャン
ゼファーはパソコンを机から払い落とした。
「無線でルーカさんに連絡取れるかな」
確かこれを…
周波数142.5…だったっけ?
ピリリッピリリッピリリッピリリッ
ブツン ザー
「くそ…Черт возьми…」
何もかも思い通りにならない。
イラつきが増える一方だ。
ドンッ
机を殴って折った。
ビィィィィィィッビィィィィィィッ
「?」
いきなり音を立ててボタンが点滅した。
よく解らないがボタンを押してみる。
すると巨大なモニターが起動し、ニコルズの姿が移し出された。
「やあ君達やはりそこに居たね」
「ニコルズゥ!!」
その声に反応したゼオが顔を上げた。
「てめぇ!どこ居やがる!」
「はは、そう焦るな、逃げはしないさ」
「殺す!てめぇ絶対殺す!」
「ふふ…君達、これ、何かわかる?」
ニコルズが端に移動すると、その後ろにはミサイルのような物があった。
「…ミサイル…!?」
「御名答ゼファー君、そうミサイル、でも安心してくれていいよこのミサイルは君達の上空を飛んで越えていく」
「上空…?」
「ある薬を撒き散らしながらね…」
「薬?」
「ルーカや鎌鼬、その他のFEARに打ったサイコウイルス通称Sだ」
「どうする気だよ!!」
「しかも中にはナノ状になった水晶が入っている。小さくし過ぎて威力は全然ないけどこれがどうなるかわかる?」
Unreality社の上空を薬を撒き散らしながら通過する…
下には民衆…
「…全員…まさか…」
「全員がサイコパスと化す、全員が虐殺、SlaughterのSでもあるね」
「お前…俺たちが目的なら周り巻き込むんじゃねぇよ!!」
「見せてよ、最後に、Slaughterを…」
「ニコルズ…あなたは一番のサイコパスだ…絶対この世に居てはいけない」
「明日の12時、ミサイルを撃つ」
「私は北地区にある一番高いタワーにいる、そして傷を負って来た君達を」
「ニコルズ、貴様を絶対」
「殺す!」
2人は遺体達を屋上に全て移動させていた。
せめてもの報いとして弔う事にしたのだ。
遺体を覆う炎がパチパチと2人を照らす。
ゾディの遺体だけはまだ火葬していない。
ゼファーがその頭をゆっくり撫でていた。
「兄弟のとこにいけたかな…」
ゼオは座りながら炎をジッと見つめていた。
「ゼファー」
「ん?」
「何が正しいんだろうな」
「うーん…きっと何もかも間違っている、だけどみんな正しいと思ってる、かな」
「そっか…唯一正しくないと言えばこの街自体だ」
「ああ、この街は何もかも間違ってる」
「俺らも間違ってんのかな」
「間違ってるよ、だけど正しい、正義だ」
「…自分勝手だなぁ俺ら」
「何言ってんのらしくない」
ゼファーはゼオの隣に座る。
「俺らが始めた戦でしょ、俺らでケリをつけなきゃ」
「ははっ、なぁーんか聞いた事あるセリフだなぁ」
「クサかったかなぁ」
「かなりクセーよ、前のゼファーじゃ思いもしねー」
ゼファーとゼオはハハッと笑う。
「なぁゼファー」
「なーに」
「俺ら出会った場所がここじゃなくてもダチになれたかな?」
「ロシアと日本は遠いよ、それに会ったとしても性格がまるで違うからダチにはなれないかなぁ」
「なーんだよ、つめてーこと言うなよ」
「1つ言える事は、今の俺らは最高の相棒だろ?」
「ふっ…そうだなぁ」
「さて」
ゼファーは立ち上がるとゾディの遺体の元へゆく。
そして抱き抱えた。
「そろそろお別れだ」
「おいゾディ!」
ゼオが大声をだす。
「俺らがやってやる!全てを終わらせてやる!」
ゼオが銃を出現させる。
パララララララ
空に向け放った。
ゼファーはそのままゾディを炎へくべた。
2人は大きく燃え盛る炎を見つめ決心したのだ。




