Psycho Case6:OLD TEAR
「はいこれ」
翌日
起きてゾディにご飯を与える。
「…これなに?」
「パンの模型、俺1回歯折った」
ゼオがカチカチのパンをかじりながら言った。
「…」
ゾディは食べずにパンを見つめた。
「やっぱりなんか買ってきた方がいいかな…?」
ゼファーがゼオに言う。
「食っても死にはしねーだろ」
「いやいやいや、それ俺たちだけだから」
「おっさんに買ってきて貰えば?俺たち出かけるし」
「どこいくの?」
ゾディがゼオに訊いた。
「ん?ベル家」
「じゃあもう帰ってこないって言ってもいいよね」
ゼオは眉を潜めた。
「どゆことだ?」
「執事」
「執事?」
「僕よりはるかに強い執事がいるよ」
ゼオとゼファーは顔を見やる。
ゼファーは口だけをニッと笑わせ、ゼオに何かを譲るように手をゾディにパッとやる。
ゼオはゾディに近づいて、ゾディの額に人差し指を押し付けた。
「俺たちはSlaughterだ。」
ゾディはムッとしたが何も言わなかった。
「とりあえずおっさんに頼んどくからまともな飯貰いな」
「…わかった」
ゾディは仏頂面のままだった。
「かわいくねぇガキだな…」
ゼオも仏頂面になる。
「うんわかるよ…」
ゼファーはゼオとゾディを交互に見て嘆いた。
「驚いた…」
Unreality社を出た2人は南地区にあるベル家に向かった。
驚いた事に南地区は緑が生い茂っている。
「この街にも植物があるとは…」
ゼファーは珍しい物を見るように目を輝かせていた。
「そいやゼファーは南に来るのが初めてだったよな」
「ああ…枯れ果てて朽ちた森かと思ったんだが…」
ゼオが木をポンポンと叩く。
「ここらは多分ベル家の使用人が管理設備してんだろな」
「そのベル家を全滅させたらこの森も枯れ果てた森になっちゃうのかな…」
どこか罪悪感がこみ上げてくる。
「ま、ここはもうベル家の領域って訳だ」
ゼオが森の奥へ進む。
大した度胸だ…
「てことはつまり…」
バッ
ガサッ
パララララ
ゼオがいきなり木の陰に隠れたかと思えば発砲音が聞こえた。
ドサッ
ゼオが隠れた木の陰から頭が吹き飛んだ燕尾服の男が倒れてきた。
「いつ襲われてもおかしくないわけだ」
ゼオが陰から顔を出す。
ダバァン
いきなり大きな破裂音がして、ゼファーの腕が吹き飛ぶ。
「!?」
衝撃で身体が吹っ飛び、地面に倒れた。
「横だ!」
ゼオが叫び、銃を構える。
ダバァン
しかし再び大きな破裂音がしてゼオの胸に大きな穴が開き身体が吹っ飛ぶ。
「おわっ!」
ゼファーは腕を修復させ、銃を構えて放つ。
パララララララララ
敵の姿は見えないが、銃を撃ちまくる。
「がはぁぁぁぁ!」
運良く弾があたり、同じく燕尾服の男が姿を現し叫んだ。
姿が見えれば後は狙うだけだ。
ガララララララララ
燕尾服の男にゼファーは銃を撃ちまくった。
「殺したか…?」
ゼファーは倒れた男に近づいた。
「ああ、死んでる」
ゼオが横から近づいてくる。
言うとおり、男は蜂の巣になっていた。
「ショットガンかよ…よくこんな街で…」
「さすが金持ちって事じゃないか?」
ゼオは散弾銃を拾い上げた。
「シェルは…ポッケに6発…こん中には何発あるかな」
ガシャン
ゼオは散弾銃のポンプをスライドさせ、棄莢する。
「ひゅー…ロマン武器ぃぃぃ!かっけぇー…」
ゼオは満足そうに散弾銃を眺めた。
「取り込んじゃわない?」
「ばーろーSlaughterはG18Cと刀なんだよ」
「なんだよそれ…随分前に鉄パイプ取り込んだ奴は誰だったかな」
ダバァン
破裂音が響き、近くにあった木が折れた。
「細かい事は気にすんな」
ゼオは散弾銃を構え、破裂音がした方に撃った。
ダバァン
ガシャン
ダバァン
「あぁぁぁ!!」
肩が吹き飛んだ男が倒れてくる。
ガシャン
ダバァン
その男に向かって再び発砲し、頭を吹き飛ばした。
「すっげぇ威力…」
「発砲音すっごいね、鼓膜が破れるわけだ」
ゼファーの耳から血が滴り落ちる。
「ひっひっひっひっ」
ゼオが不気味に笑い、森を突き進んで行った。
「侵入者だ!メアリー様に近づけるな!」
燕尾服の男が屋敷の使用人に叫ぶ。
「承知しました!排除します!」
「侵入者は誰だ!?」
「2人の少年だ!」
少年と聞き呆れた顔の使用人が言う。
「少年?エドとゾティじゃないのか?何でそんな騒ぎに…」
「彼らは昨日から戻っていない!もう数人殺されてるんだ!」
使用人が熱演するように叫ぶ。
「Slaughterね…」
突然使用人達の背後から落ち着いた可憐な声が聞こえる。
「メアリー様、お部屋にお戻り下さい!」
メアリー・ベル
金髪の巻き髪にエメラルドの瞳。
フワフワの白いドレスに身を包む少女。
幼いが巨大カジノの支配人である。
この街で一番の金持ちだろう。
「Slaughter……!テレビで拝見致しました!」
「どんな子達なのかしら楽しみだわ…」
メアリーは静かに部屋に戻って行った。
「…とにかく!侵入者の排除だ!」
「只今!」
支配人が総勢で外に向かう。
「のぅ…」
叫んでいた支配人に虫の息のような声がかけられた。
「執事長…なにか?」
「私になにかできる事はないかのぉ…」
「……いや…そのお身体では…どうか大人しくしていて下さい…」
「申し訳ないねぇ…」
腰を曲げた執事長はよろよろとどこかに向かって行った。
引き止められた使用人も増援に向かって屋敷を出た。
ダバァン
ダバァン
使用人達がショットガンを撃ちまくるが被弾しても復活する2人に焦り始める。
「くそ!当たっても死なないぞ!バケモノか!?」
ガシャン
ダバァン
「うぎゃぁぁぁぁ!脚がぁぁぁ!」
脚が吹き飛んだ使用人がもがき苦しむ。
「ひょぉぉーきんもちぇーーーー!!」
ゼオは口元を笑わせながら乱射し続ける。
「うるさい…」
銃声とゼオの声に迷惑したゼファーはその場から去るべく、高周波ブレードを出し、使用人の集団に突っ込んだ。
「来たぞ!銃は使うな!同士討ちは避けろ!」
使用人達は懐からナイフを取り出す。
タッタッタッ
「死ねぇ!」
ビュン
バッ ズサァァァ
ゼファーは使用人の攻撃を避け、スライディングで集団の中央に行く。
「ゼファー、スライディング好きだよな…」
ゼオがボソッと嘆いた。
ビュバッバッバッバッ
スライディング体制から、回転しながら片腕逆立ちをする。
その回転で高周波ブレードで使用人達を斬りまくる。
ブシィィィィィ
「いぎゃぁ!」
腹を斬られ内臓が飛び出した男が叫ぶ。
「ああぁぁ!」
下半身が分離した男が叫ぶ。
「けひゅぅ…」
喉を斬られ、血と空気を漏らした男が叫ぶ。
無数の断末魔が溢れ、ゼファーは返り血でまみれた。
「ふぅ……」
「…」
その光景を見ていたゼオは、散弾銃を落とした。
バッ
ビュォォォォ
そして高周波ブレードを出現させて、一気に飛んだ。
「うわぁぁぁぁ!」
ブッ ダァァァン
上から降ってくるゼオに叫び声を上げた使用人の1人を縦に真っ二つにする。
着地しゼファーの方を向いた。
「これじゃあ読者はゼファーのファンだけになっちまうー!!最近ゼファーばっかかっけぇんですけどぉ!!」
ゼオはゼファーに叫んだ。
襲い来る使用人達を葬り、森の奥に進むと豪華絢爛な屋敷が姿を現した。
「うわぁー……でかーー……」
「すっげ…どうせここに住んでるやつぁ生ハムメロンの生ハムをどかしてメロンだけ食うんだろうな、ムカつくぜ」
「それは俺でもしちゃうかも…別々で食べたい…」
2人は屋敷を見上げながら立ち竦む。
「どうやって入る?」
ゼファーがゼオに聞く。
「うーん…頑丈そうだよな…いけるか…」
ゼオは高周波ブレードを構えた。
そのまま高周波ブレードにDarknessを送り込むと刃に軽く火花が散る。
「おるぁ!!」
ビュビュビュビュン
素早く扉に斬り込む。
ギ ギ ギ ガシャァァァァン
扉は音を立てて崩れた。
「流石だなこのブレード」
ゼオは高周波ブレードを舐めるように見る。
「あっれまぁ…」
土埃が舞う入口の奥から不気味な声が聞こえた。
「誰だ!」
ゼオは高周波ブレードを入口に突きつける。
それに続き、ゼファーは銃を出現させ、構えた。
「修理させんとのぉ…」
そこにいたのは腰が曲がった背の低い老人。
あまりの弱々しさに2人は戸惑いながら武器を下ろす。
「な、なんだこのじいちゃんは」
「大丈夫…そうかな……」
「客人をもてなさないとのぉ…こちらへ…」
老人はよろよろと屋敷の奥へ歩いて行ってしまった。
2人は顔を見やり、恐る恐る後をついて行く事にした。
内部はドラマや漫画で見たようなお屋敷だ。
どこか見たことのあるようなないような名画も飾ってある。
「よっこらせ…」
老人は角にある椅子に腰を下ろした。
「ただもてなすってわけじゃねぇよな?」
「のぅ…いい茶があるんじゃ…アッサムは好みかえ?」
「おじいちゃん聞こえてるーーー!?耳遠いのーーー!?」
「紅茶より珈琲派なんだ」
ゼファーは老人に言う。
「はぁ?もんたよりよしのりさん?」
「誰ですかーーー!こーおーちゃーよーりーこーおーひーいーはー!!」
老人はティーポットをカタカタと震えさせながら持つ。
お茶はぼたぼたと零れ落ちている。
「あーー!もーーほら!!いいからいいから!!」
「おぉ…それはそれは…失礼なさった…ではもっと最高なおもてなしを…」
バァァァン
「!!?」
椅子に座っていた老人がいきなり消えた。
いや、正確に言えば何かが2人の間を通り抜け、風が起きて髪が揺れた。
バッ
2人は振り向き、武器を構える。
「…いない!?」
2人は目を点にさせた。
「ふぇふぇふぇふぇ…」
上から不気味な笑い声が聞こえる。
顔を上げると、先ほどの老人が不自然に壁にしがみつき、こちらを見ていた。
「街で見るよぼよぼのじじいって目を離すといつの間に遠くまで歩いてるよな、これがその正体かも」
「解らない…だが危ないぞ…」
ゼファーが銃を構え直した。
パララララララ
老人に向けて発砲する。
ガッガッガッガッ
老人は壁に穴を開けながら蜘蛛のように動きまわる。
「ふぉっふぉっふぉっ」
「うわぁなんだあれ…!」
弾を撃ち尽くし、銃を床に叩きつける。
「ふっ!」
ゼオが脚に黒煙を纏わせて老人に向かって飛ぶんだ。
「気味わりぃんだよ!」
シュバン!
ダァン
ゼオは老人に斬りかかるが、再び老人は姿をくらました。
ダンッ
老人はゼファーの目の前に着地し、腕を振り上げた。
「!?」
ドゴォン
老人の叩きつけを寸でで交わし、距離を開ける。
叩きつけられた床は大理石を粉砕した。
「腰にくるのぉ…」
老人は腰をポンポンと叩いた。
「なんだ今の音は!?」
使用人の1人が姿を現し、老人に近づく。
「執事長?」
ブンッ
ドッ
老人の腕は使用人の腹部に突き刺さった。
「なっ…ガハッ…」
ブヂィィィビチャビチャビチャ
老人は使用人の腹から内臓を引き抜いた。
「…あれまぁ…あんさんだったかの…」
ドサッ
使用人は悶絶の表情のまま倒れた。
「…こいつ…やべぇぞ…」
「ああ…」
2人は老人を睨む。
「いけるか?」
ゼオはゼファーに問う。
「いかなきゃいけないでしょ…」
「へっ、わかってんじゃねぇか…」
タッ
ブンッ
ゼオは老人に斬りかかった。
キィィン
「!?」
老人は高周波ブレードを手で受け止めていた。
ブゥン
「やっべっ…」
咄嗟に身をかわすが距離が不十分だったのか、老人の肘がゼオの腹部に当たり吹っ飛ぶ。
ドゴンッ
「ゼオ!」
ゼファーは吹っ飛んだゼオに駆け寄った。
「グ、ゲボォォ!?ゲッホッゲッホッ!てぇぇぇ…」
「だ、大丈夫か?」
嘔吐するゼオにゼファーは手を差し伸べる。
「いってぇ…」
「腕…折れてるぞ…」
「いや…これは大丈夫だ…壁に当たった時折れたから…」
ゼオは骨折した腕を修復させた。
「よかった…」
「良くねぇよ!ってて…女は毎月こんなのあんのかクソ!」
ダァァン
「!?」
大きな音がすると2人は左右に飛び、その場から離れる。
その場所の壁は大きく抉られていた。
「歳のせいかの…動きが鈍くなっとるわい…」
老人は壁から手を引き抜く。
「くそっ!くそっ!はえぇ!」
ゼオは後ろに下がりながら高周波ブレードを突きつける。
「なんだあの腕…!」
ゼファーも高周波ブレードを出現させた。
「腰もカラクリにすればよかったかのぉ…」
老人は引き抜いた手を見る。
「機械!?」
ゼオが驚いた目で老人を見る。
「今は凄いのぅ…無くした腕が思い通りじゃ」
「…義手…?」
ゼファーが呟いた。
「義手…?」
ゼオがゼファーに訊く。
「ああ…多分脚も…義足だろう…しかしあんな精巧な…」
冷や汗が頬を伝う。
「良い人じゃったのぅ…ありがたやありがたや…」
ドンッ
老人が床を目一杯踏んだ。
「本体を狙うしかねぇかな?」
「ああ 義手義足自体は高周波を使わないと多分斬れないし、斬れなかった時が怖いが本体なら斬れる」
ゼオがニヤリと笑った。
「なるほど…」
「でも気をつけてね…あの義手義足…水晶が入ってる…」
「わかってら…この身で体感したばかりだ」
2人は構え直した。
「一気に決めよう…」
タッ
ゼファーは走った。
「OK」
続けてゼオも走る。
「年寄りに優しくないのぉ…」
ダァン
老人は素早く2人の目の前に移動した。
「私はベル家の使用人…」
ブンッ
ゼファーに拳を振った。
「よっ…」
その攻撃をかわし、腕を掴んだ。
「死ねクソジジイ!」
ゼオが背後から斬りかかるが老人は後ろ出てその斬撃を受け止めた。
ビュ
カァン
「いけっゼファー!」
ゼファーは高周波ブレードにDarknessを纏わせる。
「やあっ!」
シュバンッ
掴んだ義手を手首から切り落とす。
しかし老人は驚きもせず、手首が無い義手で背後のゼオに向かって殴りかかる。
「よっ!」
ジッ
「いつっっ…!こんにゃろ!」
肩を掠めて血が出るが寸でで避け、高周波ブレードを老人の脇の下に入れ、上に向かって切り上げると右の義手が根元から落ちた。
ガシャァン
「あれま…」
「もらった!」
ゼファーが叫んだ。
ブンッ
カッ
老人は左の義手でゼファーの斬撃を防ぐ。
しかし右からは黒煙ブレードが襲いかかり老人の身体を通り抜けた。
シュ ビシュ
老人は動かなくなった。
「…いったか…?」
2人は老人から離れる。
ガシャァァン
左手の義手も床に落ちると老人の身体が不自然に揺れた。
ドサッ ビチャァァァ
老人は肩から真横に両断されて床に倒れた。
2人は力を抜いて、安堵した顔をする。
「ふーー…づっかれた」
「…まだだぞゼオ」
「あぁー!くそ!わってらぁ」
つかの間の安息。
2人は奥にある大きな扉に向かった。




