Psycho Case7:LOLITA DOLL
カチャッ
扉を開けると暗い廊下に出た。
ろうそくが数本 灯されている。
「はっはっはぁ ここには999体の亡霊達が」
「安全バーがないよ」
「安全とは程遠いからなぁ」
そして奥に隙間から光が漏れた部屋がある。
オルゴールの音も聞こえてきた。
「…黒の瞳…!?」
「なぁに?ここでなんかの伏線回収くる?雑過ぎんだろ!」
「なんでこんなとこで…」
奥に進み、部屋の扉を開けた。
「人形…」
部屋は人形とろうそくにまみれていた。
不気味な部屋だ…。
部屋を見ていたゼオが何かに気がついた。
「ゼファー…あれってラブドールってやつ?他のよりデカくね」
見ると確かに他の人形より大きい。
ゼファーとゼオはそのまま怪しんだ目で睨んだ。
パチッ
「!!」
瞬きをした。
久しぶりに恐怖心がこみ上げてくる。
「あーあ…せっかく楽しんでたのに…」
人形の口が開き、言葉を発した。
カチャ
2人は高周波ブレードを構える。
「Slaughter…初めまして…お会いできて光栄だわ」
「挨拶とは随分余裕だな」
ゼオが人形に話しかけた。
「へぇ…綺麗な子達なのね…お人形にならないかしら?」
「まじかよ初じゃね、ラブドールの勧誘とか」
人形が立ち上がり、歩き始めた。
いやいや、あれは人形のような人間の少女だ。
「これみて?あなた達に殺されちゃったから人形にしたの」
少女は椅子に座らされてたエドの遺体の顔を指でなぞった。
「…イカレてるのが来たな…」
少女はゼファーを見て何かに気がついた。
「あら?あなた」
ゼファーは少女を睨んだ。
「Интересно, если русский народ?」
「!?」
少女がロシア語を喋った。
ゼファーはそのまま睨みつけ
「Да…」
と応えた。
ゼオはわけが解らない顔でゼファーと少女を交互に見た。
「ここに来て同胞かよまぁじ!?」
「ああ多分…」
少女が微笑んだ。
「立ち話もなんでしょ…早くお人形になってずぅーっとお喋りしましょ?」
そしてエドの遺体の口に手を突っ込んだ。
ブヂブヂブヂィ
中から有り得ないくらい巨大で長い、待ち針が出てきた。
「おいおい…こういうホラー映画見たことあるぞ…」
待ち針には透明の玉がついている。
ビュンビュンビュン
少女は待ち針を華麗にクルクルと回して、フィッシングをするように構えた。
「Darknessが意味ねぇって事は最初から高周波できるな…」
バチバチバチバチィ
2人は高周波ブレードにDarknessを送り、高周波を発生させ構えた。
「なんだとぉ?」
~Laughter 警察署~
Slaughterがベル家を襲撃していると匿名で通報が入った。
「ベル家に手を出したら大事になるぞ…」
つけたばかりの火のついた煙草を焦るように消した。
「どうします?警部補…やはり…」
「…大使館に向かう準備をしろ…」
背広を素早く着込んだ。
「世界が変わっちまうぞ…」
ブンッ ザシュ
「ちぃ…!」
「早ぇぇ…てかちょこまかしすぎだ!」
ビュ ザシュ
いくら高周波ブレードを振れど、避けられて周りの人形に当たってしまう。
「へぇ…こんなものなのねSlaughter」
ヒュッ プシィ
「てぇぇ!」
少女の突きがゼオの肩に当たる。
深くないが鋭い痛みだ。
「ふっ!」
ゼファーが横から少女に斬りかかる。
スッ
少女は簡単に避け、待ち針を突き出した。
プッ
「たぁ…!」
頬を掠め、小さく血が舞う。
くそ…一端距離を…
距離を空けてゼオに近づいた。
「ゼオっ!大丈夫か!?」
ビュ ビュン
「ぶねぇ!」
会話をする暇を与えずに少女は突きを繰り返す。
「ちょ、まてまてぇ!」
突きを弾いては避け、弾いては避け、弾いても身体を掠める針は体力と気を奪ってゆく。
「あら?Slaughterさん?よくこんなので生きて行けたわね?」
ブチン
ゼオのブチ切れる音がゼファーまで聞こえたような気がした。
「ぜぇぇんだよ!!」
ビュ
キィィィン バチバチバチィ
少女の突きをなんとか避けたゼオは横から待ち針を叩き斬った。
「…っめんなぁ!」
ブォン ガシッ
ゼオが少女の髪を掴む。
ブォン ザッ ブヂブヂブヂィ
少女の首に切れ込みを入れ、その手で首を引きちぎる。
「おおおぉ!…やった…!」
ゼオはゼファーに少女の首を掲げた。
「らぁぁ!!」
ゼオの手には人形のように目を閉じた顔があった。
しかし人形と違い、首の断面は生々し……い?
「…!!?」
ゼファーはゼオの手から少女の首を蹴り飛ばした。
「うぉぉい!俺の大将首だぞ!!」
「よくみろ!」
転がる首を見ると、断面にはぎっしりと綿が詰められていた。
「はぁ!?人形かこいつ!?」
ザッザッザッ
後ろから何か引きずるような音が聞こえ、振り返ると少女の胴体が2人の真後ろまで来ていた。
「離れろ!」
2人は少女から離れて構えた。
少女の胴体は首を拾い上げ、元の位置へ戻す。
するとひとりでに糸が首を縫合し始めた。
「勢いだけで華がないわね…」
首を戻した少女は自分の口に手を突っ込み、先ほどと同じ待ち針を引き出した。
「どういう事だあいつ…?」
「解らない…Darknessとは違うはずだが…」
頭をフル回転させるが、全く持って理解不能。
「クスクスクス…」
チャキッ
少女が笑い、高周波ブレードを構え直す。
「Нереальный…」
「…!?」
タッ ビュン
少女が突っ込んできて針を突く。
寸でで避け、高周波ブレードで少女の胴体を斬る。
「あら?」
ビュン
それに動じず、攻撃を仕掛けてきたので、避けられず、ゼファーの脚にもろに針が突き刺さる。
「あぁぁぁぁ…!!」
「ゼファー!こんの野郎!」
ブォン
ゼオが高周波ブレードを振るが避けられる。
ビュン
すぐさま少女の反撃が来るが構え直す暇がなく、針が目の前に迫った。
ブシィィィィィ
ゼオは針を手のひらに突き刺し軌道を変えていたのだ。
激痛に冷や汗を流すゼオは笑いながら少女を睨む。
ブォン ザッ
もう片方の手で少女の待ち針を持つ腕を切り落とす。
「らあぁ!!」
ガッ
少女の腹部を蹴り、突き飛ばすと少女は人形の山に埋もれた。
そして待ち針の玉を踏んづけて割り、手の傷を完治させる。
ゼファーの脚も治ったようだ。
「すまないゼオ」
「なぁに…2人でSlaughterだろ?…」
「そうだな…」
軽く微笑み、少女が埋もれた人形の山を睨んだ。
人形の山から糸が伸び、切り落とされた腕が引き寄せられる。
「問題は…」
「どう殺すか…か…」
斬っても斬っても糸で縫合されてしまう。
いずれは体力が限界になり俺達は殺されるだろう。
「仲間の為に身を犠牲にして痛みにこらえる…感動的ね」
少女が人形の山から出てきた。
「でもそれも今ここで終わるわ」
少女は待ち針を再び出現させた。
「いや…終わるのはあんたのほうさ…」
ゼファーが言い放つ。
「でもどうやんだよ…」
ゼオは少々焦り気味にゼファーに囁いた。
「さっきのゼオ見て思いついたんだ…斬っても無駄ならある方法を使おうかと…耳貸して」
「はい」
ゼオは自ら切断した耳をゼファーに渡す。
「ついにこの流れやったな」
「間違ってねぇだろ」
ゼファーは耳を投げ捨てる。
「あー!おい!俺の耳!!」
「いいからゼオ」
ゼファーはゼオに語りかける。
「まぁだ?最後くらいお喋りさせてあげてるけど…退屈だわ」
少女はそばにある人形をプスプスと刺し始めた。
血が出てるから人間だろう。
「Спасибо за ожидание. Принцесса」
ゼファーが少女に言う。
「ゼファー…大丈夫なのか?」
「ぶっちゃけ怖いよ…でもやるしかない」
ゼファーは少女に向かって歩き出した。
ダッ
そして走り、少女に突っ込む。
ビュン
突いてきた待ち針を避け、高周波ブレードを振る。
ブォン
少女はそれを避け、追撃。
ゼファーはそれを受け流し、少女の首を掴み、掴んだまま走って壁に激突させた。
ドンッ
そのまま少女を睨みつける。
少女はニコッと微笑むと待ち針をゼファーの腹部に突き刺した。
ザスッ
「いぃぃぃ…!」
激痛が走るが、決して掴んだ首を離さない。
「…!?」
少女の顔に焦りの色が見え、何度もゼファーの腹部に待ち針を突き刺した。
「ぐぶぅ…」
激痛と共に口から血を吐く。
「ゼオ…ぶっ…痛いから…はよ…」
カチィン
「ほんといいジッポだなぁー」
気づくとゼオがその横に立っていて、手に、シューティングスターから奪ったジッポライターを持っていた。
そう、斬っても無駄なら燃やせばいい。
「じゃあなお嬢さん」
シュッ
「あれ…」
シュッ シュッ
「あれ、ちょっとタンマ…」
シュッ
「なんだよ!この!クソジッポ!!!」
肝心な時に火はつかなかった。
「ば…か…」
少女は再びニコッと微笑むと待ち針を今度はゼオに突きつける。
ビュン ガシッ
「!?」
口から血を吐きながらゼファーが待ち針を掴んだ。
「…ぶっ…ゼオ…そこ…」
「ん?…ああこれか」
ゼオはろうそくに手を伸ばした。
「ま、待って…いや…」
少女が泣き出しそうな声で懇願するが、痛みで待てたもんじゃない。
「今度こそじゃあな」
ボッ
「いやぁぁぁぁぁ!」
ゼファーは火が点くと同時に少女から離れた。
そして奪い取った待ち針を少女と壁に突き刺して、崩れ落ちる。
「ゼファー!」
崩れ落ちたゼファーを支え、燃える少女から離れさせる。
「ま…待って…いて…」
「ああ、悪いっ」
ゼオは銃を出現させ、待ち針の玉目掛けて撃った。
「ふぅ……殺す気かゼオ…」
傷が癒え、立ち上がる。
「ごめんて、このクソジッポがつかなかったんだよこんちくしょーー!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
燃え盛る少女の叫び声が上がる。
下半身は既に燃え尽き灰になり、顔がただれ目が片方溶けている。
「…帰ろう…館に火がついてる…このままじゃ森に火が移るのも時間の問題だろ」
踵を返し、出口に向かう。
「クスクスクスクス…」
「!?」
振り向くと、炎の中、少女が不気味に笑う。
「これで最後よ…明日…あなた達は死ぬ」
ドサッ
少女の首が燃えて落ちた。
「…気にするな…行こうぜ」
「ああ…」
2人は燃え盛る館から脱出した。
「すげぇぞ見ろよ」
振り返ると炎で空が赤くなっている。
森にも火が移ったらしい。
街中の人々か煙が上がる南地区に唖然としている。
「Slaughter…」
気がつくと路地に、前に会った警部が立ち尽くしていた。
「おぉい、またあんたか配管工のおっさん」
ゼオが睨む。
「大層な事をしてくれたな…」
「だって俺達だもーん、あんたはそろそろカートに乗ってバナナの皮でも投げてな」
ゼオは警部の肩をポンと叩くと横を通り、Unreality社に向かう。
「…お前らのせいで世界が変わる…!終わりだこの国は!」
振り返ると怒りを我慢している警部が睨んでいた。
「しかし私は認めない!絶対に!」
「知るか、きのこでも食べてきのこおっ起てときゃ気にもなんねーだろ」
叫ぶ警部を後目に2人はUnreality社に帰って行った。




